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Final phase

 モノクロームから、意志が流れてくる。怒り、嘆き、そして困惑。


「止まって、もうひとりの私! もう終わったんだよ!」


 美菜が叫ぶが、届かない。通信は届いているものの、あの美菜の意志が変わる気配は薄い。


『上層は一人残らず消えれば良い!』


「させるか!」


「行くよ、お兄さん!」


 神殿の柱を割り折ったD・スピリッツが、石の塊でビームを砕く。


「弁償は後で!」


 無数の砂とガレキの中から、幾筋ものビームを撃つ。美菜はどういう訳か、この機神の操縦方法を掴んでいるようだ。これも神達の力だろう。モノクロに追いつく起動力で場を制す。


 しかし、決め手がない。こちらがビームを撃てばかわされ、掴みかかってはバリアを展開される。どちらも損傷は少なく、壊れはしないが捕らえることもできない。むしろ、こちらが削られていく。


 アーシュスの言う通り、空想なのか願いなのかは分からないが、敏明は機神を保つことで精一杯だ。


「お兄さん……このままじゃ!」


 美菜の焦った声がした時、通信が入った。アーシュスやウジャムンガの巫女のものではない。やたらと軽く、そして聞き覚えのあるその声は。


「みなさん、苦戦してますね!」


「ミ、ミハエル様!? なんか消えたんじゃなかったんですか!?」


 消えたはずのミハエルだった。


「精神体に戻っただけです。私はじゃんじゃん元気ですからね!」


 それにしてはテンションが高い。一体何をしに来たのだろう。少なくとも自慢しに来た訳ではないはずだ、少なくとも。


「斑目敏明。困っているな」


「……」


 低い声も聞こえる。その声は、……。


「ダンテ様!」


 そうだった。


「あの眠り姫と精神を繋げる。王だからこそできる犠牲の儀、非殺傷版だ」


「物騒な名前を付けるな」


「そう言うな。王とは本来、神の生贄だった。神の生贄である巫女と心を繋げることは用意だ。王としての能力の最大活用……斑目敏明、衝撃に備えろ!」


 衝撃……というより砕かれるような感覚。これが犠牲の儀というものなのか。痛みや恐怖はなく、ただ広がっていくものがあった。




 ダンテは、王は、思う。


 「彼女」を、「君」を、助けたいと思っていた。


 けれど、次元の壁に阻まれて。声は、届かなかった。


 この巫女を、救おう。


 そうすれば、「君」を助けることに繋がるから。




 真白い世界。心が繋がったというものなのか。


 敏明は理解した。


 初めの色を。


 自分が生まれた時、囲まれていた色。


 未だにそういう自覚はないが、生まれは不明瞭、ダンテからもウジャムンガの巫女からもクローンと呼ばれている。だったら多分クローンなのだろう。王という者の。……だったら、美菜のクローンも救うまで。


 ……自分は最初から、ひとりではなかったのだ。こんなに美しい色に囲まれて生まれてきたのだ。温かくて、冷たくて、矛盾していて、それでも祝福されていた。


 そんなことを、すっかり忘れていた。自分は捨てられた、その寂しさで忘れていた。


(一緒に行こう。……お前の敵を救いたがっているけど、お前も救いたい。助かるなら、少しでも多い方が良い)


 誰かができなかったことを為すために、クローンというものは創世されていくんじゃないか。


 2人は複製、誰かの記憶。誰かが出来なかったことを為すためのやり直し、そして希望。


 人は、生命は、進んでいくのだ。


 だから、複製かどうかなんて、実際は至極どうでもよいことなのだ。生命であることは、変わらないのだから。


 そして今、誰かができなかったことなんて、決まっている。


 生贄は、誰かが終わらせなければ。

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