神、眠り姫、塔の世界
「……基幹システム」
神が生贄にされたのなら、そんな名称がつけられてもおかしくはない。
やはり、今度こそ人類を滅ぼすために目覚めたのだろうか。敏明の犠牲は、無為だったのだろうか。
そんな後悔と共に、拳を握り締めた時。神が、一歩前に出た。紡がれるのは、
「ふはは! 驚愕したか! 驚愕したな!」
「……はっ?」
「我らはこの地を追放された神の集合体、その表面が集まり人型を成した者である! 見かけ人間の姿をしているがしっかり神聖だ、崇めよ者共!」
「りょうかいいたしましたーっ! 確かに長い髪とか白い衣とか神聖だわ! 御神酒はいかがですか、神さま!」
「ふむ。貰おう。我らは神酒の一杯くらいで酔わぬ者よな。良い心がけだ、巫女よ!」
「ありがとうございまーすっ!」
「……、おい」
ものすごくフランクだった。
美菜が平伏して神酒を渡しているが、敏明は非常に冷めて「神」を見つめた。「神」にしては、大仰な仕草と言葉である。まるで大見得を切るかのごとくの体勢である。気配はとても薄いが、感じるものは、あの底冷えのする存在と同じだ。
「……お前、本当に。あの神なのか」
「そうだ。……と言いたいところだが、是なる者は神の記憶を持った存在。神とはニアイコールだが、神性は変わらない。相変わらず偉大なのは変わらない。そして、この存在は人間とコンタクトを取るためにとった姿。人間は呼び名をつけるというから、アーシュスと呼べ」
「……」
話が長い。返事をする気もなく黙り込む。
「返事は」
「……アーシュス、って呼べば良いのか」
呼ぶと、神……アーシュスは満足そうに頷いた。その動作は、やたらと人間らしい。今はただの青い髪の男と話しているだけに過ぎない。
「ウジャムンガの巫女。テンション上げ、ご苦労だった」
「いーえいえ。アーシュスさんは私達のアツいニュースターだからね!」
そして、ウジャムンガの巫女は敏明と美菜を見た。アーシュスの前にある棺を指し。
「この棺には、見ての通り、美菜ちゃんが入っているわ」
「美菜が……2人……」
それは。
「神でできているのがアル・ソトファ。人々が対抗したいという夢から生まれたのが眠り姫。贖罪の思いから生まれたのが王のクローン。
精神的クローン。にくの複製とは違う、魂のコピー。
だからこそ、今、」
美菜にノイズが走った。
「眠り姫が、魂を取り戻そうとしている」
◆
世界が望んだ忘れ人。
それは優しい祈りの巫女。
塔の核と重なった、優しい巫女である。
今、その存在が大きく歪もうとしている。
2つの神の戦いによって引き起こされた余波で、歪んだ目覚めをもたらそうとしていたのだ……!




