9.ドラマ
「あ、またなんか放課後の教室で1人コソコソしてる。またエッチな小説?」
「今日はコソコソしてないよ。だってこれは全くエロくない小説だからね」
「そんなエラそうに言うことでもないじゃん……。てか冨野くん、エロがなくてもモチベ保てるんだ」
「もともとこっちを先に趣味で書いてたんだよ」
「へいへい、でも第一印象は大事だって覚えておきな。で、今度はどんなの?」
「異世界転生のバトルものだよ。陰キャオタが山車にはねられて、異世界で無双するんだ」
「それはめでたい転生だね、主人公はフノシュー?」
「うるさいな」
「いまのところ山車だけは個性的だね」
「うん、でもこの物語では誰も死なない。モンスターも敵キャラもモブすらも。あ、山車にはねられた奴は除いて」
「それはちょっと珍しいね、それ成立するの?もしかしてこないだ(1話)の人形の話関係ある?」
「言われてみればちょっとあるかな」
「ふふん、君の考えること当てるなんてちょろいもんだよ」
「自分だってちょいちょいエラそうにしてくんじゃん……」
「あはは、さっきのお返し」
「現実世界では理不尽で悲惨な事故や事件、戦争で死んでいく人があまりにも多い。だから物語の中でくらい誰も死ななくてもいい」
「ふーん」
「今薄っぺらいこと言ってるなとか思った?」
「ううん、下ネタ屁理屈大好きな不届き者がそんなこと考えてるなんて一大事だよ」
「なんかひっかかるな……」
「まあまあ。褒めてるんだってば」
「……人が死ぬ物語ってちょっと苦手なんだよね」
「前言ってた人形をごみ箱に捨ててるように感じちゃうからとか?」
「それもあるけど、都合よく人の死を扱うことに抵抗というかうしろめたさがあって……」
「……」
「何その目は」
「えっと、爬虫類が法事やってるの見た時の目とかかな?」
「なんだよそれ……もはやホラーだよ」
「ぷっ、そういう繊細さ冨野くんに似合わないなって」
「余計なお世話だよ」
「あ、怒っちゃった? じゃあお詫びのハグ」
「うわっ、外でイチャつくの嫌って言ってたじゃん」
「今教室には誰もいないよ」
「誰か通ったら廊下から見えちゃうけど」
「そうだね、じゃあ続きはあとでしたげるよ」
「ええ?ちょっと怖いんですけど……」




