23.クルーザー
「よくしれっと金持ちアピールしてくる人いるじゃん」
「うん、結構多いよね」
「金持ちアピールしたけりゃ金くれって思うよね」
「いや私はそれは思わないかなあ」
「芹川さんち裕福そうだもんね」
「そういう問題? アピールされるのは嫌だけど、そこから『お金くれ』には普通の人はならないんだよ」
「でも、向こうは気分いいのにこっちは気分悪いから代金は払ってもらわないと。それに口で言ってるだけじゃホントに金持ちかわからないし」
「君は一理あると一瞬だけ思わせる屁理屈が得意だね。じゃあ君はお金もらったら媚びへつらうの?」
「いやそれは別問題でしょ、プライドが許さんよ」
「ぷっなにそれ、結局なんなの」
「『自慢すんな』だよ」
「ひねくれてる割には結論はシンプルだね」
「僕だって金持ちになって自慢したいよ」
「あ~それが本音かぁ。財力自慢したがる人って、人生でのお金の優先度高そうだよね」
「いや人生は金だよ、9割方。その発想が既に金持ちっぽいのよ」
「え、そうかな?」
「芹川さんってもしかして、自慢してるつもりないのに自慢してるって思われたことない?」
「あ、それ結構あるかも」
「もうそれだけで上級国民の特権なのよ」
「うーん……そうなのかな」
「いい大人で金持ち自慢してる人って大体成金でしょ」
「あんまり意識したことないからわかんないけど」
「今まで無視されてきたのに金持ったら急にチヤホヤされるじゃん、主に金を回収したい人々に。そしたらなんか勘違いして気分良くなって自慢しちゃう気持ちはよくわかるよ。うちもそんなお金ないから」
「そこまでわかってるなら気にせず、『そんなことしか自慢できないなんて可哀想に』って思ってあげればよくない?」
「いやそれとこれとは別問題だろ」
「えぇ…?」
「だって勘違い野郎ってムカつくじゃん。例えば、芹川さんが受けた難しい模試の偏差値見て、簡単な模試受けた僕が、『偏差値勝った~』ってはしゃいでたらどう思う?」
「それは……、ちょっとキツいね……」
「そういうことだよ」
「でもそれって自分の立場次第じゃないの?もし冨野くんが超大金持ちになったらムカつかないんじゃない?」
「それも別問題、金持ちになってもたぶん、いやきっとムカつくね、僕度量狭いし」
「もうわけわかんないよ」
「例えば、カウンターだけど特別高いわけでもない寿司屋でBMのキーわざわざカウンターに置いてちらつかせてる奴がいるとするじゃん」
「それもキツいね」
「もし僕が超金持ちなら、用事もないのにそいつの席の辺行ってポケットからキー落として『あ、こないだ8億円で買ったクルーザーのキー落としちゃったぁ』とかいうと思うよ、ちょっと大きめの声で」
「エグいね、本当だとしても逆に貧乏だと思われそう」
「でもBMのキー見せたやつもう二度とやらなくなると思わない?」
「確かにドン引きして『俺こんな奴と同じことやってたのか……』とか思いそう。いや、もはや怖いだろうな。ただ、君の代償の傷が致命的だよ」
「ムカつく奴を誅殺できるならそれでいい」
「いやそれ誅殺じゃない。ただの死なばもろともだよ」
「本望だよ」
「普通に言ってあげたら?『わぁ、いい車乗ってらっしゃるんですね』」
「……こわ、京都かよ」
「え?なんで?」
「その笑顔、僕には絶対無理。……一生ついて行きます」
「いったい何なの?」




