王、巫女、現世、輪廻
扉の前に、男が1人。四角い仮面を被った男だった。
「……少し待て。私の名はダンテ。この先の古神に対して策がある」
敏明は構わず蹴り飛ばそうとしたが、声にはどこか聞き覚えがあった。美菜が、震える声で呟く。
「その声……お兄さん?」
「……厳密に言えば違う。だが、そのことは今は良いのだ。クローンよ、ここで私から提案がある」
「……クローン?」
「小野氏から聞いていなかったのか。お前は王の写し身として創られたのだ。神殿内の研究所で、ミハエルによって」
「……」
にわかすぎて信じられない。
敏明が怪訝な顔をしていると、ダンテは小さく首を振った。信じられない話を振っておいて、なぜそこで失望した顔をする。
「驚愕は後だ。王よ、今こそキングオブアタックをあのにっくき古神にぶつけるべきだ。……王が古神に何をされたかは、流石に知っているだろう」
「……」
「王として、使命を果たすのだ」
遙か昔。世界には「王」と呼ばれる存在がいた。
そして古き神がいた。
神は人々の「精神」を操り、あらゆる争いを呼び起こした。
王は自分の「にく」を犠牲とすることで、神の浸食を解除した。自分の身を犠牲とする存在を贖罪し称えるために、「王」という権利を与えることを新たな神たちは決めた。
王とは必ず崩壊する者。
そんな危険なものに敏明は選ばれていた……今回は人的被害を顧みぬほど詰んでいる事態なのである。
王を以て、神を抑える。一人の犠牲で、世界も、巫女も助かる。
「……でもそんなのじゃ、私は納得しないわ。今までの、巫女が犠牲になる方法と変わらない」
美菜の目が、一瞬青く輝いた気がした。
「それにウジャムンガ様も。誰かを犠牲にする方法を排除しようとした神だもの。必ず神力を使って反対なさるわ」
「そうだったな。ウジャムンガ。願いの集合で顕れる神。王の時代にはなかった新しい神だ」
ダンテは深く頷いた。
「ウジャムンガ神を介することで、犠牲になることなく神の解除が可能となる。かまどに集まる人々を起源とする、集合の神だ。人々の認証は集められているか。まずはクローン」
何を言っているか不明だったが、とりあえず仲間が多いか聞かれていることは分かった。
「友達が多そうな奴に見えるか?」
「私には巫女サーのみんながいるわ! みんな一騎当千の力を持つ、大切な仲間だもの!」
「だったらいける。良い友を持ったな、巫女よ」
「えっへへぇ……」
「実のところ、認証は100人程度が必要だ。けれど、この少女達であれば大丈夫そうだ」
「……そうだ?」
不安な言葉尻を繰り返すと、ダンテは自信満々に頷き。
「半分くらいは行ける」
「……」
50%を必ずというのか、この男は。




