モノクローム・ルミナス
「えっ……!?」
美菜と敏明は息を呑んだ。
何あの……人型??? モノクロだ。それしか言えない。人型の機械が、上層を破壊している。こんな機械は見たことがない。それこそ、
「伝説にしか見られない巨大ロボットだわ!」
美菜が興奮したように呟く。
想像上でしか見られなかった存在。むしろ一度も見たことがないのに、こいつが機械だと判る自分の方が奇妙だ。ひょっとしたら、巫女と神が何かしているのかもしれない。
「巨大ロボはほんとにあったんだ! でもあの、なんか口が光ってるけどやばくない???」
「やばーいんだよ!」
「助けてミハエル様、ダンテさんー! 塔の世界がたいへんだよー!!!」
美菜が叫ぶが、機械は無情にも神殿を破壊していく。ミハエルとの戦いで崩れた以上に、被害が広がっていく。
敏明は奥歯を噛み締めた。このまま被害が広がれば、大事な人達にも危機が及ぶ。
「この機体の名はモノクローム・ルミナス。眠り姫の魂を回収するために生み出された、機械の神だ。だから」
ビームが止む。モノクロ某は翻り、真っ直ぐ墜落していく。いや、真っ直ぐ下へと向かっていく。地上へと。塔の底へと。なぜだか、猛烈に嫌な予感がした。
轟音が天を揺るがした。巫女の持っていた端末が床に落ち、画面が粉々にひび割れる。
同時に、天井が割り砕かれた。
巨大な瞳が、4人を写す。
「ここに回収しに来るんだよね!」
ウジャ巫女が指で印を組む。敏明達の身体の表面に、青い水膜が張られた。水膜は粉塵とガレキを防いでくれた。だが、それが精一杯のようだ。
機械の神は、鋼鉄の腕を差し伸ばし、棺に眠るもう一人の美菜を手に取る。一度だけ巨大な2つのレンズを
瞬かせた。額のハッチが開き、棺を内部に回収する。
敏明は美菜を見た。悲鳴も上げられず、ただ目の前の異様を見つめている。あのビームがこの場を襲えば、何もかもなくなるだろう。神も、巫女も、この世全てが。
美菜を連れて逃げる、そのための経路を頭の中で思い描こうとする。けれど両脚が動かない。まさか竦んでいるのか。こんな、巨大なだけの機械に。
……だとしても、神は神なのだ、そう感じずにはいられなかった。
敏明が諦めかけたその時、再度の轟音。凄まじい風圧が室内を吹き荒れていった。飛ばされ、ガレキの上を転がる。青い膜が守ってくれたが、衝撃は来た。頭を打ち、思わず天を見上げる。
モノクロームが空へと消えていた。
残されたのは、ガレキと折れた鉄骨の間から見える、灰色の空だけ。
もう一人の優祈美菜は、一切合切が消えていた。




