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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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64話 突然の決勝戦

ハクさんは去っていった。

ただ、少し気になることがある。


「なあコンゴウさん、あのギンって人は何者なんだ?」

「ギンか。あいつはハク代表の家系に仕えている一族の人間だ。基本的に目立つことはないからな。正直俺もよく知らん。ハク代表の言っていた通り、ハク代表の補佐として色々と雑務をこなしているようだ。本人の代理として方々に赴くこともある」


ふむ、コンゴウさんでもよく知らないとなると、これ以上の情報はそう簡単には手に入らなさそうだな。


と、ここでギルド職員が部屋のドアを開いた。


「コンゴウさん、ドドムさんがお見えです」

「わかった、通してくれ」


ドドム、次にハクさんと戦うことになっていた、大盾使いの男だ。

コンゴウさんに用事ということは、冒険者だったのか。


「じゃあ、俺たちはこれで」

「失礼しますね、コンゴウさん」

「ああ、決勝戦、期待してるぞ。マリア、お前は反省しろ」

「はーい……」

「待って欲しい、ショウ君、ハルカ君、マリア君」


部屋の入口が狭すぎるのか、体を半身にするようにしてドドムが部屋に入ってくる。

そして心なしか部屋の温度が上がったような気がする。


「ぜひともショウ君にも同席してもらいたい話なのだ、この場に残ってもらいたい」

「俺に?」

「そうだ。構わないかな?」

「それは、まあ。というかドドムさん、あんた冒険者だったんだな」

「……ショウ、ドドムさんはギルド本部の副本部長だ」

「すいませんでした」


冒険者ギルドのNo.2じゃないか。

なんでこんなところにいるんだ。なんで百年祭出てるんだ。やんちゃすぎるだろ。


「気にしなくていい。本題に入ってもいいかね?」

「ええ、俺にも聞いてほしい話というのは?」

「うむ。誠に残念ながら、本部に戻らねばならぬ用事が出来てしまったのだ。何やら看過できぬ問題が発生しているらしくてな。これ以上ここに留まっていられぬ。故にこの大会を棄権するほかないのだ」


棄権。ハクさんの次の相手が棄権か。

俺を潰そうとしていた連中の仲間がなにか仕組んだのか……?


「本部に戻らねばならぬ事情については聞いても?」

「ショウ、慎め」

「いや、それも話すつもりであった。くれぐれも他言無用で頼むが、ギルド本部に何者かが侵入したらしくてな。ギルド長が眠ったまま目覚めないという状況になってしまったのだ」


ギルドのトップが寝たきりに?


「それだけの重症ってこと?」

「普通はそう思うだろうな、マリア君。しかし違う。怪我で起き上がれないというようなことではなく、意識不明というわけでもない。文字通り、一度眠ったきり起きぬというのだ。正確な状況把握ができているわけではないが、なればこそ私が戻り、現場の指揮をとらねば」


なるほど、止むに止まれぬ事情か。

今のところその一件と今回の脅迫事件の関連性は定かじゃないな。

ギルドのトップを狙うというのは襲撃する側にも相応のリスクがある。目的が見えてこないのがつらいところか。


「ちょっといいですか?」

「どうした、ハルカ君?」

「急病とかではないんですか?内部犯の可能性だってありますし、どうして誰かが侵入したってわかるのか気になって……」

「……もっともな意見だ。たとえ外部からの侵入の形跡があったとしても、内部犯が工作としてそれらの痕跡を残す場合もある。確認の必要があるか」


色々と不可解な事件だ。犯人の目的も、手段も不明。情報が不足しているのは言うまでもないが、だからこそドドムさんが本部に戻る必要があるのだろう。


「ドドムさん、事情は分かりました。が、百年祭はどうするのです?ハク代表にも話を通さねばならんでしょう」

「実はつい先ほど外で会ってな。正式に話をするのはこれからだが、棄権の旨は伝えてある。えらく驚いていたが、まあ無理もないだろう。おそらくだが、明日は決勝戦になる。あまり観客を待たせてしまえば盛り上がりを削ぐ上、大会全体の印象も悪化してしまうからな。……ハク代表には申し訳ないことをする。コンゴウ君、ギルドからも私が棄権することについて声明を出すことはできるかな?」

「お任せを。事件の内容について確認が取れない以上、詳細な説明を添えることはできませんが、ないよりはましでしょう」


え、明日が決勝戦に?

