↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第二ドーム奪還作戦
108/113

狂う

 第三ドームは廃墟と化していた。

 建物は倒壊していて、地面には無数の機人(オート)の肉体が転がっている。


 積み重なるは、大量のメイドと執事。

 そこには機人(オート)の山が制作されていた。


 その機人(オート)の山の天辺に座り込み、胡座をかいている女性がいる。


「ノーネーム!」


 ツェツィーリヤが思わずといった様子で、叫びを上げて、それから数歩を後退った。

 彼の声に反応して、ノーネームと呼ばれた女性の視線がこちらへと向く。


「あ! あ! ネリー! エレノア! ツェツィーリヤ! ……誰か!」


 ノーネームは目を輝かせ、機人(オート)の山から立ち上がる。その瞳はまるで童女の持つ瞳のように、淀み一つ存在していない。

 ただ一つ。


 おかしな点があるとすれば、それはノーネームの長い舌が一切口内に納められていないことだろうか。

 彼女はだらしなく、その舌を外気に晒している。


 涎がダラダラと、舌にいるメイドたちに滴っていた。


「遊ぼ! 遊ぼ!」


 ノーネームの容姿は、彼女の持つ雰囲気とは相反していた。

 この見た目だけに限れば、ノーネームはクールビューティーを擬人化したような姿である。


 その如何にも大人といった容貌の女性は、実に幼稚な言葉遣いで、幼げな言葉を紡ぐ。


「ネリー!」


 ネリーは慌てたように『命ノ灯(アラハ・ハール)』を発動した。

 ただ、その炎はいつものような炎ではなかった。


 色が違った。

 赤い炎ではなく、そこにあったのは蒼炎である。


「『命ノ灯(アラハ・ハール)』――峻厳ノ髪(ゲブラー)


 ネリーが技名を呟く。それを引き金として、瞬時に髪が展開された。

 それはドームであった。


 髪によって、小さなドームが形成されたのだ。また、内部には一切の炎が灯っていない。


 けれども、外部には圧倒的な熱が発生しているのだろう。


 ネリーが祭子により習得させられたのは、髪を一本一本操作するのではなく、ある程度の束毎に操作する術である。

 これを習得したことにより、ネリーは普段以上の展開速度で髪を動かすことができる。


 例えば、ここに百本の鉛筆があるとしよう。それを一本ずつ運ぶのと、幾つかずつを筆箱に収納して運ぶのとではどちらが楽だろうか。


 答えは言わずともよいだろう。

 一本一本を運び、取りに戻るのは非効率的である。


 能力の効率化。

 それにより、ネリーは髪を昔よりも遥かに上手く操っているのだ。部分部分で炎の調整ができる程度には。


「く!」


 しかし、完璧に見えたネリーの防御は、遅かった。


 ネリーの腹には、既に剣が突き立てられていたのだ。


 ノーネームは、ネリーの作り出したドームの中にいた。


 展開が完了するよりも早く、ノーネームはネリーの懐に侵入したのだ。


 ミロンには何も見えなかった。


「――『慈悲ノ髪(ケセド)


 腹を刺し貫かれていたネリーだが、彼女はまだ動いていた。炎を僅かに残す髪で、自身の肉体を締め付ける。

 そして、拳を突き出した。


 その拳は、尋常ではない速さを誇っていた。

 恐らく、自身の筋力ではなく『命ノ灯(アラハ・ハール)』によって、無理矢理に身体を動かしているのだろう。


 その速い一撃も、


「つまんない!」


 ノーネームには止まって見えたのかもしれない。

 目にも留まらぬ速さで、ノーネームが横にずれる。そのまま剣をネリーから引き抜き、左手に持っていた盾でネリーを打ち付ける。


 そのまま、ネリーの髪は解除されて、容赦なく吹き飛ばされる。


「次、エレノアァ!」

「マジっすか」


 言いつつも、エレノアも即座に光輪を発動した。

 光輪が発生した箇所は二箇所である。

 両の手首と胴を覆うように、光の輪は発生したのだ。


 その上、エレノアは自身の背後へと光の刃を生み出した。


「行く!」


 と、ノーネームが叫ぶよりも早く、エレノアが動き出した。彼女は胴の光輪のサイズを変化させ、一気に周囲を薙ぎ払う。


 おそらく、ノーネームは避けたのだろう。

 ミロンの瞳には何も見えない。


 ただエレノアの顔面を盾で殴りつけているノーネームの姿だけが、ミロンには見えた。


 エレノアは咄嗟に手を振り回し、光輪を命中させようとしたが、それは命中しない。

 エレノアが力負けして、そのまま吹き飛ばされる。後方へと吹き飛ばされつつも、エレノアは背後で待機させていた光の刃で牽制を行う。


 本来ならば、エレノアの近接戦闘をサポートする為に用意していたのだが、ノーネームが速過ぎて戦闘にならなかったのだ。


「弱い!」


 いや、ネリーもエレノアもかなり強くなっている。隙がなくなり、攻撃に幅が出た。

 簡単に言うと、相手が悪かったのだ。


「これが最速の『創り者』」


 ただ速さを極めたノーネームは、誰にも捕まえることができない。


 攻撃も当たらず、加速力から繰り出される攻撃は全てが鋭い。


「あ! 初めまして、眼鏡。俺はノーネーム。第五ドーム六星長」

「ぼくはミロン・アケディ。隣の子がアリアです」

「よし、遊ぼ!」


 ミロンはゾッとした。アリアが無言で武器を構える。


 ミロンたちの背後では、ツェツィーリヤが銃を構えた。当たらないことは知っているが、それでも逃げられない以上、戦うしかないのだ。


「待て! と、祭子様が仰りました」


 ミロンたちの危機に対して、現れたのは祭子の言葉を預けられた執事型の機人(オート)であった。

 ミロンは安堵する。


 どうやら自分は襲われずに済みそうだ、と。


 直後、執事型の機人(オート)がノーネームの剣によって両断されていた。


「遊ぼ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。