アル・ソトファ<基幹システム>
「……お前に伝えることは以上だ。これまでの予定通り、神の元に行け。あとは、別の者が引き継ぐ」
「引き継ぐ?」
その時、派手な声が聞こえてきた。……笑い声? 聞いたことのない、若い女性のものだ。小野はいつもの無表情を思い切りしかめ、言った。
「ウジャムンガ教とやらの者が、引き継ぐようだ」
ということは、あの樫木みたいなトンデモ巫女がいるということか。あのハチャメチャさで、小野にコンタクトしたのだろう。その時も、こんなしかめっ面をしていたに違いない。
ちょっと気分が良い。
「私から言えることはひとつ。神が初めて、お前を呼び寄せた」
「呼び寄せた……?」
「生贄として、神の期待には応えろ。良いな」
◆
部屋のドアを開ける。
美菜と共に、華やかな金髪の女性がいた。豪奢な黒いドレス。すらりとした長身に、この質素な部屋でも輝くかと思うほどの、腰まで伸びた金髪。
だが、顔には見覚えがある。先日消失したという、ミハエルの顔そのものをしていた。
「お兄さんもびっくりだよね! この人、ミハエル様にそっくりだよ!」
「そりゃあね! 事情があるからね!」
「お前、ミハエルのなんなんだ」
敏明が聞くが、巫女は肩を竦めて首を振った。
「でも、その事情は今はいらない。今はただ、EARTH=アースをもじって名付けられた、アーシュス・アル・ソトファを起こしに行きます!」
「誰だ????」
そんなアーなんとかという名前、聞いたこともない。ミハエルの名は神兵や小野によって知っていたが。アースという言葉を聞いたのも初めてだ。
アース。機械のたぐいだろうか。
「あれ? ミハエルさまのフルネームはミハエル・アル・ソトファ……ミハエル様と親戚なの?!」
「そうともいえる。彼らは似たような存在だからね。でも、美菜ちゃんに敏明くん!」
くん!?
思いもよらぬ呼び方に、脳がフリーズした。「くん」付けされる年齢はとうに過ぎたというに、まさかの。
「やっぱり今は、ミハエルの事情は関係ないんだ。早く、あの奥の神さまの元に行かなきゃならない! 人類に会いたくてうずうずしちゃってるからね!」
「奥の……!? それは、」
人類全てを祟る神がいるのではないか。
敏明の制止に、女性はウインクを返した。
「マズくもないんだ。1時間前までは激ヤバ神だったけど、今は違う」
そして、ウジャムンガの巫女は、奥へと続く御布を開けた。
「ではレッツご対面。神の一部、一面、ご登場ですよ!」
◆
奥の部屋は、以前見た時と同じだった。塔の壁に、黒い棺。
棺は開いていた。その中には「美菜」が眠っていた。
そして、彼女をただ見ている存在がひとつ。
青い髪に真白の衣。聞き心地が良い低音ながら、地獄の底から響いてくるような気迫を持った声。
「アル・ソトファ基幹システム・タイプAr・S……貴様らが神と呼ぶ存在だ」




