眠り姫モノクローム
あったかいもの。
つめたいもの。
囲まれながら、美菜はふわふわと浮いていた。
人は眠れば夢を見る。夢想の世界は神の世界だ。
眠りとは、人に許された至福の一時。何も考えず、大きな存在に委ねていられる。
だから、眠りを妨げられれば人は悲しむ。せっかく大きなものに包まれていられる一時を、ジャマされているのだから。
「ゆかちゃぁん、あと5ふん・・・・・・」
「だめよっ。もう起きる時間なんだから!」
「きびしーい・・・・・・」
由香の声を聞きながら、布団を首元まで引き上げる。
やわらかくてあったかい布団は、名残惜しげに美菜を温める。布団の中は夢の世界と同じで、優しく温めてくれる。
「ふぁあい・・・・・・おはよう、ゆかちゃん」
「おはよう、美奈ちゃん」
優しい親友の笑顔を見ながら、体を起こし。
今日もいつも通りの、日々が始まる。
……そのはずだった。
◆
『創世神の』『神歌の儀だ』『あなたは、神とひとつになるのですよ』
大人達から、何度もそう言われた。これはとても名誉なことなのです、だから少しの苦しさは我慢しなさい、と。
そう思っていた。
「みんなのため」に、がんばらないと。
けれど、儀式の直前に出会った巫女は告げた。
これは全て、大人達の独善で行う儀式だと。あなたは神とひとつになり、大人達のために動く者となる、と。
……つらい、苦い、いやだ。
……彼女は「自分のため」を祈ってしまった。
こんな世界、目を閉じて、何も見えなくなったら良い。
眠り姫となった巫女は願う。
◆
大人達なんて、滅んでしまえば良い。
眠り姫を守ると誓う巫女は願う。
◆
この世界なんて、消えてしまえばいいのに……。
◆
「それ」」を見たのは、偶然だった。
眠りの世界の中、あらゆる過去を、未来を見た。
「超人」が跋扈する世界。歌が大いなる力を持つ世界。幾億の首を持つ、神の獣に滅ぼされた世界。
その中で、ひとつ。
巨大な人型の鋼鉄。
「それ」ならば、この神鋼の塔を、砕くことができる。根底から根刮ぎ、破壊と根滅へと導くことができる。古代の記憶は伝える。「それ」こそ、人類を終焉らせるに相応しい姿だと。
だから、
眠り姫を守る巫女は、眠りの世界の中で名付ける。
モノクローム・ルミナス
白と黒の光、と。




