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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第二ドーム奪還作戦
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帰還

 ミロンが意識を戻すと、そこには全員が揃っていた。


「待たせちゃったね」

「別に、構わねえぜ。それよりも、ミロン。さっきのあいつはどうした?」

「逃したみたい」

「あれは何の神々の死体(ホラーチャーム)だったんだ? ヴェラ系か? それとも、あれは神々の死体(ホラーチャーム)じゃなかったのか」


 残り者や一部の『創り者』には、生まれたと同時に独自の能力を持つ者がいる。

 もちろん、その力は神々の死体(ホラーチャーム)には遠く及ばない。昔、ネリーが戦った炎の残り者などがそのタイプに分類される。


「あれは神々の死体(ホラーチャーム)だよ。能力は……」


 ミロンは迷う。

 言うべきか隠すべきか。


 ラウルが懸念しているのは、仲間の裏切りである。アリアならば問題ないだろうが、他の仲間はクゼルの計画に賛さてしまう可能性があるのだ。


 ネリーはわからないが、ツェツィーリヤやエレノアならば、救いたい仲間がいるだろう。


 ツェツィーリヤは長い経験がある。その長い年月の中、一人も仲間を失っていない筈がない。

 エレノアはエヴァたちを失っている。


 ミロンにだって、救いたい仲間や知り合いが沢山いる。

 アリスも助けたいし、妊婦や胎児も救われて欲しい。腹ペコなどは明確な敵だったが、永遠の地獄を味わってなど欲しくない。


 ナルーも、今でも壊されなくても良かったんじゃないかと思う。


 なかったことにできれば、どれだけ楽だろうか。

 けれども、ミロンは諦めてなどいない。


 この世界には死がない。

 まだ、みんな生きているのだ。比喩などではなく、本当に。


 であれば、救う方法もあるかもしれない。

 救う方法がない可能性は大きいが、それでもそれを探さずに諦めたくはなかった。


『クゼル系の話はしても良いと思うよ』


 迷うミロンに助言を出したのは、ラウルであった。


『クゼルの能力は強力だ。対策が取れないと、絶対に負けるよ』

「確かに」

『一応、他の神でも擬似的にクゼル系の力を使える場合があるけどね』


 ミロンはアルルを思い出した。

 アルルの能力は、勢いを止める力であった。当初、クーマなどはアルルの能力を防御の神であるガルム系だと判断していたのだが、その本質は敗北の神ヴェラであった。


『そうだね。それに第二ドームを守っていたらしい人も、幻術を使っていたと言っていただろう?』


 この世界には既に、クゼルの能力に似た力を持つ神々の死体(ホラーチャーム)持ちがいる。


 だから、一応の対策はできるのだろう。

 しかし、クゼルの能力は一応でどうにかできる程非力なものではない。


 きちんと、クゼルの力と遭遇する心積もりでいて欲しい。


『まだクゼルは死んでいないから、神々の死体(ホラーチャーム)は出回っていないけどね。念の為に教えておこう』

「そうだね。ぼくたち以外の『創り者』があの人たちと遭遇して壊れちゃうのは嫌だしね」

『それに、クゼルの話をしたからといって、クゼルの計画が露見することもないだろうさ』


 ラウルの言う通りであった。

 ミロンは頷き、ネリーたちにクゼルの神々の死体(ホラーチャーム)について話すことにした。

 とはいえ、ネリーたちには、クゼルに似た力を使う者がいた程度に話すべきだろう。


 敵の能力名を知っているのは不自然だ。


 と、ミロンが話そうとした時に、ラウルがいつものように「あは」と笑った。


『あと、ミロンくん。僕と話す時は、声は出さない方が良いよ。あは!』


 ハッとして、ミロンは仲間たちを見る。

 全員が怪訝そうな顔をしていた。


 他のみなから見れば、ミロンは独り言を呟いているようにしか見えなかったのだろう。


「御主人様、どうかなさいましたか?」

「いや、別に何でもないよ」


 アリアが心配し、


「ミロンさんがあたしみたいになってる。これはお似合いってことっすか?」


 エレノアが残念なことを言う。


 ネリーは表情こそ変化させないが、雰囲気が可哀想な者を見る雰囲気であった。


 ミロンは首を左右に振り、意識を一旦切り替える。そして、ツェツィーリヤに話し掛ける。


「ツェツィーリヤ、話は帰り道でしよう」

「それもそうだな。しかし、結局は全員の力は見れずじまいか」

「そうだね」

「一回くらいは見てねえと問題だし、帰ってから確認するか」


 ツェツィーリヤが唇からトラックを取り出し、運転席へと飛び乗った。

 彼の姿を見て、そろそろミロンも運転を覚えたいと思ってしまう。ツェツィーリヤにはいつも苦労をかけている。


 だから、帰り道くらいは休んで欲しいのだ。

 一人に運転を任せるというのも、また負担が大きいだろう。


 少し進んだ所で、ミロンは仲間たちにクゼルらしき能力に出会ったと述べた。

 とはいえ、クゼルの能力であるとは断言しない。ミロンが推理を披露するという形で、クゼルの能力を教えていく。


「複数能力者がそんなにいるのか? いや、もしかすると一つか二つの能力を応用で別のモノに見せてるのかもしんねえな」

「げ、幻覚系は厄介っすからね。最悪、ミロンさんがひたすら幻覚を見せられてただけの可能性もありますから」

「それはねぇだろう。そこまで掛かってたら、ミロンは今この場にいねえ」

「わかんないっすよ? ミロンさんは既にやられていて、今ここにいるミロンさんは幻覚でミロンさんに化けてる偽物かも」


 自分で言っておいて、エレノアがその可能性に涙目を浮かべる。

 一方で、ミロンとツェツィーリヤ、ネリーはアリアの方をギョッとして見やる。偽物といえば、アリアのイメージが付いていた。


 まあ、エレノアが口にした可能性は低い。仮にそうだとしたら、この場の全員が怪しいだろう。

 敵には、対象を迷子にする力がある以上、能力が二つ以上あることは確定したも同然である。


「まあ、良いか。さあ、第三ドームに帰還だぜ」


 久し振りの第三ドームである。

 そう、感じてしまう程、ミロンは疲弊していた。実際の人形園にいた時間は、一日にも満たない。

 だというのに、かなりの疲労がミロンにはあった。


『創り者』が過度にストレスを恐れる理由が、ミロンには身にしみて理解できた。


 そのようなことを考えていると、ふとミロンの脳内でラウルが呟いた。


『そういえば、みんなはノーネームちゃん? とやらを怖がってたけど、忘れちゃったのかな? いやぁ、楽しみだなぁ、第三ドーム! あは』


 まだ厄介事があった、とミロンは溜息を吐いた。


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