潜入はダンボールで
由香が取りに行っている間、樫木は結界を張ると宣言した。いくら神の加護があっても、神殿の兵士達に怪しまれてしまう。
数十分ほどして、由香が戻ってきた。
「ここに入ってね、美菜ちゃん」
持ってきたのは、ダンボールだった。かなり大きい。ご丁寧に荷台に乗せられている。持ち手用の穴が開いていて、なるほど、大人が一人二人なら入れなくもない。
敏明は静かに息を呑み、由香のデコにチョップをかました。
「アホか」
「おでこをしばかないで下さい! れっきとした潜入方法なんですよ?」
「そうですよ。ダンボールは怪しまれない、入りやすい、作戦終了時の処分もしやすい。いいことづくめなんですよ?」
「古典的すぎだ、お前ら」
今からでも別の方法がないかと探すが、美菜の姿がない。代わりにダンボールから、赤いポニーテールがひょこひょこ揺れていた。
「あっ、これかなり広い! 敏明さんも入れますよ!」
「お前は躊躇ってものがないのか……」
「チューチョ? チョウチョの種類ですか?」
「……もういい」
巨大なダンボールで敵地に侵入する青年。これ以上シュールな光景がどこにあるだろうか
しかし、手っ取り早い方法はこれしかない。
諦め、敏明はダンボールに近づく。
「入るのか? 入ればいいんだな?」
「えぇ! ぜひ! 重さなら気にしないで下さい、巫女の力で腕力を強化しますから!」
由香はいい笑顔を浮かべた。両手には美菜と似たデザインの篭手が付けられている。
何も考えず入る。ダンボール特有の湿気と匂い。美菜の体温。微かな香の薫り。
……この光景、だいぶやばくないだろうか。さすがに創世教の神殿に知り合いはいないだろうが、見つかったら先に警察を呼ばれるのではないか。
「狭いね! あったかいね!」
「お前、ぜったい喋るなよ。誰にもだ」
「やだー、喋ったら計画がバレちゃうじゃないですか! 話さないですって-!」
「そういう問題じゃない」
「閉めますよー。覚悟して下さいねー」
さらに湿気が濃くなる。これは香だろうか。すっきりとした中に芯の強さを感じる。……鼓動が早くなる。なんでだ。本当になんでだ。
武者震いということにしておいた。
「それでは、美菜。私は別ルートで向かいます。あなたにウジャムンガ神のご加護がありますように」




