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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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63話 追求

「来たか、ショウ。道中は?」

「コンゴウさんが手配してくれた馬車のおかげで、こいつらの姿は一般人に見られていない。馬車の停留所からここまでも人払いをしてくれたよな?」

「ああ。役に立ったようで何よりだ。」


気絶した人間を運ぶのにはコンゴウさんと部下の力を借りた。

ギルド所有の馬車を持ってきてもらえたため、現場からここまでの輸送での目撃者は最小限に抑えられた。単純にギルド所有の馬車が数台で動いていたのでそういう意味では目立っただろうが。

俺が襲われたのは他に誰もいない砂漠だったし、少なくとも『この国の軍人が組織立って罪なき冒険者を殺そうとした』という大事件は知られていないはずだ。


ここは冒険者ギルド中心都市クオン支部、その地下射撃練習場。ハルカ、マリア、コンゴウさん、そしてハルカたちを襲おうとした連中が集まっていた。俺が今連れてきた連中を合わせて、俺たちを襲おうとしたのは合わせて40人弱だ。改めて考えると相当大人数だな。

連中は縛り上げられ、装備は剥ぎ取られている。一部の者の装備は穴が空いていた。おそらく怪我はギルドの誰かが治療したのだろう。

獣人の身体的特徴も帝国製の装備で隠されていたのだが、今はそれらもあらわになっている。


……そして先に来ていたマリアがなぜか涙目で頭をさすっていた。


「マリアは何してるんだ?」

「……とった財布が見つかって怒られたの……」

「ごろつきじゃあるまいし、くだらんことをするな。まったく……」


うん、自業自得。


「……それで、ショウ。本当にいいのか?」

「ああ、今は大事にしたくないからな。ありがとうコンゴウさん」


この後どうするかについてだが、既に手は打ってある。

まあこれもほとんどコンゴウさんに頼んだだけなのだが。


そろそろ到着するだろう。



「コンゴウさん、来ました」

「ああ、ご苦労。戻っていてくれ」


コンゴウさんの部下がある人物を連れてくる。

俺が呼んでもらった人だ。ただ俺の予想に反し、ボディーガードのようなガタイのいい男も一緒だ。


「…………何かの間違いではないかと思ったのだが」

「残念だが現実だ、ハク代表。彼が今回被害にあったショウ、そしてその仲間のハルカ、マリアだ」

「初めまして、ハク代表議員。銅級冒険者のショウです。よろしく」

「ハルカです!よろしくお願いします!」

「……よろしく」

「汝らに直接会うのはこれが初めてか。最初の出会いがこのような形になったことが極めて残念だな……。我はハク。知っての通り、セツナ連合国の代表議員を務めている。よろしく頼む。それからこの者は我の部下で、名をギンという。補佐官のようなものだ」


ボディーガードのような男、ギンが会釈する。……この人、さっきから少し敵意を感じるんだよな。

ハクさんの目は、以前開会式で見たときに比べるといくらか疲れて見える。

百年祭という国の一大イベントで仕事が増えたか、今回の事件に気をもんでいるか、両方か。


沈痛な面持ちのハクさんが言葉を繋げる。


「さて、まず謝らせてほしい。部下の失態は我の失態。然るべき処罰を受ける必要がある。…………しかしこの状況を見るに、部下たちの暴走と我の不徳が公表されるのは百年祭が終わった後か?それとも何か別に要求が?」


状況を読むのが早いな。騒ぎが起こっていない現状を見て、こちらがあえて騒ぎを起こさないよう配慮した理由を考えたのだろう。

そしてその判断は正しい。俺はヴォイドとの約束がある以上百年祭を続けたいし、そのためにもこの国のトップと軍の不祥事の公表を遅らせるつもりだった。不祥事が大っぴらになればこの国にある程度以上の混乱が起こることは間違いないし、下手をすれば百年祭が中止になるかもしれない。それは困る。


そこまではいい。

ただ、今のハクさんの発言で引っかかる点が一つある。


「少なくとも百年祭が終わるまでは公表するつもりはありません。百年祭は最後まで実施していただきたいので。それより今、部下の暴走と言いましたね?今回の一件に、ハクさんは関わっていないと?」

「信じてもらえないかもしれないが、その通りだ。この者らはいずれも我の部下だが、今回のような指示は誓って出していない」


白だ。ハクさんは嘘をついていない。

しかしだとすると、黒幕が別にいるということか?

もう少し話をしてみよう。


「では、この大会の組み分けのくじ引きに不正が行われていたこともご存じないですか?」

「なんだと?そのようなことがあるはずがない。ショウ殿が何をもってそのようなことを言うのかわからないが、それこそ何かの間違いだろう。ギンはどうだ?」

「自分にもわかりません」

「……そうですか。失礼しました。忘れてください」


これも白。ギンも白だ。後者はさっきからずっと敵意を感じるので嘘をついているのか正直よくわからないのだが。

参ったな。これまでの予想が大外れだ。結局誰が黒幕か全くわからないじゃないか。


「ともかく、ショウはまだ公表するつもりがないのだろう?であれば一度この者らはハク代表に引き渡すべきだ。ショウの望みが百年祭の継続ならば、それが終わり次第もう一度話合えばいい。ハク代表。言うまでもない事だが、あとから知らぬ存ぜぬは通らせませぬ故、納得がいく説明のできる準備だけはゆめゆめ欠かさぬようお願いする」

「無論だ。今回の件に関する落とし前は必ずつける。そして百年祭の継続を認めてくれること、感謝するぞ。コンゴウ殿を始め、冒険者ギルドの諸君にも迷惑をかけたな」


ハクさんはこちらに向き直り、深く頭を下げた。


「ショウ殿、ハルカ殿、マリア殿。本当にすまなかった。百年祭が終わり次第、汝らを訪ねに行く。その時改めて話をさせてほしい」

「わかりました。ハルカとマリアも、それでいいか?」

「あたしはそれでいいわ」

「私も大丈夫です」

「感謝する。では、またいずれ。……お前たち、行くぞ!」


縛られた連中が解放される。

うつむいたまま、連中は外に出て行った。馬車で軍の詰め所まで連れていかれるらしい。


「……もっと、素直に楽しめる催しになると思ったんだがな」

「あたしは案外楽しめてるわよ?殺されかけたのはさすがにびっくりしたけど、まるで物語の中みたいにいろんなことが起こるじゃない!」

「ハクさんは今回のことに関わっていなかったみたいですし、これからはもう大丈夫ですよ!まだまだ楽しみましょう!」


二人が励ましてくれる。

そうだな。二人がこれだけ楽しんでくれているなら俺も嬉しいし、深く考えることもないか。


「それよりショウさん、やっぱり修行していきませんか?明後日には決勝戦ですし、準備するにこしたことはないかと」

「あたしにも手伝えることってある?人手が多くて困ることも無いでしょ?」

「そうだな、二人とも頼んでいいか?」


今回の一件や大会で起きた不正。その黒幕は未だわからない。

ただ今は、もっと強くならないと。


俺が倒したいのは、世界最強と言われる男なんだから。


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