2.かに
「冨野くん、なに黄昏れてんの? またエッチな妄想してんの?」
「いや、人類のこの先の進化について考察してるんだ」
「ふーん、今日はマジメっぽいこと考えてるんだ。……でも今君のスマホに映ってるのはカニのお店のサイトだよね」
「いろいろ考えてたら食欲わいてきたんだ。芹川さんカニ化って知ってる?」
「うん聞いたことあるよ、同じ環境にいるとだいたい似たような形に進化していくってやつだよね。でも、カニづくしコースのメニューにらみながらその話する人あんまりいないだろうね」
「そう、だから全然違う種類のはずのズワイガニとタラバガニは収斂進化の結果、どっちもおいしいし、調理法も似通ってきたわけだよ」
「それはまた、ホントかウソか判断が悩ましい結論にたどり着いたね」
「そしてこうも言えるんじゃないかな? 繁殖に交尾が必要な生物はその方法が合理的となるような同種の進化を遂げたんだよ」
「は~……、聞かなきゃよかった」
「真剣な話だよ、性別のある生物のジョイント形状はみんなオス・メスなんだよ?」
「せっかく工学に持っていった比喩を逆輸入しちゃったね」
「僕達のような好奇心旺盛な生き物は、これからも特に顕著な進化を遂げるんだよ」
「おっと、放課後の教室だよ? 興奮してあんまり大声出さないように」
「つまり、進化の結果すべてはカニになるんだ」
「聞いてないね……。どこがどう『つまり』なのかな?」
「そしてカニになった果てにスーパーノヴァしてパルサーを発するんだ」
「あはは、なにそれ。それじゃカニ光線じゃん」
「え? なんて? それどういう意味?」
「いやだから『蟹工船』に引っ掛けて……」
「え?」
「別に……なんでもないです」
「ああそういうことか。かにパルサーだから『蟹工船』ならぬカニ光線ね……。いやあ、知的な彼女のギャグセンスに脱帽だよ」
「えっと……」
「でもそうやってバカなこと言ってもちゃんと乗ってくれきてくれるの優しいよね」
「なんか私が恥ずかしいだけじゃん……。言ってる内容はどう考えても君の方が恥ずかしいのに」
「じゃあ僕らもかに交戦しようよ」
「は? まったく……、君ってすぐ調子乗るよね……」




