青空の歌
澱みが消えた黒い天が、ぱぁっと青に染まった。
針で何かをつついた時のように、一瞬で全ての色が変わっていく。塔も地も、真黒から眩しい太陽が輝く純白に。その中で輝く、
「青空だ……」
誰かが呟いた。
それは、誰かがいつか、見られなかった空で。
上層にも、下層にも。
空にも地にも等しく、蒼穹は輝いた。
◆
透き通った空を、ミハエルは感知した。ダンテも同じく。
「……きれいな、青空ですね」
「……君と一緒に、見たかったのだ。ほんとうに、心から」
今まで見られなかった、美しい世界。
「さぁ、行こう。今度こそ、君が幸福になれる世界を見に」
「……ほんとうに、ほんとうに……ばかですね……私に創られておきながら、従順にも程がある……」
前者は、希望に満ちて。後者は、凜としながら、泣き出しそうに。それでいいのだ。悲しみを洗い流して、今こそは。
2つのタマシイは、次の世界へと。
◆
天井の割られた塔の真下で、神達も碧空を見ていた。
神、アーシュスはどこかドヤ顔である。「さすが我らが生贄だ。絶望神を倒すとは」とか、長々と思ってるんだろうな、とウジャムンガの巫女は、その横顔を見て思う。
「いいの? ミハエルやダンテに、何も通信せずに去るなんて。あの長文投稿のきみが」
「神は本来、語る言葉はない。この依り代が特殊なだけだ。貴様こそ、あまり「外」に出ていていいのか。我らの一部としての、塔を守る役目が残っているだろう。そもそも貴様こそ、あの存在達と縁が深いのでは。だからこそ……」
「はいはい。彼女たちはもう満たされたからいーの。私は大人しく守っていますよーだ。「あの空間」を守っておかないと。未来のあの子達のために、ね?」
◆
「じゃ、様子を見てきまーす! この目で!」と塔の外に出たウジャムンガの巫女は感知した。
「……え」
地上に、水が湧いている!? ひび割れた大地に、かなりの量が!
「まさか……美菜ちゃんの対話と、アクア・ヴィーテのおかげで水が……!? アルコールと水は全然違うけど、「命の水」ってそういうコト!?」
混乱せざるを得ない。だが偶然にしては奇っ怪すぎる。神という存在が関わっていても、そういうことらしい!?
ということは。この塔の外にも、人々が住めるようになるだろう。何十年、何百年かかるか分からないが……植物は太陽と水さえあればやたらと伸びるから大丈夫か。
「アル・ソトファへのコール……アル・コール……酒飲み巫女、搭乗者の願いを叶える機神、……そんなはず、ないよね?」
改めて思わなくても、アルコールと水は全然違う。ふつうに飲めないし。
口にするが、水が湧いている、その事実は変わらない。
「ど、どっちみち! いいよね! 美菜ちゃんのコールが、世界に水を湧かせたんだし!」




