77話 ギルド本部へ
第4章始まります!
なおプロットは今回も定まってません。
「ハルカ、いいのか?久々の地元だってのに」
「はい、兄さん。先を急ぎますから。エマさんを大事にしてくださいね!」
中心都市クオンを出発しておよそ一週間。
国境を越え、無事ファリス王国の公都ワモスまで到着した。
ダズとエマさんとはここでお別れだ。マリアの顔を知っている人物がいる可能性のあるこの町に滞在するわけにはいかない。
「そうか、ハルカもしっかりショウに大事にしてもらえよ。ショウ、ハルカを頼んだぞ」
「任せとけ。二人とも体に気を付けてな」
「マリアさん、怪我のないようにしてくださいね。最近は世の中も色々不安定みたいですから」
「大丈夫よ、エマさん。また料理を教えてね!」
この数日でエマさんとマリアは随分打ち解けていた。
エマさんの趣味が料理らしく、それが料理の経験がないマリアには刺激になったようだ。
二人を下ろし、王都行きの乗合馬車が動き出した。
そして、さらに数日が経ち。
「ん――――………着きました!!」
身体を大きく伸ばしながらハルカが到着を喜ぶ。
ようやく、目的地である王都に到着した。
「なんて言うか……あたしが昔乗ってた馬車って質がよかったのね」
マリアは腰をさすっている。
乗り慣れてない一般人向けの馬車の乗り心地はあまりいいものではなかったらしい。
それにしても、王都か。
「王都って言うからには他の都市より活気があるものだと思ってたんだが、それほどでもないんだな」
一応、一般的な都市よりは人が多いように思える。だがもっと都市全体がきらびやかな雰囲気になっているものと思っていた。
「それはそうよ。王都はあくまで政治の中心地区だもの。活気が集まるのはどちらかと言えば商業都市の方。陸上なら交通の弁が交わるところ、海沿いなら外国への出航がしやすいところね」
言われてみればそうか。別にそれほど栄えてる必要がないんだな。
「この王都は冒険者ギルドの本部があるから、それに関連する施設も集まってるし、それによって経済も動く。内陸で山岳部に近くて、交通の弁もさほどよくないこの立地にしては栄えてる方よ。最近見たのが百年に一度のお祭りでにぎわってた街だから感覚がおかしくなるのもわかるけどね」
あれ、そうなのか。俺の人込みに関する感覚は少しずれているらしい。マリアは最近まで滞在していた中心都市クオンを原因としているが、それより前の、現代日本の人口密度の感覚が抜けていないせいかもしれない。
「とりあえず、ギルドに行きましょう。依頼もあるっていう話ですから、先に宿をとっても無駄になっちゃうかもしれませんし」
「そうだな。今後の行動方針に関わるし先に済ませよう」
始めて来る都市のため、もちろんギルド本部の位置などわからない。
通行人に道を聞きつつ、ギルド本部へと向かった。
「これが、ギルド本部……まるで要塞だ」
第一の目的地である冒険者ギルド本部。そこは以前見たヨンド王国の王城から、さらに飾り気をなくして壁を分厚くしたような建物にあった。
その周辺には堀のようなものまであり、守りも意識した形状に見える。
建物の正面、堀にかかった橋の両端には冒険者らしき人物が立ち、不審人物に目を光らせている。それに加え、外壁の上や、外壁の端にある見張り台のような箇所にも警備の人間がいるようだ。
「飾りの無さはまあわかるけど、この防衛の厚さは不思議ね。何か守るようなものがあるのかしら?」
「緊張してきました……」
「相変わらずの緊張しいだな」
ハルカは既に一国の王子やら代表やらと会ってきているのに慣れないらしい。
俺が先頭を歩き、堅牢な建物の内部に入った。
「あれ?ここは普通の支部と変わりませんね」
「本部とはいえ、王都のギルド支部としての機能も備えてるはずだから。一階は他の支部と同じような空間として開放しているみたいね」
大きな入り口を抜けてすぐの空間は、これまで入ったことのある冒険者ギルドの支部とほとんど変わらない様相となっていた。
壁に掲示板のようなものがあり、依頼を貼りだしたものであろう紙がびっしりと並んでおり、受付付近にはやや人が多く、依頼の受注や達成報告をする冒険者が並んでいる。いつも通りだ。
対応する受付のお姉さんに美人が多いのもいつも通り。
「とりあえず受付の人に言うしかないですよね。すいませーん!」
ハルカが受付に駆けていく。
「冒険者のハルカと、ショウです。副本部長のドドムさんに呼ばれてきました」
「ハルカさんとショウさんですね、聞き及んでおります。ギルドカードを確認しても?」
金髪に細い目が特徴的な受付のお姉さんに促され、ギルドカードを提示する。
「はい、確かに。奥へご案内します、こちらへどうぞ」
「じゃあ失礼します」
「しまーす!」
「お待ちください」
俺の後に続き奥へ入ろうとしたマリアが引き留められる。
フードを掴まれ、その場で足踏みするマリア。
「……なんで?」
「なんで?ではありません。冒険者ですらない方を、機密情報も保管されている本部へ入れるわけにはいきません」
確かに、よくよく考えればマリアは部外者だ。
「一応俺とハルカの連れなんですが、何とかならないですかね?」
「なりませんね。冒険者が依頼達成のために一般人の手を協力を得ることは、守秘義務など含め依頼を引き受けた冒険者の責任の下で認められます。が、それとこれとは別。どこまでいっても、部外者は部外者。ここから先には入れません。依頼に関し情報共有するというのならお二人がこちらに戻ってきてからでお願いします」
お姉さんの視線が鋭い。
でも、依頼に関しての情報共有はいいのか。
「そういうことなら仕方ないな。マリア、ここで待っててくれ」
「いや!」
ぷいっとそっぽを向くマリア。
子供か、と思ったがまだこの子15歳だった。
「お願い、お姉さん。今回だけでいいから、ね?」
「だめです」
手を胸の前で組み、目をウルウルさせてお願いするマリアをお姉さんがバッサリと切り捨てる。
「ケチ!」
「ケチで結構です」
「バカ!」
「バカで結構です」
「怖い顔!」
「殺しますよ」
急に怒るの怖い。
だが、やはり譲る気はないようだ。まあ仕事だしな。
「マリア、そのくらいにしておけって。どうしようもないぞ」
「どうしようもない?果たしてそうかしら?」
たしなめる俺に考えありげに振り返るマリア。
……まさか。
「決めたわ!!あたし、冒険者になる!!」
「ええ―――――!!」
「やっぱり……」
胸を張り、キラキラとした目で鼻息を荒くするマリア。
俺はカルロ王子の顔を思い浮かべ頭を抱えた。




