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わかると怖い異世界の話ーー異世界は計画的にーー(連載版)  作者: 一月三日 五郎


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アイテム:ポーション

海辺の小さな港町。

そこにある一軒の道具屋が、静かに倒産した。


アイテムボックス持ちの冒険者。

高性能なポーションを湯水のように錬成する錬金術師。


そんな存在が跋扈するようになったこの世界に、

個人経営の小さな道具屋の居場所はもうなかった。


大量に余った在庫の処分に困った店主は、

結局すべてを廃棄するしかなかった。

そして店をたたみ、なけなしの金をギャンブルにつぎ込み、

そのまま身を持ち崩していった。


そんな光景は、もはや珍しくもない世の中になっていた。


廃棄されたポーションは排水路を流れ、海へと流れ着いた。

小さな生き物たちにとって、それは傷を過剰に癒す劇薬だった。


最初に変異したのは、小魚だった。

裂けたヒレが即座に再生し、欠けた鱗が何度も重なり、

やがて身体は本来の数倍の厚みを持つ“鎧”のようになった。


再生のたびに細胞は暴走し、形は歪み、

目は増え、歯列は湾曲し、

本来の生態とは無関係の捕食衝動だけが肥大していった。


甲殻類はさらに深刻だった。

脱皮のたびに甲羅が強化され、

本来一生に数回しか行わないはずの脱皮を、

一日に何度も繰り返すようになった。


そのたびに巨大化し、脚は節ごとに増殖し、

海底を埋め尽くす“歩く岩盤”と化した。


海藻すら例外ではなかった。

切れた部分が即座に増殖し、海面を覆い尽くすほどの密度で繁茂した。

その下では酸素が奪われ、弱い生物から順に窒息していったが、

死にかけるたびにポーションの効果で再生し、

死ぬことすらできないまま漂い続けた。


回復効果の残る小魚を食べた大型魚類は、

さらに強力な回復能力を獲得した。

通常の魚類は姿を消し、

海は傷ついてもすぐに回復するモンスターの跋扈する魔境と化した。


その間も、ポーションの流入は止まらない。


加速していく無軌道な強化と進化。

海はもはや、生物の形をした回復効果の塊で満ちていた。

やがて、その許容量に限界が訪れた。


海から零れ落ちるように発生した魔物の津波は、

人の町を飲み込み、滅ぼした。

ダンジョン以外から発生した、

新たな魔物暴走スタンピードの形だった。


すべてが破壊された後、

チート持ちの異世界人だけが取り残された。

そんな彼らにも、狂った世界を救うことはできなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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