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願い事【8】










 病院に行ってきたオスカーたちは、病院の職員や患者に話を聞いてきたらしい。さらに、権力を使って院長にも会って来たそうだ。さすがの行動力である。

「患者からの評判は良かったぜ。先生が親切だって」

「職員からも働きやすい職場だって言われてたな」

 オスカーとロデリックの言葉に、フェイは思わずツッコミを入れる。


「あんたたち、何しに行ったのよ……」


 ただ病院の評判を聞きに行っただけみたいになっている。だが、そうした些細な情報も必要と言えば必要なのだ。

「院長は患者さんのためになることなら、なんでもしたい、っていう人だったよな」

「もちろん、ちゃんとリスクを説明したうえで、って言っていたけど」

 オスカーとロデリックが集めてきた情報は、おおむねそんなところだった。オスカーが頭をかく。

「あー、やっぱりハリソン連れて行けばよかった」

 ハリソンは精神感応能力テレパシーを使えるのだ。こうした作業にはうってつけなのだが。


「でも、確かハリソンのテレパシーって、勝手に使えないんでしょ」


 と、フェイはローレンを見ると、彼女は「そうね」とうなずいた。


「使ったら、警報が行くようになってるわね」


 とのことだった。『管理されている』ということだ。フェイは機密情報局のこういうところも気にくわないのだが、これは結局、ハリソン自身を守ることにもつながるので、強くは出られない。

「あ」

 唐突にアサギが声をあげた。みんなの視線がそちらに向く。

「どうしたの?」

 代表してローレンが尋ねた。アサギは端末を持ち出して見せてくれた。

「なんかメールきた」

「……」

 うん。確かにメールが来ている。しかも、あからさまに怪しい。


『おめでとうございます。あなたは選ばれました。本日の午後十一時、所定の場所までお越しください。あなたの願いをかなえる最後の儀式です。判断を間違えれば、周囲の人も巻き込むことになります。必ずお越しください』


 という脅迫メールに地図が添付されていた。うーん、これで誘い出されたのか?

