アル・ソトファ・コール!
「お兄さん……!?」
呼びかけても返事がない。モノクロームの動きも止まっている。ダンテ様の言う通り、対話をしているのだろう。
だが、美菜も止まっているわけにはいかない。
「……巫女様! 私にも、対話、させてください! 人を信じなくなった神様と!」
精神が高まっていく。巫女とは、人と神とを繋ぐ者! だったらいける!
「彼らと!? 今!? 行うのか!?」
ウジャムンガの巫女は驚愕していたが、すぐに確信のある言葉に変わっていく。
「塔と、いや神と……それどころか世界と同化する気か! マジか! 面白いからアリだ!」
「アリなのか」
という、隣の呟きなど聞いていない。
◆
「アーシュスくん! ちょっと塔のシステム借りるよ!」
「我らに拒否権はない。だが、巨神を維持している。回せる力は最大出力ではないと思え。全ての神と人との精神を繋げる、それは莫大なことであり……」
「分かーってるよ!」
下層から、上層の機神……めちゃくちゃ頼れる大好きな巫女に力を送る。
◆
D・スピリッツが、青い光に包まれていく。
ウジャムンガの巫女が叫んだ。
「この同化は神歌の儀ではない、人類の進化の儀だ! 行くぞ優祈美菜、御神酒の貯蔵はたんまりあるな!」
「はいっ!」
ビール、いえ御神酒を一気! アルコールが回る! 残っていた弱気に火が付き、消し飛ばしていく!
「いけます!」
ディバイン・スピリッツ、そして優祈美菜は発進した。
精神域に突入した美菜は感じた。人間達の、神達の思念を。
よくも、我らを土に閉じ込めた。
よくも、私達を捧げなどした。
消えろ、消えてなくなれ。
……そんな冷たい願いと共に。
愛しい者、だから自らの一部としたい。
人は、我が子も同然、だから愛おしい。
神は、私達に繁栄をくれた、だから守りたい。
……温かい願いも同時に。
熱いもの。氷のようなもの。全てが同時に流れている。
(……これが……精神の世界)
銀桃の機神のおかげで、美菜は自分を保てている。これがなければ、たったひとりの精神など、紙のように丸められて破壊されていただろう。
水が涸れた理由……それは、近しい存在を信じなかったということ。
かつて人は、神の手を離した。彼らの間にはとてもかなしいことがあったけれど、人間は神を見限った。神と名のつく者は全て悪……迫害した。
だからこそ、世界から命の水が枯れてしまった。
(……私の! お酒への愛で!)
お兄さんはここにいるようで、「いない」ものだ。美菜ひとりで、行わなければ……!
だが、溢れる魂は、ひとりになることを許さなかった。無数の手で、D・スピリッツを押して押して……。
「持ち上げてる!?」
『ひとりにはさせないぞー! この仁川亜紀様含め、一同がゆるさんのだ!』
『私達は、かつて神歌の儀の供にされた巫女達……亜紀が特別うるさいだけで、私達はいたっておしとやかな存在なのです……』
「巫女様達……」
彼女たちは、かつての自分と同じ立場だった。何もかも間に合わず、散ってしまった巫女達。
ふと、思った。
「皆さん、お酒は好きですか!?」
「えっ飲んでたの???」
「巫女なのに!? スゲー!!!」
「成人してたので……と、ともあれ!」
別の巫女達から説教が始まりそうだったので、美菜は慌てて続ける。
「お酒が好きだったら、その愛で! 神と人との絆を取り戻しましょう!」
「……で、できるの? それで?」
「御神酒は神と人を繋ぐもの! 御神酒への愛があれば、きっと大丈夫です!」
「……私、飲んだことないんだけど……亜紀もそうよね?」
「九谷、まどるっこしいことはいーだろ! なんかできそうだぜ! つーかできなきゃ世界が滅んじまうんだ、賭けてみる価値はありますぜ!」
「ありがとう、亜紀さん、九谷さん!」
みんなが力を貸してくれている。限りなく心強い。心の中に温かいものを感じた。
美菜は祈る。
(……神様、私お酒が好きです! 神様も、お酒が好きですよね?)
答えはない。それでも祈る。
(私達、分かり合える気がします!)
たったひとりが手を離しても……誰かが、また手を繋ぐから!
(もう一度信じて、私達のことを!!!!!)
◆
水が、どこかで湧き上がった。




