3.ミニマル
「冨野くん、また一人で黙り込んでどうしたの? どうせろくでもないこと考えてるんでしょ」
「ろくでもあるよ、フェチは効率化できるんじゃないかって仮説を立ててたんだから。つまり、示唆的な要素さえあれば満足できるんじゃないかっていう語らない美学の話だよ」
「たぶんそれ100人中99人はろくでも『ない』の方に投票すると思うよ。ほんといつもマジメな顔してしょうもないことばっか考えるよね」
「例えば、触手に絡めとられている美少女がいるとするよね」
「相変わらずひどい妄想してるね」
「そんなことないよ、江戸時代の春画にもあるくらいだし」
「またどうでもいい豆知識が出てきたね……。江戸時代から君の仲間がいたことはよくわかったよ」
「犬ってさ、リードを見るだけで喜ぶんだよね」
「それリード見ると今から散歩行けるってわかるからだよね」
「そうそう、つまり触手だけでいいんだ」
「はい?」
「修行を積むと美少女は妄想で補完できるから、触手だけで事足りるんだよ」
「何に事足りてるのかは聞かないでおくね」
「これは日常のたゆまぬ自己研鑽によってのみ達成できる境地なのだ」
「煩悩をストイックな風に語らないでよ。あ、それならさ、自分の下半身だけ見てあとは脳内で補完すれば君一人で満足できるんじゃないの?」
「……」
「性欲の塊のくせにそんな悲しそうな目で見ないでよ」
「あ、じゃあさじゃあさ、芹川さんは僕だけが満足してて本当にそれでいいの?」
「うん、タコでもイカでも見て、好きなだけ一人発情してればいいじゃん」
「……」
「あれ? どこ行くの?」
「……スーパー寄って帰る」