「……普通、警察に届けようと思うよね」

 アサギが冷静に言った。そう。ここにいる六人は冷静な判断ができるだろう。だが、全ての人がそうだとは限らないし、実際に身近な人物に何か起こったのかもしれない。

「……自称詐欺師、何か意見は」

 フェイが尋ねると、ローレンは「うーん」と首をかしげた。


「もしかしたら、直接会った時点で何か催眠術的なものを仕込まれている可能性はあるけど……」


 とローレン。アサギとクリスティーナがきょとんと眼を見合わせていた。ローレンがははっと軽く笑う。

「二人には精神干渉系の能力は効かないからね」

「そうなのか? ハリソンのような能力は効かないということか?」

 ロデリックが素で尋ねた。ちょっと驚いているようだ。まあ、確かに精神干渉系能力が効かなかったら、ハリソンはこの二人の前ではただの人だしね。

「ん、まあ、そうだなぁ。ちなみに私も効かない方だな」

「……ちなみに、フェイとローレンは?」

 オスカーの言葉に、ロデリックが顔をひきつらせつつ尋ねた。フェイは少し眉をひそめた。

「あたし、そこまで人間離れしてないわ」

「なまじ記憶がはっきりしてるから、洗脳を解くのが大変だよね」

 フェイはかかったことはないが、ローレンはかかったことがあるらしい。というか、話がそれている。


「ま、だまされた振りして行ってみればいいんじゃないの? ゴーサインを出すのはオスカーだけど」


 と、ローレンが言ったところで、ハリソンが戻ってきた。視線が一気に集中して、ハリソンはびくりとした。

「な、何だ?」

「いや、ハリソンはアサギとクリスの前だとただの人だよねっていう話をしてたんだよ」

 平然とそんなことを言うローレンである。案の定、ハリソンが「うるせぇよ!」と顔を赤くしてキレた。

「それで、どうだった?」

 オスカーがハリソンに尋ねると、彼は「要領を得ないな」と答えた。

「あの男は依頼を受けて襲撃しただけらしい。長い黒髪の背の高い女を拉致して来いと言われたらしい」

「背の高い女……」

 フェイは胸を押さえた。確かに、フェイはそこら辺の男より長身だ。男に間違われたことはないけど。

「俺が見た感じ、嘘は言っていない。どちらかというと、関わっているのは製薬会社だ。それと、途中で邪魔されて怒っていたな。依頼料がパーだと」

「や、こっちも仕事だからね」

 明らかに自分のことを言われているとわかったのだろう。ローレンが冷静に言った。


「ローレン、どう思う?」


 最終的に、どうしても頼るのはローレンだ。個々の情報を集めてつなぎ合わせるのが彼女だ。

「襲撃者ははじめから情報を与えられていなかったんだ。暗示をかけられていたとしても、ハリソンがそれを突破できないとは思えない」

 割の良い仕事だったんだろうね、とやっぱり彼女は冷静だ。

「これ考えたやつ、中途半端に頭いいねー」

 絶対に馬鹿にしている。ローレンなら完全犯罪もできそうだ。むしろ、彼女はなぜ捕まったのか。

「とりあえず、ハリソンは外で精神感応能力テレパシー使う許可もらってこい。クリスとロデリックも外で戦う準備しておけ」

 機密情報局は、所属している能力者の能力の使用は許可制だ。いや、フェイの治癒能力は制限がかかっていないが、相手に悪い影響を与える系の能力はすべて制限がかかっている。ハリソンの精神感応能力は特に制限が厳しいはずだ。


「了解」


 ハリソンはうなずいて許可を取りに行く。その間に、クリスティーナが剣を、ロデリックが火器を用意し始めた。念動力を持つ彼だが、一番相性がいいのが火器管制だと判明したのである。

「ローレンはフェイの護衛な」

「ねえ。護衛の私だけ武器なしって、おかしくない?」

 ローレンとアサギは後方支援で補助を行うことが多いが、何度も言うようにローレンはこの第三班一の戦力だ。なのに武器の携帯が許可されない。

「自覚しろ、戦闘狂」

「いや、理性はあるんだけど……」

 戦闘狂であることは否定しないらしい。そろそろキャラを一つに絞ってほしいところだ。

「許可とってきたぞ。クリスも剣持って行け」

「わかりました」

 ハリソンが戻ってきて言った。クリスティーナはほっとしたように自分の剣二本を持った。剣に本を持つクリスティーナも不思議だが、携帯火器を大量に鞄に詰めているロデリックもおかしい。というか、彼もだいぶ機密情報局に染まってきた。ついでに言うならハリソンも狙撃銃を用意しているが……。


「ハリソン、尋問役だから狙撃銃じゃなくて小銃持っていきなよ」


 自分も外出の準備をしていたアサギがツッコミを入れた。確かに。直近で使えないわけではないが、不便だろう。

「……早撃ちは苦手なんだけどな……」

「あたるだけいいじゃん」

 銃を持っても全く的に当たらないローレンが言った。彼女に銃を持たせるくらいなら、フェイが持った方がましである。

「あんたは素手でいいでしょ。アサギはクリスと一緒で、オスカーはロデリックとハリソン連れて行くの?」

 フェイが尋ねると、オスカーは「いや」と首を左右に振った。

「お前たち、ハリソン連れて行け。たぶん、接触する可能性が高いのはそっちだろ」

 確かに。フェイが狙われているのだし、当然と言えば当然のことである。

「でも、アサギも狙われてるって言えば狙われてるんでしょ」

 今から罠にかかりに行くのだから、むしろアサギの方が危険なのでは? と思ったが、そちらはオスカーとロデリックが後をついていく、とのことで。

「むしろオスカーの方が危ないかもな……」

 ハリソンの指摘に、オスカーは「ははは」と笑った。


「ま、何とかなるだろ」


 うちの指揮官は基本的にこんな感じである。










ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


オスカー、ハリソン、クリス、アサギは洗脳が効きません。フェイ、ロデリック、ローレンは効く。


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