22.バチカン
「冨野くんは愛があればどんな困難も乗り越えられると思う?」
「またなんか言い出したよ。そんなの無理に決まってんじゃん」
「そうなの? 即答じゃん」
「だって無理じゃん」
「そうかなあ……」
「だってさ、結婚式でも病気と貧乏くらいまでしか神に誓わんでしょ」
「あれは愛が十分に足りてない人でも結婚できるように敷居下げてそうしてるんだよ」
「え? そ、そうなの?」
「ううん、ごめん、適当に言った」
「なんだよそれ」
「うへへ」
「てか、そこまで言うってことは芹川さんは何があっても乗り越えられると思ってるの?」
「まあね、愛の大きさ次第ではね」
「……あ、そうだ、僕来週引っ越すんだったわ」
「ふぅん、どこに?」
「……バチカンかな?」
「かな?ってなんだよ。でもそっか、じゃあお別れだね」
「追いかけてきてくれないの? 僕的には別に遠距離でもやぶさかではないけど」
「ちょっとね、時差ボケきついし、受験とかあるし難しいかなぁ」
「……」
「あ、怒ってる」
「怒ってないよ、僕らの愛ってだいたい性欲と利害関係だけでできてるし」
「急に変な嘘つくから意地悪したくなっちゃった、ごめんごめん」
「芹川さんが意地悪なのわりと日常的だけどね」
「そうかな? でもほんとはちょっと拗ねたでしょ」
「……うん」
「ういやつじゃ。自分が先に始めたくせに」
「……うるせえ」
「もし冨野くんの前に、めっちゃかわいくて性格良くて超金持ちで結婚したら間違いなく一生遊んで暮らせる子が現れて、結婚してほしいって言って来たらどうする?」
「芹川さんもそこそこかわいいと思うし、親がまあまあ金持ってそうだからどうとも思わないね、性格はともかく」
「うん、それ結論はいいけど言い方が0点。補習不可避だね」
「そりゃあ、さっきのこと根に持ってるからね」
「あはは、それ自分で言っちゃうんだ。かわいいなあ」
「じゃあ、芹川さんはかっこよくて高身長でスポーツ万能で賢い男子から告白されたらどうする? 『変な奴と陰気で小難しい話ばっかしてると健康に悪いよ』とか言われて」
「そういう自覚あるんだね。相変わらず自己評価低め人間だね」
「うるせえ、それよりどう答えるの?」
「『ごめんなさい』」
「……それだけ?」
「うん、変かな?」
「変ではないけど……、愛が大きいから?」
「そうだよ?」
「……ょ」
「え?」
「僕もだよ!」
「ふふふ、じゃあ行こか」
「え? どこに? その笑いかた、こわい」
「君の自己肯定感高めにだよ」




