20.部屋
「あーやっぱここ落ち着くな~」
「あの……、芹川美月さん」
「なに?」
「そんな『今忙しいんですけど私に何か用ですか?』みたいな顔されても」
「君が呼びかけたからでしょ」
「まあそうだけど、つい先日僕の部屋じゃ落ち着けないって言ってたような」
「言ったね」
「でも今落ち着くと」
「君の部屋じゃなくて君の上が落ち着くんだよ」
「さいですか」
「いやなの?」
「いや、どっちかというと嬉しいです」
「……重くない?」
「羽のように軽い」
「それは嘘だ」
「うん、でも柔いし20㎏のダンベル3個よりはいいよ」
「普通に60㎏ありそうに言わないで」
「あといいにおいする」
「冨野くんもなんか匂うよ」
「悪臭みたいに言わないでよ」
「そう聞こえた?」
「『なんか匂う』は完全に悪臭のそれなんよ」
「あはは」
「芹川さんのコミュニケーションって猫っぽいよね」
「なんで?」
「他の事できないように邪魔してくるから」
「そうかな、そんなつもりないけど」
「だって、僕がベッドに寝転んでたら器用にその上にぴったり重なるみたいに乗ってくるし」
「バランス感覚が猫っぽいってこと?」
「狙ってないところがガチっぽいな。大体こういう乗り方する? 接着面積の最大化とか追及してる?」
「でもそうかもね、斉木君とこの猫とも仲良くなれたし」
「今は斉木はいいよ」
「いつもいじってるくせに」
「うるせえ、てかいつまで乗ってるの?」
「ん-君のお母さんがかえってくるまでかな」
「月末だし9時過ぎだよ」
「だめ?」
「だめではない」
「じゃあこのまま昼寝しちゃおうよ」
「せっかく休みなのに外行かくていいの?」
「行ってもいいけど」
「じゃあ起きないと」
「やだ」
「あーもうめんどくせえ、ハグ攻撃」
「うひゃっ」
「からの……くすぐり攻撃」
「ぎゃー」




