激闘! 神兵&使徒!
空中に、巨大なアゴだけが、頭を食われた親方だけが浮かんでいる。アゴの周りは、以前見たものと同じ、黒い線が無数に浮いていた。
「な、なんだあいつは!」
「親方ー!?」
「お前らには特別に見せてやる! これが使途の一体! 神を従えるとは不敬、なんて言うんじゃねぇぞ!」
神兵は懐から端末を取り出すと、何かを操作する。空からずるりと長く太い線が湧き出てくる。路地を突き刺す。悲鳴が上がる。
「ふははは! 壊れてしまえ、下層など!」
叫びながら、神兵は線に飲まれていった。
「はぁっ!」
露店の影から、桜色の光が現れた。拳を叩きつけると、口から親方が外れ落ちた。
「大丈夫ですか、皆さん!」
「あ、あんたは……!?」
周囲がどよめく。
どう見ても美菜は、頭に大きなネコの被り物をしていた。どこから持ってきたのだろう。顔バレ防止だが、超常の光と全く合っていない。違和感の塊である。
「わ……私は、そう! みんなを救う「にゃしゃも仮面」です!」
「「「「「にゃしゃも仮面!?」」」」」
「ですから、あの黒い悪い奴をぶっ倒して、みんなを平和に導きます! どりゃ!」
美菜が気合いを込めた瞬間、敏明に言葉が届いた。耳ではない、脳内に直接。反射神経は異常と感じ、一瞬耳を塞ぎかけたが、これも巫女の力だろう。テレパシーなんて一般酒飲みが使っていい力ではないと思う。
『敏明さん、もう一度力を貸して!』
『……分かった』
心の中で美菜へと頷く。それだけで巫女には分かったようだ。戦いながら、彼女は小さく頷く。線の動きは以前のものより遅い、テレパシーをしながら戦う余裕があるようだ。
『あの黒、切ってくるよな』
『うん、切ってくるけど……敏明さんは、安全なところからナイフを投げてくれれば』
『お前ひとりじゃ、またぶん殴られるだろ』
『け、けど……敏明さん危険じゃない?』
『今更。危険もなんとも思わねぇよ』
『それについては後で問い詰めたいけど……それなら、これを』
美菜は片方の小手を外した。一見小さく見えたが、敏明の手には収まった。
以前の戦いを思い出す。電気に弱い。それが神の「線」の特徴だ。
「神ってのは、以外と弱いもんなんだな』
「急造りの神はね! ぐえっ』
「あ、飛ばされた」
吹き飛ばされた美菜は、屋台の上に落ちた。落下させた敵には構わず、神はゆっくりと市場を横切っていく。
神力のない攻撃でないと通じないとのことだが、ぶん捕まえて投げるくらいは出来るだろう。神の端を掴む。鰻のような鱗のような、ぬたりとした感触。やはり創世教は信じるべきではない。
瞳……のような箇所が敏明を睨む。だが、人斬りのような殺気はない。虚空が溢れているだけだ。そんなもの、カビと変わりない、ただの生物だ。
小手をしている右手で、思い切り投げ飛ばした。神は吹き飛び、屋台の骨を折りながら墜落した。無数の線が散る。棘のように家の壁に突き刺さっていく。
屋台の骨から、桜色の光が飛び出す。
「でやぁぁぁぁ!」
桜色の光が敏明の頬を掠めた。
鈍い音が響く。線が四方に広がり、霧散していく。神兵が倒れていた。鉄兜は曲がり、鼻血が出、あちこち破れ、哀れなことこの上ない。意識はちゃんとあるのか、線が消えたことに気付くなり血相を変える。
「神が消えた!? 貴様、不敬、不敬だぞ!」
「誰が言うか」
「人斬りに連絡だ! いいかお前ら、人斬りさんが来てくれればお前らなんて真っ二つなんだからな!」
「なんだか器の小さい人ね……ともあれ! あとはこの人達を追い払えば勝利! 行っちゃいますか! 神兵さんに対抗するパンチ……」
「その必要はありません」
スラムに、平坦な声が響いた。




