第二十八話:ヌシの使いと池のヌシ!
少年の様相はいかにも時代錯誤な感じ。
ゴワゴワした質感の和装で、汚れこそついていないが、なんだか哀れな感じがあった。
「明音稲荷の神使アカネ様ですね?」
「あぁえぇっと。そうです。」
さっきまで意味不明にゴネていたとは思えないキリッとした雰囲気に変化する。
ニコと私が契約した時のあの感じだ。
まぁ流石に一瞬ラグあったけども。
「お久しぶりです。」
「みゅん!?あ、はい。」
みゅんってなんか聞いたことありそうでない音だな。
なんの音だよ?
きっと久しぶりって声かけられたけど覚えてない時の音なんだろうなぁ。
「アカネ様の契約者の音羽サトミ様。それに収束点の角谷カナコ様、契約者のニコ様。それに管原シノブ様、ハクア様にコクウ様。十二支会のツムギ様。
状況はヨドミノヌシ様も把握しておられます。さぁ、どうぞこちらへ…。」
一人一人の目を見ながら挨拶した少年は、最後にニコっと笑って、一人で歩き出した。
改めて言われると相変わらずバカみたいな大所帯だな…。
少年漫画とかの最終巻の表紙でも、ここまで人多くないやつあるぞ多分。
物語の初めの方って大抵、仲間はせいぜい三、四人じゃないのか?
もしかして私の人生、そろそろ最終回だったりします?
というか、そんな都合のいいことあるんですか?
この少年は信用していいんですか?
登場の仕方、あのマコトとかいう子とほとんど変わんなかったですけど?
これからどうするのかと周りを見回すと、みんなすでに歩き出していた。
遅れを取らないように、私もとりあえずみんなについて歩き出す。
歩きつつツムギちゃんとシノブが話している。
「ヌシさんも自分の土地に異物が入り込んだので気づいたということなのでしょうか?」
「あぁ…まぁ言ってみればわかるよ。神様の思うことは、俺たちには測れない部分もあるしな。」
アパートを出て、どこに行くのかと思えば、アパートの裏手だった。
「この一帯は全て、元々明音池と呼ばれる池でした。今立っている場所は元々、ヨドミノヌシ様の社が立っていた場所です。」
驚きの新事実なんだけど?
というか一年生活してて知らなかったんだけど?
と思ったけれども、サトミさんとアカネちゃんも驚いてるし、案外そういうもの?
「なんでいったんこの場所きた時忘れとったんかなぁ?」
「サトミ、笑顔が怖いよん?」
「制裁!」
「んぎゃっふ!」
まぁ戦中の空襲でなくなったのなら、アカネちゃんは知っていた方が自然だ。
それを忘れていたので怒られているのだろう。
確かに、それさえ覚えていたなら、サトミさんはあのタイミングで一度神社に戻る必要はなかったわけで…。
まぁその場合人口が多すぎて話がより面倒になっていたと思うのでこちらとしてはありがたい面もあるような気がするのだが。
「ヌシ様を呼び出しますので、全員に認識阻害をかけてもらえますか?」
少年がいうと、魔法少女たち一同は素直にどこからともなく杖を取り出し、それを振るう。
ニコも杖を取り出しはしたが、振るのを戸惑っているようだった。
「どうしたの?」
「いやぁ…実は認識阻害って苦手で…。」
「やっぱり苦手とかあるの?」
そういえばシミ抜きの魔法は得意とか言っていたが。
時間を止められて認識阻害はできない、その差はなんなのだろうか?
「そうなのですか?じゃあ私が代わりにやるのですよ。」
ツムギちゃんがなんの気ないようにそういうと、みんながやっていたように杖を振る。
私は魔法をかけられるという現象に対する不安と期待を持ってそれを受けようとしたが、思った以上に自分に向けて結構な長さの棒を放り回されるという状況に威圧感があったため、少し身構えてしまった。
…。
ん?
しかしいくら待っても、特に何も起こらない。
痛くも痒くもないし、時間停止や契約の際のような何かしらの変化もない。
ツムギちゃんはすでに杖をおろし、身構えた状態でフリーズした私を不思議そうに見ていた。
「何も変わらない?」
「認識阻害は対象物自体に変化をもたらすのではなく、それを認識しようとした相手に影響がある術なのですよ。」
「でも私たちはしゃべれてるよね?」
「認識阻害を行なっている対象の意思で認識させることもできるのですよ。」
「ご都合主義かってくらい便利だね?」
「ごつ…?まぁこう言った術は常に必要とされてきたがために、研究も他の術より進んでいるのですよ…。」
…。
と、いう話をツムギちゃんとしていたのはいいのだが、ふと顔を上げると、みんなが困った顔で待っていた。
話を進めてもいいかな?
という顔である。
まぁ確かに私にとっては初耳学でも、彼らにとっては当然のことだもんなぁ。
うわぁ心臓凍ったわ。
言うなれば、大声で話していた時に突然教室全体が静かになった時みたいなね?
おぉこわ。これが伝説の…。
話す相手がクラスにいた試しがないので知らなかったぜ?
「あ、ごめんなさい…。」
どうすればいいかわからないのでとりあえず謝って、話を次に進めてくださいと促すことにする。
「それでは改めて…。ヌシ様、お呼びしました…。」
少年がそういうと、どこからともなく声が響き渡った。
〜次回予告〜
カナコ:「なんだかこの大所帯にも慣れてきちゃったなぁ。」
ヨドミノヌシ:「賑やかなのはいいことではないか?」
カナコ:「!?」
ヨドミノヌシ:「そう驚かずとも良いが…。」
カナコ:「…コンニチハ?」
ヨドミノヌシ:「そうかたまらずとも良いが?」
カナコ:「ソウイワレマシテモ?」
ヨドミノヌシ:「まぁ、敬意のあることは良いことじゃな。近頃は、めっきり畏敬の念のないものが増えた…。」
カナコ:「そうなんですね…。えぇ…。次回予告に入ってもよろしいですか?」
ヨドミノヌシ:「かまわぬ。好きにせい。」
カナコ:「ありがとうございます…というわけで次回は『第二十九話:緊張感のある緊張感のない会話の先に。(前編)』をお送りします。」
ヨドミノヌシ:「楽しみに待っていると良いぞ!」
幕




