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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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第3章おまけ② 二つ名コンプレックス

本編とはほぼ関わりのないおまけです。

箸休めに。

不死薬事件が終わった後のある日のこと。

俺はグレタに誘われて昼食を一緒に食べ、宿に帰った。


「あ、ショウさん、おかえりなさい!楽しめました?」

「ああ。なあハルカ、俺たち結構有名人だと思うんだが、グレタみたいな二つ名って付いたりしてないのか?」


二つ名はどうやってつくのか。

さっきグレタに聞いたことだ。


実際のところ特に決まりとしてつけられるわけじゃなく、人々の間に周知される二つ名が自然に広まる形でつけられるらしい。要するに、有名になると気づいたらついている、ということだ。

グレタの二つ名である『鉄腕』は、死の大陸で鉄塊のような大槌を振り回して暴れる姿からつけられたらしい。確かに、人間の腕力であれはおかしいし、そういう印象になるのもうなずける。


「え!あ、えーっと、二つ名ですね。付きそうになってるみたいですよ?」

「マジでか!」


俺にもあるんじゃないかとは思ったが、いざ言われるとテンション上がるな。

重要なのはどんな二つ名が付いたかだが。




「その話ならあたしも聞いてるわ。さすがに大きな大会で活躍したから、みんなの注目も集まってるみたい。それで、どれから聞きたい?」

「どれから?どれからってどういうことだ?」


マリアが会話に混ざってきたが、意味深な問いに首をかしげるしかない。


「ハルカが『付きそうになってる』って言ったでしょ?候補がいくつかあるみたいなのよ。どれが最終的に浸透するかはみんな次第ね」


複数候補があるのか。

まあ見た人によって印象は変わるだろうし、仕方ないよな。それだけ俺のことを知っている人が多いということでもある。


「ふふ、有名人はつらいぜ」

「………………」

「………………」


二人が静かになる。

え、なんとなく二人の視線に哀れみを感じるのはなんでだ?


「…………人って、赤の他人には結構残酷だったりするわよね」

「!?」


なんでそんな目で見る。


「じゅ、順番に教えてくれ」

「この雰囲気を察してもなお知りたいのね。なら教えてあげるわ、ハルカが」

「ええ!?」


気まずそうに眼を逸らしていたハルカが驚きの声をあげてこちらを見る。


「……わかりました。えっと、一つ目です。『血塗れ』」

「おお?」


案外悪くないぞ。少なくともそんなに気まずそうにするほどではない。


「『血塗れ』な。由来は?」

「いつも血塗れで戦ってたから、だそうです」

「悲しいのは、いつも自分の血で血塗れだったってことよね。最終的には勝ってたけど」

「……そういうことか」


まあこれは無茶な戦いをしていた俺にも問題がある。結果的にそれが見た目の印象になってしまったならそれは仕方ないことだ。


「次は?」

「次……えーと、『流血』」

「同じだろそれ!意味も由来も!」


他に印象ないのか?俺には。


「次!」

「他には……『腕ポロリ』」

「あ、もうふざけだしたな?これ以降まともな二つ名ないだろ。わかるぞなんとなく」


確かに4回の試合のうち2試合は腕がちぎれていたから印象に残るのはしかたないが、それにしたってもうちょっとこう、かっこよさげにできなかったのか。


「町の人からきいたあんたの印象っていろいろあったけど、結構あったのが『強いけどしぶとすぎてなんかずるい』ってやつね。まあ反則級のしぶとさなのはあたしも思ってたし、そういう部分への否定的な意味も若干込められてるんじゃない?」

「真面目に考察するのか……」


ずるいとか言われても。そういう体質だし。


「あとは『ゴキブリ』って言ってる人もいたわ。やっぱりしぶといからかしらね」

「完全に悪口だろ!」

「曰く『ハク様を泣かせたのが許せない』、『その後結果的に仲良くなったのが許せない』とか。ちなみに言ってたのはハク様親衛隊を自称してる人たちね」


完全に妬みからくる悪口だ。

前者はともかく後者は知らんがな。



「他にないのか?」

「あとは、『ボロボロ防「わかった。もういい」


それが浸透するのは嫌だ。


「…………なるほど。二人が気まずそうにしてた意味がわかった。結構かっこいい場面とかもあったと思うんだけどな…………」

「わ、わたしはかっこよかったと思ってますよ!」

「かっこいいかどうかは別として、あんたって割と地味だからね。見た目も戦い方も」

「じ、地味!?」


ちょっと傷ついたぞ!


