5.ねこ
「芹川さん、なにしてるの? そろそろ帰ろうよ」
「あ、うんそうだね。ちょっと考えごとしてたんだ」
「またポエム考えてたとか?」
「……」
「じょ、冗談だってば。そんな睨まないでよ」
「もっとまじめな考えごとだよ」
「え? なに? どうしたの?」
「猫は自分を人間だと思ってるか、飼い主を巨大な猫だと思ってるか、だよ」
「……思ったよりまじめでもなかったね」
「誰に言われても構わないけど、君にだけは言われたくないセリフだね。君と違ってエロくないからまじめだよ」
「それはさすがに無理があるよ……。それより今からミスド行こうよ。あごがポンデリングの歯ごたえを求めてるよ」
「ミスドえらくはまってんじゃん」
「芹川さんが一時期しつこく誘ったもんだから、僕も中毒になっちゃったんだよね」
「勝手にハマって喜んでたのにすぐ人のせいにするね。でもまあ行ってもいいかな」
…………
「あ、芹川さん、猫がいるよ。おいでおいで~」
「おお、逃げないタイプのキジトラだ。君触ってもいいの?」
「すごいゴロゴロ言ってる。あそうだ、ねえ君は自分を人間だと思ってる? それとも僕らがでっかい猫?」
「ちょっと隙見せるとすぐいじってくるよね。でもこの子はそんなこと関係ないって顔してるよ、ねー」
「なんも考えてないんじゃないかな?」
「まあ猫だしね。そうかも」
「犬ならワンチャンあったな」
「あはは、犬はもともとわんちゃんだよ」
「……」
「えへへ……」
「……芹川さんって、基本賢くてマジメだけど、時々恐ろしくしょうもないこというよね。意外とチョロいし」
「今のは君が言わせたんでしょ、一緒に乗ったはずの船を知らないうちに降りて岸壁から見送るのは卑怯だよ。あとチョロ言って言うな」
「こないださ、猫飼ってる友達が、デカくてどんくさいけど餌だけはくれる猫だと思われてるって言ってたよ」
「でも、斉木は仰向けで寝る猫飼ってて、こいつは絶対自分を人だと思ってるって言ってた」
「まじ? 写真あったら送ってもらおっと」
「でもさ、この子らは多分、猫とか人とかそういうの興味ないよ。だって、それは人が決めた区分けなんだから。実際は、どんくさいけど餌だけはくれる下僕としか思ってないんじゃないかな」
「案外そうかもね」
「『猫とか人とかとかしょうもないこと考えて勝手に区分してるな。バカだなこいつら』とか思ってるよきっと」
「あはは、そこまでかな?」
「……ねえ、そろそろミスドいこうよ。いつまでケツドラムやってんの?」
「もうちょっとだけ撫でさせて」
「……僕も芹川さんの下僕になりたいな」
「うわ、ポンデ欠乏症で変なスイッチ入っちゃった」
「今度は猫のコスプレで僕にもケツドラムしてよ」
「コスプレだけじゃ満足できないんだね……変態」




