30.いとをかし
「今日は勉強会という名のおうちデートだね」
「いや逆、おうちデートという名の勉強会だよ。もうそれだけで逃げの姿勢が見てとれるよ」
「そ、そんなつもりないよ」
「無意識なのが余計タチ悪いんだよ、わからないところあったら教えてあげるから一緒にがんばろ」
「僕のために芹川さんが勉強時間割いてくれるの申し訳ないよ」
「もしそれが本心なら、成績上げて自力でできること見せてね」
「う~ん、鬼教官の予感しかしない」
……
「三角関数って何のためにやるのかな」
「距離測るためだよ、それ勉強から逃げる方便の定番。すぐ逃げに入るな」
「僕は測らないと思う」
「誰かが測るんだよ。それに応用すれば走る自転車のポケットから落ちたスマホの衝撃を高さ換算できるんだよ?」
「ほんとかよ。だいたいそれ知ったところで絶望しかないじゃん」
「まだ勉強始めて10分だよ? ごちゃごちゃ言わないでやることやって」
……
「古文も読む予定ないよ」
「だから逃げるな、そういう答えは自分で考えて」
「同じ轍を踏まないため?」
「それは歴史でしょうが」
「じゃあ当時の思想に触れるためとか?」
「なるほどね……ってそうじゃなくて。そこまで考えつくなら文法くらい覚えようか」
「めちゃめちゃ厳しい……。なぜ本居宣長の思想を知る必要あるのか……」
「三角関数だけだとヒトラーが生まれるんだよ」
「うう……、飛躍が過ぎるよ」
「アウトバーン作れたけどヒトラーに利用されたでしょ。勉強の意味を考えていいのはやり遂げた人だけだよ。やってもない人にわかるわけないよ」
「じゃあ政経は?」
「ヒトラーに二度と騙されないためかな」
「ほんと?」
「ん……適当、ちょっとうまいこと言おうとした」
「テスト終わったら家庭教師プレイしようね」
「こっちもやってるんだから黙って勉強して」
「前ノリノリだったじゃん」
「だから~……、私も我慢してるんだよ!」
「あっ……」




