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新しい巫女と命の危機!?③

「おい! 人斬りが出たぞ!」


「人斬り!?」


「人斬り!」


「おにいり!」


 騒々しい怒鳴り声で、美菜は回想から戻ってきた。周囲の人々の顔が青ざめ、足早に流れていく。歩き、走り、小走りに急ぐ方向は、市場から逆の方向。


「下層は物騒ね。わたしたちも離れましょう、美菜ちゃん」


「……ごめん、由香ちゃん。先に帰ってて」


「美菜ちゃん? どこに……まさかあのお兄さんを?」


 不安な表情をする由香に、笑顔を返す。


「大丈夫、私にはウジャムンガ様がついているわ! きっと足がナナメに曲がるくらいで終わるはずよ!」


「美菜ちゃん、それは普通に重傷……!」


 由香の声を聞きながら、神力で走る力を底上げする。ビールが飲めなかったのが逆に良かった。神力は途切れること無く脚力を上げている。


 大通りを駆ける人間はもう少なく、遠くから騒ぎだけが聞こえてくる。怒鳴り、怯え、悲しみ。


 敏明が襲われている。勘だ。しかし居場所は分からない。


 走るのを止め、一度路地裏に入る。地面に膝をつき、重ねた手を空へと向ける。青空はウジャムンガ様の象徴。雲で覆われていても、その奥には青い色がある。


「困ったときはウジャムンガ像からのご神託を……そしてこのポーズを……!」


 美菜は頭脳をフル回転させ、方法を思い出す。巫女の人から教えてもらった動作。ちなみに受講料3000円なり。


 ちなみに神託を得るには神像が要ると言われたが、あいにくと無くしてしまった。更に方角がどうとかも言われたがやっぱり忘れた。


「仕方ない! とりあえず祈るわ!」


 二拍、三拍。


 しばし、静寂だけが流れた。


「特に神託がなし! これは自分の勘を信じろということですねウジャムンガ様!」


 とりあえず走る。ビールを飲まなかったせいか、身にたぎる神力は美菜の足を加速させ、壁算段蹴りなどをこなしてみせる。とにかく向かうのは警告が聞こえてきた先。見渡す限り、大通りにはいない。裏通り、それも人斬りという通り名が示すような、暗く細い道……!


 ペナントのついた路地。見知ったコートを見つけた。敏明だ。背中部分が細く裂けている。頭の芯が熱を持つのが判った。


 隣に、輝く刃物を持った男。顔なんて見ていられない。なんだか黒い人影としか分からない。


 だが、撃退するには、曲者と判断するには、それだけ分かれば十分だ。


 拳を振り上げ、神力を込める。


「その人から離れろぉ!」


 桜色の光が、淀んだ壁を照らす。勢いよく射出された気力の弾はアスファルトに着弾し、爆風が吹雪のように頬を撫で、砂が剥き出しの足を弾く。


 地面ごと、男は爆ぜた。


「あっやりすぎたわ。やっぱ薬酒飲んでないと威力の調整が……」


 いくら刃物を持っている危険人物とはいえ、爆発すれば只では済まない。さすがの美菜も焦ったが、煙が晴れた時、男はいなかった。


「神力の一撃を受けて、無事だったとでも言うの……?」


 疑問が生まれるが、今は敏明の無事が先だ。辺りを見回すが、男の側に倒れていた敏明もいつの間にかいなくなっていた。


「あ、あれ? と、敏明さーん? としあきさーん?」


 慌てて探すと、隣のビルとビルの間に突き刺さったような体勢で倒れている敏明がいた。砂埃で塗れ、くったりして動かない。


「お兄さん!」


 真っ先に背中の傷を確認する。幸いにも皮膚が裂けている程度で、血も出ていない。ひとまず、胸を撫で下ろした。


「けれど、こんなにひどく埃まみれになって……誰にやられたの!?」


「ほぼお前だ……」 

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