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4 異世界

 両手で顔を庇い、目を閉じていた橙子は、周りのざわめきと無数の気配を感じゆっくりと目を開いた。そして驚いた。


 まず目に飛び込んできたのは巨大な天井画だ。ガラスかそれもかなりの最高品質を使っており太陽の明かりに比例し輝いている。よくよくと見てみると中心に光を背負い苦しそうな女の人とそれを讃える人々が描かれていた。


 背景には火や煙など戦争らしき残酷な絵が描いてあった。


(・・・もしかして、ここって異世界なの。いや、全然ない。本ではよく見かけるけど、実際には流石に、、、」



 橙子は首を傾げながら思うが周囲を見渡す。



(・・・床の素材は大理石、それに白い光沢を放つ滑らかな建築物、そして天井には戦争らしきものや十字架が描いてある。もしかして大聖堂や宗教に関連があるものかな、、、)



 橙子とそれ以外のクラスメイトは大聖堂の広間の中心にいた。橙子はチラリと背後を振り返った。そこには、慌てているクラスメイトがいる。


(・・・まあ、無理もないよね。そもそも教室で過ごしていたら急に光に包まれて気づいたら異世界にいるという。物語としてはいいけど。現実にあったら拉致なんだよなー、、、)



「おや、あまり召喚されていませんね。まあいいでしょう」


 その言葉に橙子達は一斉に声がした方向に顔を向く。



「私の名前はエレシュキガル、女神です」


 エレシュキガルはにこやかに微笑みながら黄金色の装飾がされた玉座から立ち上がり、そう言葉を発した。








「女神ですか、、、、❓」

「はい、女神です」


 橙子は女神と名乗った女を見てみる。白銀の髪は腰にまで伸ばしそれに合う色のように白のドレスをきている。顔を見てみると目のしたにほくろがあり、それを差しひいても整った容姿をしている。


(・・・いや、普通女神って髪が金色で我儘で傲慢なのが相場だよね。あれっなんで綺麗でこんなに優しいんだ)


 橙子はそんな失礼なことを心で考えながら、女神を見てみる。ニコニコとしているが、少し笑顔がぎこちない。言うならば笑顔になれていない。


「申し訳ありがませんが、貴方達に頼みたいことがあります。どうか魔王を倒してほしい、、、、」


 エレシュキガルは今までにこやかに微笑みながら言っていたが、不自然に話すのをやめた。顔からは微笑みをなくし、機械的な表情になり、目は無機質になった。




 パリッと何かが割れる音がした。ガラスが割れる音ではなく、皿が割れる音でもない。






.....どこかで空気が割れる音がした。



1回目はどこか不自然に響いた。



2回目は橙子の真下で響いた。



3回目はようやく気づいた衛兵達が音の出所を探して始めた。



4回目は大聖堂の至る所にひびが入った。



5回目にはもう   が大聖堂の真ん中にいた。



 真紅の瞳をゆっくりと上にあげ   はエレシュキガルを見た。



「久しぶりですね、佐野黄泉、いやこう言ったほうがいいですね。ニヒル」


 佐野黄泉、いやニヒルはエレシュキガルを睨んだ。

















・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 エレシュキガルの発した内容は大聖堂を静寂に包ませた。大聖堂にいた彼女の付き人である近衛兵、彼女を護衛する聖騎士、彼女を祀る神官もまた動けずにいた。



「ねえ、黄泉どう言うこと。まさか異世界行ったことがあるの❓」


 橙子が発した言葉は大聖堂の静まり返った空気を少しだけ取り払ってくれた。


・・・だがっ


「、、、、、、、、、、、」


 ニヒルは答えない。いや、正確には無視をしている。視線をエレシュキガルに向けており橙子の方には一切振り向かない。


「ねえ、黄泉。お願い、何とか言ってよ、何とか言ってよ‼️」


 橙子は怒った風にけれど悲しそうに言う。なぜなら黄泉の瞳が悲しそうにそしてさ寂しいそうに物語っていたからだ。


「何にしても、ニヒルお久しぶりですね。いえ貴方の世界では、一週間も経っていないんです、、、、、」


 エレシュキガルをまたもや話すのを途中でやめた。なぜなら




・・・ニヒルの手刀がエレシュキガルの鳩尾に迫っていたからだ。


 音すらも置き去りにする手刀は空気を裂き、並の生物ではかすった瞬間に死ぬだろう。だが、



「なるほど、どうやらそっちに帰ったとしても、その力は健在ですか」


 エレシュキガルは黄泉が放った手刀を自分の権能を使って防いでいた。ジリジリと削る音が響く中、手刀がバリアを削り鳩尾に噛み付く。


 だが、エレシュキガルは空を飛び寸前の所で避ける。


「危ないですね、ですが私を殺すには少々威力が足りません」

「そして貴方は弱くなりましたね」


 エレシュキガルはそう言った。だがそれは本当のことだとニヒル自身がそう思っている。

 そもそもの話ニヒルという言葉は虚無を指している。そして虚無の意味は何物もなくむなしいこと、あるいはすべての存在に価値や意味を意味を見いだせないことをさす。






・・・つまりニヒルはまだ生まれてすらいないが、確かにそこにいて相手のその存在意義を虚無という本質に引きずり込ませ消滅させることができる。



「女神の権能第一天の光」


 エレシュキガルはニヒルに向かい自身の権能を使う。山すらも抉りとる威力を一つに圧縮しニヒルに放つ。だが、


「弱いな、エレシュキガル。前戦っていた時と比べてはるかに技の精度が落ちている。さっきの手刀もお前なら簡単に避けられたはずだ」

「そもそも女神とはこの世界を管理し導き支配し全てが手の中にある機構の事をさす。なぜ、全ての権限を使い私を倒そうとしない」


 ニヒルは自分に向けられた光をたたき落とし言う。その片目からは真紅の闘気がゆらゆらと漏れ出ていて空に浮かんでいるエレシュキガルに向けられていた。


「簡単な事です。私の権限を使い、この世界の全ての生物や空気、技術そして私自身の力を使ったとしても、貴方には勝てません。尊主としての私ならばいけなくはありませんが、あいにくその力は、観察者と聖女がいないと使えません。しかし、聖女はこの世界に来る途中で貴方に殺され、観察者はこの世界を回っている最中に貴方に瞬殺されました」


 エレシュキガルは一度言葉を切り、ニヒルのほうを向く。その瞳は機械的であるが、少し悲しそうだ。



「そして女神である私自身は貴方と今戦いをし、気づきました。貴方は、虚無としての神に覚醒した瞬間に五感を全て失っています。さっきの天の光の攻撃も弾いていましたが皮膚は剥がれていて治そうとしない」






「貴方は、どうして自分の人間性を失ってまで、他人のために命をかけられたんですか❓」



 その言葉はどこか空虚でニヒルに問いかけたかもしれないが自身にも問いかけるような物だった。







ネタがこれ以上思いつきません。


これにて完結とさせていただきます。

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