組み上がれ! 機神!
「……これからとこれまでは、理解したな、生贄、優祈美菜」
どうでもいいが、美菜はフルネームなのか。
「対抗策として、あの神体と同じ機械神で打ち砕く」
「俺、巨大な機械なんて見たこともないぞ。あれが初めてだ」
「こちらが指示する。直接脳内にな。まだ地上が繁栄していた時代の、とびきりの神の機体を映し出す。太陽神のお墨付きだ! では、搭乗だ」
アーシュスが指したのは、ひとつの棺。さっきまで神達がいたという石棺だった。
「こ、ここ神様の家だったんじゃ!? 入っていいの、アーシュス様!」
「家な訳あるか。つべこべ言わずに入れ、生贄。あと我らのことは今まで通り神と呼べ。アーシュスは素体の名だ」
「で、ですか。あ、でも入るのは私じゃないんだ。お兄さんなんだ」
「……」
美菜が安心しているのが、じみにイラリと来る。
「フルダイブ式を採用する。今の我らの組み方では、生命力が徐々に奪われていく。長期戦は避けろ、生贄ども。貴様らの身を慮っているのではない、我らが今後食らう分まで奪われてはたまらんからな! 決して慮ってなどいない! どうだ、我らはまさしく恐怖の対象だろう?」
(……この神様、すごく優しくない?)
(素直じゃない)
美菜が視線で聞いてくる。敏明は小さく頷いた。態度は傲岸不遜、話はものすごく長いが、言っていることを噛み砕けくと、人間達の体調に配慮している……気がする。
(お兄さんみたいに?)
(誰が……いや、俺も素直じゃないな……)
2人の胡乱な視線の交錯に気付かないのか、神が大仰に言う。
「生贄共、祈れ。願え。さすれば機神が現れん!!!」
興味ないので聞き流し、搭乗の準備を……。
準備を……。
「どう乗るんだ、これ」
「ふはは、困っているな! この棺に生贄が入り、そして願え。さすれば神に願いが届けられよう! お前の願い、つまり空想のもとで動くのだ。びっくりだろう! びっくりと言え!」
こいつこんなフランクだったのか……。言葉を交わすほどにフランクさが増えていく。
「……願う、のか……。……」
やはりどう見ても棺桶である。神が収められていた神聖なものとはいえ、足を突っ込むのは気が引けた。意志とは逆に閉じ込められていたのだ。怨念が籠もっているに違いない。とはいえ、ためらってばかりではいけないので、思い切って入る。
別に呪われることのない、ただの石棺だった。成人男性である敏明が入っても違和感がない。風も氷もないのに周囲の空気が冷えている。神達からどう言われようと棺桶ということか。
「棺桶棺桶連呼するな。神罰を加えるぞ」
神が不機嫌そうに言う。
「我らの力では呪い殺すだけだからな。全ての生命を活かす、ウジャムンガの力を一部流用する」
「そうそっ! 私達、頑張るよー!」
巫女が言うなり、薄く青い光が走った。これがウジャムンガの力の一端ということか。あの儀式場でのビジョンを思い出す。あの白い少女。大元は彼女の力か。
◆
ふと気がつくと。あの白い少女がいる、謎の場所にいた。
敏明が驚く間もなく、少女が言う。
「わお。とんでもないとこに行き着きましたなー。巨大ロボで戦闘とか、あたし聞いてませんよ。これ、ほんとに未来のシステムなんですね」
「……俺に聞かれても、だ」
「とはいえ行きますよー。地を追われたみんなと、あたしたちのコンビネーション! さ、言いたいことは言ったので、現世に戻って!」
……この言葉を聞かせたいがために精神を引き込んだのか。
相変わらず神達は自由なものだ。




