表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
51/62

爆破、のちの未来へ

 儀式場が爆発した。


「ふわっ!?」


 美菜は空中へ飛ばされた。五体から感覚が消える。見えるのは空。空へと吸い込まれる、砕け残った黒い霧。ミハエル様とダンテさんは、いない。空にも地上にも。白い布きれだけが残っていた。


 とっさに手を伸ばしたが、やめた。空の向こうは、ぽっかりと空いた青い空。自分の勘が告げている。あの先は、きっと幸せな場所だ。ウジャムンガ様も恐らく仰っている。彼らは新しい場所に行くだけだ、きっと。


 上空からは、上層の町が見える。


 ショッピングモール、端の森、人々が暮らす町並み。


 あの中に、自分たちはいたのだ。


 今は、血と泥に塗れている。それでも、後悔はない。


 この世界を、自分の好きな人々を、守れたのだから。


 ふんわりと、美菜は神殿の庭に落ちてきた。手を握ってみる。ぐー、ぱー。足を回してみる。服を見てみる。何も変わっていない。ほんのさっき、ミハエルと対峙したのが夢のようだ。


「ふわぁ……」


 先は、ミハエル様と戦った庭だった。吹き飛んだ儀式場のガレキが散乱し、もとの庭園は形も無い。


 大きなガレキの側に、敏明が寝ていた。その奥には、もう一つの大きなハコ。


 ……棺?


 確かめようとして、美菜は自分の手が震えていることに気がついた。なんで? あれはミハエル様より、古神よりもっと悪い者なのか?


 もう一歩、根性を出して近付こうとした時。


「儀式場が! 爆破されたぞ!」


「ミハエル様は大丈夫なのか!? あと俺達の給料も!」


 慌ただしい声が聞こえてきた。聞き覚えのある声は、どう考えてもあの時誤魔化した神兵達である。


「やばっ!」


 美菜は敏明を抱え上げると、そのまま逃亡した。



 ミハエルも空中に飛ばされていた。長い金髪が風に舞う。


「……ウジャムンガの、力が……美菜さんでもダメだったのに、あっという間に解呪しちゃうなんて……」


 融合したはずの古神の力は既にない。本当に、あの神は呪いを消してしまったのか。相変わらず規格外すぎる神である。


 過去のミハエルが、最も求めたわけだ。


「……なんで今になって……今じゃなくて、もっと前だったら、良かったのにな……」


 そうすれば、「みんな」を救えたのに。


「……私の時は、来てくれなかったのに」


「……」


 存在は黙り込んだ。神ですら、何も言えないひとときがあるのだ。


「……いいですよ。この最後の瞬間に、会いに来てくれたんですから」


 私の思念。思念の私。


 いつか生まれ変われる……のかな。


 風に舞う神力の中には、ダンテの存在もあるのだろう。ミハエルが神力を以て創り上げた彼は、また力の欠片となって彼女の元にいるはずだ。


『行こう、ミハエル。変わるために』


 私達は変われるのだろうか。元に戻れるのだろうか。


 そうしたら、次こそ、あのひとの、となりで。夢を見よう。見続けよう。


 この塔が消え去り、空想がカタチになる、その日まで。



 コードの中を這い回り、黒い線は塔の中を蠢いていた。


 やがて、線は思念を元に重なり。黒い髪の女性になった。女性はミハエルの思念のまま、言葉を紡ぐ。


「世界に苦みを」


「苦しみを」


「狂乱を」


 そのためには、人間の組織が必要だ。


「例えば、ファーレン……とでも名付けましょうかね」


 永い永い時を経て、創り上げよう。世界に苦しみを撒き散らすために。


 その組織は、きっと世界を……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