3 転移
「今のは何なの?」
誰かはわからないないが、その言葉が静まり帰った教室にやけに響いた。
頭に中に疑問が浮かぶ。
あの巨体な男は何者なのか。
黄泉はなぜ、あんなに殴られても、平気なのか。
「ねえねえ、今の何本当に何、マジでどういうこと?」
「私もわからないわよ、そもそもあの巨体な男はどっかからきたのよ?」
「知らないわよ、てゆうか黄泉ってあんな激しい性格だった。ちょっとウケるー」
「マジ、それな、何か期末テスト前はハキハキとしたいい子ちゃんだったのに、期末後は、陰鬱みたいになって、マジやばいよね」
あぁ、言い返したい。今すぐにあの女の子達を殴って、黄泉はそんな子じゃないよと言いたい。
けれど、いい返したら、私はまた嫌われる。私は嫌われたくない。もういじめられたくない。
あぁ、本当に私って最悪だ。一番の親友と言っときながら、友達への侮辱については何も言い返せない。
本当に惨めで、気が狂いそうだ。
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「いや、少しまずいなぁ、アルカディアは倒せたけど」
黄泉は一度言葉を切り、辺りを見渡す。
黄泉が通っている学校の校庭は約1ヘクタール前後であり、全ての地面が人工芝である。そこから奥にジャングルジムや雲梯があり、校庭の真ん中に特大なクレーターが限り何も変哲もない校庭である。
(・・・・そもそも、アルカディアは何故、この世界に来たんだ。あっちの世界はあの女神が管理してて、たぶん殺したけど。こっちの管理者はどうなっているんだ。そもそも私みたいな例外を除いて、違う異世界に行くことは、管理者が許してくれるはずがない。まさか、こっちの管理者がアルカディアに殺されたのか?)
黄泉は、その場で考える。だが、何も考えは出なかった。
「まぁ、こういうのは、後々考えるか。さすがに異世界転移はもうないと思うけど、尊主や聖女がこっちに来た場合、私も戦ったら負けるかもしれないし、きついかもしれないな。」
黄泉は、アルカディアの死体があった場所から、彼女がもといた教室に視線を移す。その目には、壊れたはずの眼鏡がかけてあった。
あぁ、憎い、友達への侮辱に何一つ言い返せない自分が憎い。
私、鈴木燈子は、今、教室にいる数名のクラスメイトが黄泉への侮辱について何も言い返せず、ひたすらに自分がお昼ご飯をたべていたところから動かせずにいる。
手が震え、汗が額からしたたり落ち、背筋が凍る。
・・・なぜなら、私は中学三年生の時に黄泉を侮辱をしているクラスメイトにいじめられたから。
いじめのきっかけはささいなことだったかもしれない。
私は当時、気が弱く、ひたすら教室の隅っこで本を読む、内気な生徒だった。
そこで、高校進学できるかの不安やストレスやその他、言っちゃ悪いけど、生理なども重なってそれを私にぶつけてきた。
机に落書きをされ、教科書は破られ、どんどんヒートアップし、暴力を振るわれることになった。
そのときに助けてくれたのが、佐野黄泉という女の子だ。
私は、彼女に助けられた。だから次に彼女を助けるのは私の番だ。おせっかいと思われるかもしれない。しつこいと思われるかもしれない。
けれど私自身がそれを許せない。
背筋が凍るのを無視し、私は、声を発しようとした。
「彼女への侮辱は、それまでにしてください。それ以上続けるのならば、私が許しません」
その声はどこか凛として美しさと力強さがあった。
声をたどってみると、教室のドアの近くにその女性は立っていた。
まず目を引くのは、長く豊かな金髪であり、腰のあたりまで伸びた髪は柔らかく波打っている。顔立ちも整っており、澄んだ青い瞳が特徴だ。
服装は青と白を基調とした装飾的な鎧風の衣装だ。
「はぁー、何よ、そもそもあんた誰よ、勝手に教室に入ってきて、彼女の侮辱はそれまでにしてくださいーとか、私が何を言ったかどうかなんて私の勝手よ!」
鈴木燈子は、目を大きく輝かせていた。自分とは違い、女神のように整った容姿、それに腰のあたりにまで流れているきれいな髪。
それに自分とは、違いはっきりと彼女への侮辱について反論している。
(・・・ああ、本当にきれいだな。私もこんな風にきれいな人、ブリュンヒルデみたいになりたいな。、、、ちょっとまって、私はなんでこの人の名前がブリュンヒルデということを知っていて、その名前が正解だと思っているの?)
「ええ、そうですね、あなたが彼女、いや 、おっとこの言葉はやはり言えまんか、やはりこの世界で使おうとしても音にできない、もしくは使おうとしてもこの世界から修正がかかり言えませんか。まあ、それは関係のないことです。」
ブリュンヒルデは一度言葉を切り、咳払いをし、腰のポケットから何かをとりだした。
「では、 という彼女の本来の名前は言えませんが、ここではあえて佐野黄泉という名前を使いましょう。あなたが佐野黄泉を侮辱しようとしても、それはあなたが思う意見です。私はそれに否定も肯定もしません。しかし、その言葉を聞き、私はますます、あなた達を に連れて行き、尊主様に判断させてもらおうと思います」
ブリュンヒルデはとりだした何かを地面に置き、祈るようなを体制で詠唱する。
その姿はどこか女神のようだ。
「月と太陽におります女神達よ、今一度私に力と秩序を、聖なる理にたどり着かん愚者に鉄槌を」
その詠唱はどこか神秘的で何かに祈ろうとしているように見える、そして何かを呪おうとしているように見える。
「はあ、そんな神とか女神とか何変なことを言っ・・・・・」
黄泉を侮辱した生徒の一人である新田いろは、途中で言葉を発しようとしたよころで・・・・・
凍りついた。
新田いろはの目の前、正確に言えば教室の中心から紫色に光輝く円環と幾何学模様があらわれた。その異常事態には新田いろはと燈子以外にいた教室の生徒三名も含め全員が金縛りにあったかのように輝く紋様ーー浴に言う魔法陣らしきものを注視する。
すると魔法陣は教室にいる生徒を急に包み込み光によって真っ白に塗りつぶされた。
「さて、私も行くとしましょう。後は尊主様に判断を任せます」
そうブリュンヒルデは呟くように言い、この世界から退去しようと自分の足元に魔法陣を起動し、光に包まれこの世界から退去した。
だがブリュンヒルデは知らない、たとえ違う世界に行ったとしても佐野黄泉いや による本質からは逃げられない。
光によって真っ白になった教室が再び色を取り戻すころ、そこには佐野黄泉がいた。
散乱された机と椅子、食べかけのまま開かれた弁当箱、飲みかけのペットボトルを見て、佐野黄泉いや は顔を上げ、空を睨んでいた。
そして、その睨む目は真っ赤に染まっていた。




