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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第4章 昇級試験と地下の陰謀
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78話 マリアの試験

マリアの「冒険者になる宣言」からものの十数分。

俺たちはギルドの演習場にいた。


ギルド本部に併設されているだけあって綺麗だ。それに広い。

これまでに見た演習場はやや狭めの体育館といった印象だったが、ここはプロが大会で使うような運動場に近い。

壁もむき出しの木材ではなく、なんらかのコーティングがしてある。

なかなか人も多い。さらに言うなら、訓練している冒険者それぞれのレベルも高い。


「こちらです。ではライラさん、後はお願いします」

「はいはーい。どうも、銀級冒険者のライラよ、よろしく。マリアちゃんだっけ?試験頑張ってね~」


怖い顔の受付のお姉さんに案内された俺たちを、なんとなくのほほんとした女性、ライラさんが出迎える。垂れた目じりがそう感じさせるのだろう。ローブを着込んでいるらしく体のラインが見えないのも、その雰囲気を強調している。

年齢は20代後半といったところか。


「ええ、よろしく。で、あたしは何をすればいいの?」

「えーっと、ちょっとまってね。ふむふむ……光魔術が使えるのね。どこまで?初級?それとも中級~?」


ライラさんが手元の紙を見ながら聞く。マリアが受付でさっき書いたものだ。

俺が試験を受けたときと内容はほぼ同じだろう。


「残念ながら初級までね。独学なのよ」

「いやいや、独学で使えるようになるだけでも相当すごいわ。じゃ、早速見せてみて。的が必要なら用意するから言ってね!」


ライラさんに促されてマリアが手帳を開く。


「じゃあまずはこれ。『ライト』!」


手帳から浮かび上がった魔法陣が光ると、空中に光の球ができる。

ふよふよと浮かんだ球体は、光源としては十分だ。


「うんうん、基本は大切ね。他にはある?」

「これも。『フラッシュ』!」

「ぎゃー!」


まぶしっ!!


「あ、ごめん。先に言っとけばよかったわ」

「全くだ。でも、不意打ちで使うなら有効だな」

「目があ!目があ!」


一瞬強い光を放つ魔術らしい。

網膜が焼けるかと思った。ハルカは焼けたらしい。


「発動までが早いのがいいわね。身を守る手段として使えるわ。これで全部?」

「もう一つだけ。『ミラージュ』!」

「うおっ!?なんだ、視界がぼやける!」


ぼんやりとしか周囲が見えない。

度が強い眼鏡をかけたときに近い。視界がぐわんぐわんとして気持ち悪い。


「わあ、初級じゃかなりむずかしい魔術じゃない。そこまで使えるなら、他の初級も練習すればすぐに使えそうね。中級も教える人さえいれば遠くなさそう」

「俺で実験するのはやめてほしい」


ぼやけた視界は十秒ほどでもとに戻った。

戦闘中に十秒も視界を不安定にさせられるなら実用に足るな。




「うーん、新人としては十分ね。光魔術以外には何もない?運動は苦手?」

「運動は無理ね。一応、奥の手は他にあるけど」

「マリア?」

「何よ。別にいいでしょこれくらい」

「ふふ、隠さなくてもわかるわ。他の属性も使えるんでしょ?」

「え……!?」


なんでそれを……!?

そこには先ほどまでの穏やかさはなく、歴戦の冒険者の風格を漂わせた女性がいた。


「そんなに驚くことじゃないわ。マリアちゃん、魔術の適性を隠したいなら、手帳を新しくしなさい。手帳の真ん中を開いて初級魔術を使ったら、その前のページには他の属性の魔術が書かれていることが推測できる。見たところ、二つの属性を初級、中級までか……それとも、一つの属性を極めてるわね?」

「…………!!」


バレている。

マリアは聖女。聖魔術の専門家だ。どこまで使えるのかを聞いたことはないが、上級まで使えてもなんらおかしくない。


「安心して、誰にも言わないから。ただ、それなりの使い手ならそういうところも見てくるってことは覚えておいてねー」

「…………はい」


マリアが少しうなだれて返事をする。

ただ、今回はむしろ運がよかっただろう。よからぬ相手に気づかれる前に指摘をうけてよかった。


「ありがとうございます、ライラさん。勉強になりました」


ハルカが沈黙を破り、礼の言葉をかける。

それにライラさんはにっこりと笑って答えた。


「いいのよ。でもハルカちゃんは手帳とか使わないでしょう?有名よ、あなたの魔術」

「そこまで万能じゃないですよ、詳しくは秘密ですけど」

「気になるわ~」


手を頬に当てるライラさん。


「それで、これで試験は終わりなのか?」

「そうねー、魔術主体の人に実戦形式っていうのも何か変だし、危険だし。運動もできないって言ってるしー」

「じゃ、これであたしも冒険者ね!あ~、いい気分!あこがれが叶うって素敵なことだわ!」


試験の終わりを確信し、手を広げてくるくると回るマリア。あこがれの冒険者になれるのがうれしくて仕方ないようだ。

そんなマリアに、笑顔のままライラさんが言葉をかけた。



「うーん。できないとは言うけど、限界を知っておくことは大事よね?」

「……へ?」









「ぜぇ…………ひぃ…………おぇ…………」

「はーい!お疲れ様!できないと言いつつ、人並みの体力はあるみたいね!それにすごい根性!若いって素敵ねー」

「ふざけ………うぇ………」


思っていたより限界まで走らされた。

マリアは走っている間、足を止めないよう、ずっとライラさんの操る火の玉に追い掛け回されていた。

試験だと言うので止めないでいたが、さすがに少し気の毒だ。

既に文句を言うことすらできないほどくたびれている。


「と、いうことで。実技試験はおしまい。この後筆記試験があるから、休んだら受付に戻ってね」

「むり…………」


マリアが回復するのに30分かかった。









「マリアさん、試験の結果をお伝えいたします。『マリア殿、ここに貴殿を鉄級冒険者として当ギルドに迎え入れることを、冒険者本部副本部長ドドム・マイスの名の下に証明いたします。冒険者としての貴殿の活躍を心より期待しております』。ということで、こちらがギルドカードになります。紛失の恐れがあるならこちらでお預かりしますが?」

「大丈夫!頂戴!」


銀色の金属に小さな鉄のパネルをはめ込んだカード。俺が初めて受け取ったものと同じ、鉄級冒険者の証だ。


「試験官のライラさんからコメントです。『実技は魔術使いの冒険者として及第点。しかしそれ以上に筆記試験が満点という結果はなりたての冒険者としてはいい意味でやや異例。知識による裏付けがあるため今後の成長に大きく期待できる。実戦経験はないとのことなので、まずは鉄級冒険者として謙虚に先輩冒険者と経験を積んでほしく思う』とのことです。」

「褒められてます!すごいですね、ショウさん!」

「お、おう。そうだな」


俺の時は割と辛辣なコメントを貰っていたためなんだか悔しい。

マリアはふんすと鼻を鳴らして誇らしげだ。ふん、試験官に恵まれたな!


「で、あたしはこれで二人について行っていいのよね?」

「ええ。その点は先ほどドドム副本部長にも確認しました。こちらです」

「よーし!行くわよ!二人とも、ついてきなさい!」


なぜか既にリーダー風を吹かせているマリアに先導され、俺たちは冒険者ギルド本部の奥へと進んだのだった。




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