あなたの望みを、
上空から、美菜が落ちてきていた。
速度は落下しているにしては遅い。敏明のいる場所からでも受け止められる。
「……美菜!」
名前を呼ぶと、落下地点へと走る。美菜はすっぽりと腕の中へ収まった。礼よりも驚きよりも、美菜は血相を変えて叫ぶ。
「敏明さん! 死の雨が! やばい!」
「は」
顔を上げると、黒色の雨が、いつの間にか赤黒に変化している。廃棄された油の如く、ねっとりと地面に張り付き、徐々に広がっていく。
一目で見てヤバいと分かるシロモノだ。
息を整えていた敏明は顔を引きつらせた。奥の壁から黒い影が湧き出ている。人斬りはどうにかできたが、古神とやらは復活してしまったのか。
「なんだ、これ」
「神力をぶっ込んだら、古神がまだまだパワーアップ! このままじゃ、もう10分くらいで世界が崩壊しちゃう!」
「そんな、スケールでかいのか」
「あ、お兄さんもケガしてる! 大丈夫!?」
「……美菜。俺をあそこまで連れていけ」
「えぇっと、傷薬傷薬!」
「治している余裕はないだろ」
「だめだよ! 傷はすぐ治さないと!」
敏明から降り、美菜は懐を探り始める。今更気付いたが、腰辺りにべっとりと血がついていた。
「美菜、お前も怪我してるのか」
「え? 私は大丈夫、加護があるから……ってお兄さん、手もやばい! ていうか手の方がやばいよ!」
「……大丈夫だ」
「どこがーっ! なんかすごいことになってるよ!? 骨とか見えてない?」
「怖いこと言うな」
赤と黒に塗れるあまり、天井までずるりと落ちてきた。床がひび割れ、足下が崩れていく。そもそも足場すらほとんどない。斬られた体では到底正常なバランスは取れない。
「お兄さん、私に任せて! ウジャムンガ様、今こそ力をーっ!」
浮遊感が体を包む。暗闇の中に紛れていく。
何かがいる。
空間の中に。暗闇の中に。
(……いる)
「誰かを思いつつ、反抗する力。あなたはそれを行いましたね。あなたの望みを叶えましょう」




