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REVENANT: SHONAN ZERO  作者: 狐目の仮面
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第四章:硝煙の糧 [第四十二話]作戦会議、チョークの地図


 午前四時。

 藤沢市役所の地下ロビーは、微かな機械油の匂いと、研がれた刃の殺気に満ちていた。

 床に描かれた「湘南グランド・アーク」の巨大な平面図。

 それを囲むのは、恭二たち四人と、山口一曹率いる自衛隊の精鋭たちだ。


「いいか、ガキども。これが最後のおさらいだ」

 山口一曹が、軍靴でチョークの図面を叩く。

 その傍らでは、斉藤三曹がスコープの度数を調整し、

 武田陸士長が機関銃の弾帯を丹念に点検していた。


「作戦の肝は、我々本隊による『陽動』だ。俺と武田、上村が高機動車で正面から突っ込み、

 ド派手な音と光をブチ撒ける。

 広場に溜まっているレヴァナント共を地上に釣り上げている間に、お前たちは潜れ」


「……康二、ルートの再確認だ」

 恭二の言葉に、康二が震える手で分厚い施設の設計図を広げた。


 「……はい。僕たちの目標は地下二階の『中央管理・配電室』です。

 今のグランド・アークは電力が完全に沈黙しています。

 僕が直接、配電盤の回路をバイパスさせ、手動で大型ブレーカーを叩き落とします。

 そうすれば、食品倉庫へ続く巨大シャッターと貨物エレベーターが少しだけ動かせるようになります」


「その間、配電室を死守するのが俺の役目だな」

 正人が盾の重みを確かめるように肩を回した。

 そんな彼に、巨漢の武田がニカッと笑いかける。

「期待してるぜ、盾持ちの坊主。お前が踏ん張れば、その分だけ俺たちが撃ちまくれるからな」


 一方、輪の外で無言のまま互いの獲物を見つめ合っていたのは、沙耶と衛生兵の稲美だった。

「……沙耶と言ったな。あんたの動き、人間離れしてるって聞いたよ」

 稲美が医療バッグを肩にかけ直し、腰のナイフに手を置く。

「……私は突入班に同行する。あんたがどれだけ強くても、血は流れる。

 ……死なせはしないよ。奈々ちゃんに、あんたたちを無傷で返すって約束したからね」


 沙耶は一瞬だけ稲美を見つめ、「……了解した」と短く答えた。

 その瞳には、かつての孤独な刃の冷たさではなく、仲間を背負う重圧を分かち合う、

 かすかな信頼が宿っていた。


「……上村さん、外の状況は」

 恭二が、最若手の上村に声をかける。

 上村は無線機と観測機を抱え、緊張した面持ちで頷いた。

「……霧が出てきました。レヴァナントの足音も、心なしか騒がしい。

 ……作戦開始には、最高の条件です」


 恭二は全員を見渡した。

 山口、斉藤、武田、稲美、上村。

 プロの軍人たち。

 そして正人、康二、沙耶。

 共に地獄を抜けてきた家族。


「……市役所じゃ、栞たちが腹を空かせて待ってる。

 ……暦さんや小林先生、奈々さん、桜……あいつら全員の『明日』が、俺たちの背中にかかってる」


 恭二がチョークの図面を軍靴で消した。

「山口さん、お願いします」


 山口一曹は、煙草を揉み消し、鋭い眼光を放った。

「……よろしい。諸君、これは単なる物資調達ではない。

 ……我々の意地と、餓えた仲間たちの未来を懸けた『収穫祭』だ。……地獄へ行くぞ、野郎ども!」


「「「了解ッ!!」」」

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