番外5 初来訪
「冨野くんさ、漫画貸してくれるのは嬉しいんだけど持って帰るの重いから、君の家に読みに行っていい?」
「え!?」
「ダメなの?無理にとはいわないけど」
「も、もちろんいいよ」
「前から君のチョイスにかなり偏り感じてるんだ」
「あ、あはは……そうなんだ、ごめん」
「別に文句言ってるわけじゃないけど。いっぱい持ってるみたいだから、自分で選びたいだけだし」
「そ、そっか」
……
「ふ~ん、家誰もいないんだ。普段からそうなの?」
「うん、共働きで。お母さんはパートのはずだけどなぜか正社員並みに働いてる」
「へぇ、じゃあ帰り遅いの?」
「今日は夕方には帰ってくるかな、ほら好きなの読みなよ」
「うわぁ……すごい量。よくもまあこんなに集めたね……」
「感心してるのか呆れてるのか微妙な反応だね」
「ん……、半々かな」
「……あはは」
「失礼なこと言ってるのは自覚してるから。なぜか君には負の感情がつっかえずに出てくるだけだし」
「は、はは……。漫画やゲームは兄貴の集めたやつもここにあるからね、僕の買ったのよりずっと多いよ」
「え! お兄さんいたんだ……」
「ちょっと歳離れててもう就職して家出たけどね」
「お兄さんも陰キャオタなの?」
「なんか多趣味だったね、少なくとも僕より社交的だとは思う」
「へぇ、意外」
「クラスの連中が今の芹川さんの毒舌っぷり見たらびっくりするだろうなぁ……」
「なんか言った?」
「いえなにも」
「ゲーム機の数もすごいね。え、なにこれ?」
「昔のゲーム機だよ、こっちはロクヨン、でこれはPS1だよ」
「PS1ってもしかして、男子がよく話してるPS5の1つ目ってこと?」
「そうだよ、知らないの?」
「そんな昔のゲーム普通知らないよ。てかこっちのコントローラどうやって持つの?手が3本いるじゃん」
「ああ、ロクヨンのコントローラーは基本こう持つんだよ」
「え、じゃあ左側いらなくない?」
「ほんとその通りで違和感ありすぎてこの機種だけで終わっちゃったんだよね。でも3D空間をアナログスティックで駆け巡る体験は当時としては強烈で、それが今では当たり前になってるから先駆者的な機種ともいえるんだよ。カセット式で同世代他機種のCD-ROMよりソフトの値段が高いのがネックだったんだよね」
「あ、そうなんだ、ふ~ん……」
「あ、そうだ! ほら、ファミコンもあるよ」
「なにそれ?」
「え!? ファミコンしらないの?」
「知ってるのは君みたいなオタクだけだし」
「いやいやいやいや!ゲーム機の原点みたいなやつだよ?」
「なんか時代に取り残された感あるよね、君って」
「そ、そうなのかな……。せっかくだし、何かちょっとやってみない?」
「どっちでも……まあ別にいいけど」
……
「めっちゃはまってんじゃん」
「ん……、雷と茶色い甲羅はちょっといいかも」
「あ、玄関の音、お母さん帰ってきたみたい」
「もうこんな時間か、そろそろ帰るね」
「結局漫画全然読まなかったね」
「また今度来させてよ、それじゃ今日はありがとう」
「そ、そうだね、じゃあ……」
「ただいま~、周ちゃん、周ちゃん!なにあの靴!まさか女の子の友達が……!?」
「こんにちは。周君と同じクラスの芹川です。おじゃましてました」
「うおっ……、あらあらあらあらららら……、まあまあまあ!」
「……お母さん、ちょっと落ち着け」
「落ち着けるかぁ!」
「あ、あはは……、すみませんお騒がせして」
「いや、騒いでるのお母さんだけだから謝らないで、じゃあまた明日学校で」
「うんそれじゃあ……、おじゃましました」
「ありがとうね~!また絶対遊びにおいでね~」
「だからちょっと落ち着けって」
「無理だっつってんでしょ!まさか周ちゃんが女の子を……、しかも明るいし良いとこのお嬢さんっぽい!」
「くそ、気持ちがわかるだけ言い返しづらいな……」
「うわ、残り香が……」
「ママ、それ危ないオッサンの言うやつだよ……」




