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眠り姫モノクローム

 あったかいもの。


 つめたいもの。


 囲まれながら、美菜はふわふわと浮いていた。


 人は眠れば夢を見る。夢想の世界は神の世界だ。


 眠りとは、人に許された至福の一時。何も考えず、大きな存在に委ねていられる。


 だから、眠りを妨げられれば人は悲しむ。せっかく大きなものに包まれていられる一時を、ジャマされているのだから。


「ゆかちゃぁん、あと5ふん・・・・・・」


「だめよっ。もう起きる時間なんだから!」


「きびしーい・・・・・・」


 由香の声を聞きながら、布団を首元まで引き上げる。


 やわらかくてあったかい布団は、名残惜しげに美菜を温める。布団の中は夢の世界と同じで、優しく温めてくれる。


「ふぁあい・・・・・・おはよう、ゆかちゃん」


「おはよう、美奈ちゃん」


 優しい親友の笑顔を見ながら、体を起こし。


 今日もいつも通りの、日々が始まる。


 ……そのはずだった。



『創世神の』『神歌の儀だ』『あなたは、神とひとつになるのですよ』


 大人達から、何度もそう言われた。これはとても名誉なことなのです、だから少しの苦しさは我慢しなさい、と。


 そう思っていた。


 「みんなのため」に、がんばらないと。


 けれど、儀式の直前に出会った巫女は告げた。


 これは全て、大人達の独善で行う儀式だと。あなたは神とひとつになり、大人達のために動く者となる、と。

 ……つらい、苦い、いやだ。


 ……彼女は「自分のため」を祈ってしまった。


 こんな世界、目を閉じて、何も見えなくなったら良い。


 眠り姫となった巫女は願う。



 大人達なんて、滅んでしまえば良い。

 眠り姫を守ると誓う巫女は願う。



 この世界なんて、消えてしまえばいいのに……。



 「それ」」を見たのは、偶然だった。


 眠りの世界の中、あらゆる過去を、未来を見た。


 「超人」が跋扈する世界。歌が大いなる力を持つ世界。幾億の首を持つ、神の獣に滅ぼされた世界。


 その中で、ひとつ。


 巨大な人型の鋼鉄。


 「それ」ならば、この神鋼の塔を、砕くことができる。根底から根刮ぎ、破壊と根滅へと導くことができる。古代の記憶は伝える。「それ」こそ、人類を終焉らせるに相応しい姿だと。


 だから、


 眠り姫を守る巫女は、眠りの世界の中で名付ける。


 モノクローム・ルミナス


 白と黒の光、と。

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