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天を割くロケットパンチ<繋ぐもの>

 何かが、粉々に砕け散った。


 敏明は心の空間から帰還し、エネルギー体に戻された。D・スピリッツの中に精神はまだ「いる」状態だ。機神の腕にはモノクロームが抱えられている。もう破壊することはない。


 あの美菜は、恐怖から解き放たれたのだ。「今」の美菜はそっと、モノクロームごとクローンの彼女を開けた場所へと降ろす。


「……すぐに、戻ってくるからね」


 美菜が優しく、眠り姫に声を掛ける。もうすぐ悪夢の機神も去り、穏やかな目覚めを迎えるだろう。上層の厄災は終わった。


 ……わけではない。


「美菜、まだ残ってるぞ!」


「空に……黒い思念が広まって……!」


 見上げずとも分かる。空は漆黒に染まっていた。雲などではない、畏怖の存在。あの美菜の、そして神の心の澱みはまだ残っているのだ。この黒い線が集まった如くの空は、その象徴。


 敏明と美菜は、空を睨んだ。D・スピリッツがビームを撃つ。先の石柱を集めたような極大のビーム。だが、光ひとつでは破壊できない。黒い線に吸い込まれるのみ。


 だが。壊さなければ、この空ごと堕ちてくる。


 上層も下層も塔も地上も、全てが破壊される。


 どうすれば、どちらともなく思った時。再び通信が入った。


「おふたりとも! 私のシステムにはない未来のシステムを使います!」


「お前にない、システム!?」


「……ほんっとーに仕方ありませんね、ほんっとーに! 原初の神プログラムにはなかった未来プログラム! ダンテが本気出して媒介させてくれます!」


 やたら嬉しそうにミハエル。


「あぁ。ミハエルのためなら、私は頑張ろう。再び犠牲の儀、非殺傷版だ」


 ダンテの淡々とした声。敏明の元に反動が来るのか身構えたが、来なかった。


 何度も見た青い光が、何かを形作る。珠のように丸く、しかし拳のような溝が付いている。敏明が分からずにいると、美菜がテンション高く叫んだ。


「ロケットパンチ!? なんて素敵な武装! すっごく頼もしいです、ミハエル様!!!」


「お礼は、未来の私達にも言うんですよ?」


「はいっ!!! これで空を割きます!!!」


 未来。


 ということは、この世界はまだまだ続くのだ。このロケットのような拳を人々が創り上げる、遙か未来まで。その事実が、たまらなく嬉しかった。


 轟音と共に、D・スピリッツがロケットパンチを装着する。これまでの腕に、そのまま嵌めるタイプだった。

「行くよ、お兄さん! 名付けて「アクア・ヴィーテ」! どこかの言葉でお酒って意味なんだって!」


「……お前は最後まで、アルコールだらけだな……」


 神酒にビールにカクテルに。どこまで酒を愛するのか。いつもなら呆れるところだが、今ばかりはその変わらなさが頼もしい。


「分かった。アタッカーはお前に託す」


「託されました! それじゃ、ウジャムンガパンチならぬ、神と人を繋ぐアタック、炸裂させます!」


 D・スピリットが、唸りを上げて空へと舞う。上層を超えて、更なる高みへ。ぎりぎりまで近付いて、最高のロケットパンチを着弾させる!


 真黒の空に、銀色の光が描かれる。それは流れ星のように、岩から湧く清流のように。


「最後の一撃! 行っけぇーーーー!!!!!」


 光が、澱みを打ち砕いた。


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