技を完成させるための時間が減るじゃないか。


「明日が決勝になるのは間違いありませんか?」

「間違いないとまではいえんが、十中八九そうなるはずだ。先ほどハク代表が直接、そうなるだろうとおっしゃられたからな。我々からそれについて意見することも今回はできん。あちら側の言ったことに従うより他ないだろう」

「……そうですか」


参ったな。こんなところでぼんやりしている暇はないぞ。


「ショウさん、行きますか?」

「ああ、時間がない。ドドムさん、お話は以上でよろしいですか?俺は明日に備えて訓練をしたいので、できれば失礼したいのですが」

「うむ。君にも迷惑をかけるな、ショウ君。ここから先は私とコンゴウ君で対処しよう。またいずれ会おう!」


ドドムさんが右手をだす。

俺も右手を出し、握手をする。

握手してるだけなのになんだろう、肉の密度がすごい。手まで筋肉でミッチミチだ。


射撃練習場から階段を一つのぼってすぐ。

俺はいつもの演習場でハルカと共に決勝戦前最後の訓練に臨んだ。

訓練を始めてしばらく後、正式に明日が決勝となることが公表された。





そして、決勝の日。


コロシアムに向かう道すがら、多くの人の視線を受け、多くの人から声をかけられる。

当初はこれが嫌だったのに、今はなにも感じないどころか、照れくさいながらもそれを喜べている自分がいた。

……この大会で、俺も少しは成長できたかな。


コロシアムに入り、控室に入る。


「ショウ殿」

「ハクさん」


ハクさんは既に座り、こちらを待っていた。

立ち上がり、こちらに向き直る。


「ショウ殿、犯人が分かった」

「随分と速かったですね」

「ああ。……結論から言えば、いずれも独断だった。ショウ殿らを襲撃した件は、実行犯である彼らが。ショウ殿に指摘されて調べた結果明らかになった決勝トーナメント組み分けにおける不正の件は、その担当者が。そして……機械帝国との非公式な密約は、ギンが。いずれも独断で行ったものだった」

「…………それは」


黒幕が誰か、ずっと考えていた。だが明らかにはならなかった。

みつかるはずがない。だって黒幕なんて最初からいなかったのだから。


「彼らは、どうしてそんなことを?」

「それがまだわからぬのだ。どれだけ言っても、彼らは揃って動機を口にしない。まるでそこだけ示し合わせたかのようだ」

「そうですか……」


犯人たちの動機か。確証はないが、なんとなくわかる気がする。


「……なぜ、このようなことになったのだろうな。我はただ、この百年祭を最高のものにしたかった、ただそれだけだというのに」


遠くを見つめるハクさん。

昨日から比較しても、その瞳には疲れの色がさらに濃く現れていた。


「建国からの節目となる行事ですからね」

「それだけではない。砂漠の国である我が国は主要産業と呼べるものがなく、他国に比して経済的基盤が弱いのだ。だからこそ、国としての『印象』がより重要となる。武に優れ、一筋の刃のようにまっすぐで、共に並び立ちたいと思わせる。そんな国としての在り方を、この催しの中で示せればと、そう思ったのだがな……」


諦めたように独白する。

明るい面を多く持っているこの国にも、そういった事情はやはり存在するらしい。


『お二人とも、間もなくお時間です。準備はよろしいでしょうか?』

「おっと、すまないショウ殿。我としたことが話しすぎたようだ。この話はまたいずれ」


俺とハクさんは席につく。

間もなく、いつものように意識が遠のいた。




「……ここは」

「これは、偶然か……?」


決勝戦の舞台は砂漠。

足場は悪く、俺は苦手な舞台だ。

ハクさんにとってどうかはまだわからないな。


『それでは、百年祭決勝戦!ハク選手対ショウ選手の試合を開始します!』


剣を抜き構える。ハクさんはいつもの双剣だ。

沿った形状の刃が光る。


『参ります!5!』


「ハクさん、俺、わかる気がする」


『4!』


「……何がだ」


『3!』


「彼らが、どうしてあんなことをしたのか」

「……!」


『2!』


「俺に勝ったら教えますよ、予想に過ぎませんがね」


『1!』


ハクさんの武器を握る手に力が入る。


『試合開始!』


「参る!!」


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