「だってねえ。他の選手を見てよ。大槌で地面をえぐる人やら、見たことも無い兵器をつかって空まで飛ぶ人やら、建物の柱をぶつかって壊す人やら、熱砂を自在に操る人やら、みんな何かしら派手な技を持ってるけど、あんたの技ってそういう感じじゃないでしょ?」

「うぐぅ」


言われてみると確かにそうかもしれない。

いや、負けるもんか。


「五炎刃とか結構派手だろ?属性球を使って炎の刃を飛ばす技だぞ!」

「店売りの品を打ち出してるだけじゃない?」

「うぐぅ!」


的確に反論するのはやめろ!


「ま、まだ他の二つ名の候補が出てくるかもしれませんよ!それにほら、『血塗れ』ならよくないですか?雰囲気ありますよ!少なくとも私は好きです!」


嫁の優しさが染み入る。


「そ、そうだよな。『血塗れ』ならかっこいいよな!」

「まあそうね。かっこいいかもね。……それが二つ名として浸透するかは定かじゃないけど」


あーあー聞こえない。

俺には何も聞こえないぞ。



「そうだ。俺のことは置いておいて、ハルカはどうなんだ?」

「え、私のはいいですよ別に!」


そう言われると気になる。

もしかして、俺以上にひどいのか?


「ハルカのは悪くないわよ。『不可視』っていうのが今一番浸透してるわね。魔術の前兆が見えないし、使ってるのも風魔術で視認性が低いからこう言われてるみたい」


か……かっこいい。ずるい。しかも既に浸透してるのか。

ハルカが言いづらそうにしてたのは、俺のものと比べてかっこいい二つ名だとわかっていたからか。なるほどなあ。しんど。


「訓練行ってくる!」

「あ、はい!行ってらっしゃい!」


身体を動かして忘れよう。

俺はギルドの訓練場へ向かった。











「どうも。訓練場借りるぞ」

「お、ショウさんだ!百年祭優勝者のショウさんが来たぞ!」

「おお、本当だ!訓練するなら見学させてくれ!」

「弟子を取る気はないですか、ショウさん!」


ギルドの訓練場にやってきた俺に、冒険者たちから声がかけられる。

おお。百年祭が終わってからここに来たのは初めてだが、こういう反応は悪い気はしない。

ずっと続くと疲れそうだが。


「百年祭の優勝者……『ボロ具』のショウか?」

「ああ。しっかりボロボロだ。しかも前まで着てた防具とはまた別のボロボロ防具だ」

「ええ?別の、ってことはわざわざ使い古された防具を買ったってことか?なんでわざわざ?普通に新品のやつを買えばいいじゃねえか」

「知らねえよ。実力者には変人が多いって聞くが、あの人はそういうタチなんだろ?」


少し離れたところから俺について話している冒険者の声が耳に入る。

わざわざボロボロの防具を買うとかそんなわけあるかと声を大にして言いたいが、じゃあなんでかと聞かれたら困るので黙っていることにする。


「『ボロ具』か……」

「あれが『ボロ具』の……」


あ。最悪だ。

最悪の二つ名が広まってる。しかも呼びやすく若干アレンジされてる。

…………ちくしょう………‥。


「二つ名なんて最低だ!!」


この日、ギルドの備品である打ち込み用マネキンを粉砕して怒られた俺は、二度と二つ名について考えまいと心に誓ったのだった……。




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