13.永遠のタコ
「冨野くん小学校の通学路とか最近でもよく歩く?」
「うん、塾行くときよく通るけどなんで?」
「私こないだ久しぶりに小学校の通学路歩いたんだけど、だいぶ街並み変わったなって思って」
「あ、それわかる。必ずどこかで建て替えとか工事やってるし、どんどん変わってくよね。無常というのを感じるようになった」
「小さい頃は、全てが永遠の存在に思えたのに不思議な感じするよね」
「でも僕らの愛は永遠だよ」
「……」
「……はは」
「それは君の努力次第だね」
「がんばります」
「うむ、精進するがよい」
「そういや芹川さん、タコ公園ってわかる?」
「タコ公園? どこだっけ?」
「北高の裏手のちょっと広めの」
「ああ。松本公園ね、小さい頃よく遊んだよ。幼稚園の通り道だったし近かったから」
「松本公園っていうのか……知らなかった」
「逆になんでタコ公園なの」
「水道のところにいるじゃんタコ」
「ああ、そういえばいたねそんなの。それでタコ公園か。男子って安直だな」
「名前なんてコンセンサスがあればなんでもいいんだよ」
「でもあのタコ遊具でもないし、ただ水道の前にいるだけだよね。何のためにあるのかな?」
「おじさんから聞いたけど、あのタコ50年前からいるらしいよ」
「それはなかなか年期入ってるね」
「あいつもしかしてこの先100年くらいあそこにいるんじゃない?」
「あはは、そうかもね」
「いつか形あるものは消えてなくなるってよくいうじゃん」
「うん、通学路の風景はまさにそれだよね」
「でもあいつは僕らより長生きするかもしれない。この先永遠にあいつはあそこで僕らがいなくなった世界をずっとあの笑顔で眺めてるんだ。実は無常なのは僕らの方なのかもしれない。そう考えると人ってすごく儚くて小さな存在だなって思えてちょっと怖くなるんだ」
「そっか……。でもさ、その無常が美しんじゃないかな?」
「そうなの?」
「永遠の方が美しいと思ってたら音楽とかやってないし」
「どゆこと?」
「音は一瞬出たらそれでおしまいだからね。でも音楽家はその一瞬のために心血を注ぐんだよ」
「……なるほど」
「大切なのは、今どう生きるかなんじゃないかな。今この瞬間にしたこと、それこそ永遠の存在だよ。考え方は人それぞれ自由だけどそっちの方が素敵な感じしない?」
「そうかわかったよ。じゃあ、あのタコは汚物だね」
「うん、それは飛躍しすぎかな」
「ちょっと久しぶりにあの汚物見に行こうよ。いや、僕らの無常のこの瞬間の永遠の美しさをただ存在するだけのあいつに見せつけに行こう」
「はいはい、デートね。お付き合いしますとも」




