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REVENANT: SHONAN ZERO  作者: 狐目の仮面
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第四章:硝煙の糧 [第四十五話] 電脳の導火線


 管理室の重い扉が、錆びついた悲鳴を上げて開いた。

 康二は真っ先に部屋の奥へと駆け込み、壁一面に広がる配電盤の前に膝をつく。

 懐中電灯を口に咥え、震える指先で金属のカバーを力任せに引き剥がした。


「……ひどい、油と埃で固着してる」


 康二は漏れる声を飲み込み、作業服の袖で配電盤の脂を拭い取る。

 内部に走る無数の配線は、断裂し、黒く焦げ付いていた。

 彼は腰のポーチから絶縁ペンチを取り出し、複雑に絡み合う線を一本ずつ、力強く引き抜いていく。


「康二、急げッ!」


 背後で、正人の怒鳴り声が響いた。

 管理室へと続く細い通路に、闇の中から無数の「影」が雪崩れ込んでくる。

 正人は扉の枠に背中を預け、シールドのグリップを両手で引き寄せた。


「させるかよ、この野郎……ッ!」


 正人は奥歯を噛み締め、突進してくるレヴァナントの胸元へ盾を叩きつけた。

 衝撃が腕を伝わり、肩の骨が軋む音を立てる。

 彼は一歩も引かず、ブーツの底でコンクリートの床を強く踏み締めた。


 恭二は正人の肩越しに銃口を突き出し、セレクターを三点射バーストに切り替える。

 マズルフラッシュが断続的に闇を焼き、レヴァナントの額に穴を穿った。

 彼は空になったマガジンを叩き落とし、新しい弾倉を叩き込む。

 恭二の額からは大粒の汗が流れ落ち、目元を濡らしていたが、

 彼は瞬き一つせずに次なる標的を凝視した。


「……配線をバイパスさせます。……火花が出るから、離れて!」


 康二は短く叫び、赤と青の被膜を剥いた銅線を、素手で強引に接触させた。

 バチッ、と激しい火花が散り、康二の肩が大きく跳ねる。

 彼は熱さに顔を歪めながらも、繋いだ線を離さず、ガムテープで配電盤の基盤に固定した。


 稲美は康二のすぐ横に立ち、小銃を構えたまま周囲を警戒する。

 彼女は時折、作業に没頭する康二の背中を、確認するように掌で軽く叩いた。

 康二はその感触に応えるように、さらに深く配電盤の中へと指を潜り込ませる。


「……沙耶、上だッ!」


 恭二が叫ぶのと同時に。

 天井の通気口から、一体の個体が音もなく落下してきた。

 沙耶は地面に膝をつき、そのまま滑り込むような動作でナイフを突き上げる。

 刃は正確にレヴァナントの顎下を貫き、頭蓋の奥まで達した。


 沙耶は獲物を引き抜くと、立ち上がることなく次の動作へ移行する。

 彼女の目は冷徹に敵の急所を追い続け、その指先は一毫の迷いもなく獲物を屠り続ける。

 だが、その視線の端は、常に配電盤と格闘する康二の進捗を捉えていた。


「……あと、一つ。……これを、叩けばッ!」


 康二は立ち上がり、巨大な非常用ブレーカーのレバーを両手で掴み取った。

 彼は全身の体重を乗せ、下方向へと一気に引き下ろす。


 ガコンッ、という重厚な金属音が、部屋中に響き渡った。


 一瞬の静寂の後。

 天井の非常灯が、不気味な赤い光を放ちながら明滅を始めた。

 低いうなりを上げて、地下施設の「血管」に電気が流れ出す。

 重いシャッターが巻き上がる駆動音が、遠くの通路から地鳴りのように届いた。


「通ったぞ……! 康二、よくやった!」


 恭二は短く称賛を投げかけ、次のマガジンを手に取った。

 光が戻ったことで、闇に隠れていたレヴァナントの「数」が露わになる。

 赤い光に照らされた通路は、地獄の入り口のような様相を呈していた。

 

「……食糧倉庫への道が開きました。……でも、三十分だけです」


 康二は脂まみれの顔で、恭二を見上げた。

 その瞳には、恐怖を塗りつぶすような強い意志が宿っている。


「……三十分あれば、十分だ。……行くぞ、野郎ども!」


 恭二は再び先頭に立ち、赤い光の中へと足を踏み出した。

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