新しい巫女と命の危機!?④
目が覚めた時、美菜の顔がすぐ側にあった。心配している表情だったが、言動がツッコミどころだらけだった。なぜ埃まみれって、お前だお前。
美菜の威勢の良い声が聞こえ。視界が桜色に染まり。その前に、自分は。
「……ぐえ」
記憶がはっきりした途端、寒気が背骨を駆け上がっていった。喉が侘しく鳴る。地面に、再び胃の中身が去っていった。
氷のような悪寒は、胃の不調だけではない。膝の震えは、初めて感じるものと主張したい。でも初めての感覚ではない。忘れたかった。逃げたかった。帰りたかった。それでもアスファルトに散った石は戻らない。
背中に暖かいものが触れる。美菜の手だった。
「結構弱きなのね……でも大丈夫よ! この巫女がいるということは、ウジャムンガ様のご加護もあるということ! ご加護があれば穴に落ちても斬られても、痛いだけで終わるんだから!」
それはふつうのことだ。
反論しようとしたが、それよりも寒くて声が出ない。美菜の手がカイロよりも暖かい。やがて、酸っぱさも収まり、水を飲もうとして、そもそもボトルなど持っていないことに気付く。
「……ビールならあるわよ」
「もう呑まねぇ」
だが、喉の渇きは癒やせない。喉が張り付き、咳き込む。乾いた咳が出る。侘しくなる。
「……敏明さん」
美菜の声がかかる。低く、決意に満ちた声だった。
「神話を紡ぎましょう」
「は?」
顔を上げると、美菜の目は碧の光を映していた。碧。新緑の色。
引き込まれるように凝視していると、美菜は拳を握った。
「新たな神話を紡ぎ、創世神とあのキモノマンに対抗するしかないわ!」
「キモノマン……」
ひどい言われようだ。名前すら知らないが、そんな名前じゃないことは明らかすぎる。さっきまで神秘的な雰囲気だったのに、あっという間に台無しになった。
「よし!」
美菜は真剣な顔で、敏明の肩を叩く。
「それじゃ、まずは計画だよ! お兄さんの部屋に戻ろう! 生贄ナシで贄る方法を探すんだよ!」
「贄るってなんだ」
そんな活用形初めて聞いた。
「じゃ、罪の無いお姉さん達をいじめる奴らに説教」
ラチがあかない。
美菜のビールを奪い取ると、口に含んだ。微かな水分と、圧倒的な苦み。視界が回転する。 倒れた。
「ぎゃー倒れた-!? 熱中症!?」
もーめんどい。




