未来は昏くて、眩しくて
あったかくて冷たい、矛盾した場所。
未来は、手つかずのまま輝いている。
ようやく輝ける場所まで来ることができた。モノクローム・ルミナスを使い、少しずつ「望む世界」へと造り替えていく。
自分が誰かの複製だということは分かっている。創られたばかりの「私」は遠い過去さえも、振り返ることができない。過去がないのは寂しいけど、「私」には未来がある。
いつだって未来は昏いほど手招いている。
「私」は歩き出す。
もう、怖いものはなにもない、恐ろしいものも。体はとっても軽くて、どこまでだって歩いて行けそう。
嘘っこの生贄生活を思う。神なんてどうでも良かった。みんなと一緒に、おいしいものを食べたかった。みんなで甘酒を飲みたかった。
いつもと同じように、日々を過ごしたかった。けれどそんな日常は、神を降ろすという大義名分で何もかもなくなった。本当は嘘なのに……騙していたのに。
『……でも。もう大丈夫よ』
暖かい気配がささやく。
『この力で、大人も神も、全て破壊しましょう。優しい人だけの、優しい世界を創るのよ』
気配は、美菜の頬にそっと触れる。
『だからもう、泣かないで。あなたを悲しませるものは、全部私が壊してあげる』
◆
創世神を根絶しなかったから、重大なエラーなどが起こった。やはり、悲劇の根源には神が関わっている……人は、神を捨てて生きなければならない。
だから、神に縋る人間ごと……破壊する。
世界などどうなっても良い。
ただ、滅びれば良い。
◆
「不要。破棄。処分。それがこの地の神々が受けた処遇だよ」
「……かなしいわ……」
美菜の握る手に力が篭もる。その手には悲しみ解消用の神酒が握られていた。恒例の如く、彼女は「耐えるために飲むわ!」と言って飲んだ。
「失敗したから閉じ込められて、……創世神様は、ここの神様達のことは知っているの?」
「どうだかね。そも、創世神と言っているが、意志はほとんどない。方向性のあるエネルギーみたいなものだ。人間に扱えるよう、形を変えた神。そこのコミュニケーション特化素体、アーシュスくんみたいなもんだ」
敏明は言った。
「あの美菜は、世界を破壊しようとしている。不当な扱いを受けた神ごと」
「そうだね。その渦中で、根本原因の創世神もお陀仏ってことだよ。神様なのに「仏」とはね!」
巫女が茶化すが、誰も笑わない。
「……お前達の過去は、だいたい分かった」
敏明は、神に言った。神は、静かに頷いた。
過去を知ったからといって、敏明の為すことは変わらない。今まで通り、神達の側にいるしかない。目的は変わらず、モノクロ機神を止めるしかない。
……このままでは、始まってしまう、戦争が。
敏明達が何もできなければ、全てが火の海だ。
……海は、どうして干上がったのか。水を甦らせれば……ひょっとすれば、創世神を巡る争いは止まるかもしれない。
そんなことは「必要とされたい」から始まった生贄ではだめなのか……!?
何も出来ない悔しさに、思わず唇を噛み締めていた。




