33.お似合い
「動物が表情豊かなときとか慌てたときなんかに『人間みたい』っていう人いるじゃん」
「うん、よく聞くよね」
「でもさ、あれ人間中心過ぎると思わない?」
「はい?」
「だってあれ、そういう行動は人がするもので動物はしないって思ってたからいうわけでしょ」
「相変わらず人の言葉尻追いかけて楽しそうでよかったよ」
「芹川さんもだんだん皮肉に深みが出てきたよね」
「褒めてくれてありがとう」
「理知的な彼女がいてホント幸せだよ」
「なんか最近冨野くんもネバっこくなってきたよね」
「優れた知性は周囲に伝播するからね」
「ねえ、そのすぐれた知性が莉緒とかにも悪影響与えてないかな」
「さあ? あの陽キャが服着て歩いてるような山田さんに影響はないんじゃない?」
「いや陽キャはもともと服着て歩くのよ」
「あそうか。でも、少なくとも斉木には今のままでいてほしいな」
「斉木君が皮肉連発するようになったら、もうそれは斉木君とは呼べないよね」
「たしかに、それはアイデンティティ崩壊するわ。あいつにはいつまでもいじられる存在であってほしい」
「お前らな~、だまって聞いてりゃ好き勝手言いやがって」
「あ、出た」
「いや最初からそこにいたから」
「あはは、まあ聞こえてるの知ってたからね、猫飼ってる斉木君的にはさっきの話どう思う?」
「ん?人間みたいってやつか。……つーか人も猫も動物もないだろ」
「おお、さすが野蛮人」
「なんだよそれ?」
「褒めてるんだよ」
「てめ~」
「斉木君、たぶんこれマジで褒めてるよ」
「そうだよそれ本質だって。動物がそういう表情したってことはそれ以上でもそれ以下でもなくて、嬉しいとか悲しいとかいうのは人間が理解しやすいように意訳しただけってことでしょ」
「お、よくわからんけど多分そういうことだよ」
「やり込められた時の冨野くんの表情も豊かで言語化しづらいよね」
「なんですぐそういう話になるんだよ」
「私は好きだよ」
「……」
「ったく、冨野は昔っからひねくれものだし、最近は芹川にもうつってるし、お前らホントお似合いだよな」
「え、お似合い? ひねくれてる? 私が?」
「「今更かよ」」




