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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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58話 大鎌、大盾、大男

百年祭決勝、三日目。

今日は特に知り合いの対戦ではない。

決勝進出者のうち、大鎌を背負っていた男と、やたらと大きい図体の男の対戦だ。

ステージは屋内を模しているらしい。宮殿の広間のような、石造りの建物の広い一室だ。太い柱が等間隔に存在し部屋を支え、ステンドグラスのような硝子づくりの窓から光が差し込んでいた。


大男の方は予選では持っていなかった盾を装備している。それもただの盾ではなく、2メートル近くの大きさ、幅を持つ特大の盾だ。大男も、姿勢を低くすれば全身を隠せるだろう。

なぜ予選で使わなかったのかはわからないが、盾のみでの戦闘に興味が湧くな。鎌で戦う人も初めて見るが。




『試合開始!!』


鎌男が接近し、切りかかる。大男は盾を構えて動かない。迎え撃つようだ。

鎌男は一撃を大きくするのではなく、小刻みな連撃を加えていく。


『クーロン選手の連撃がドドム選手を襲う――!!ドドム選手、防ぎきれるのか!!』

『クーロンの本来の戦闘術がどうかはわからんが、あの大盾に対して力押しを避けるのは妥当な選択だ。相手の攻め手がわからん以上、無駄に隙を晒したくないという考えもあるだろうな』


しかしその連撃も、大男……ドドムの防御に完全に防がれている。

さすがに盾のみを手に戦うだけのことはあり、防御に関し一切の隙もない。

金属のぶつかり合う音が響く。


らちがあかないと判断したのか、鎌男が下がり、懐から魔術に使われる手帳を取り出す。

あの男、魔術が使えるのか。しかも手帳を持っているということは、それに書き込むだけの魔術のレパートリーがあるということ。



……だが。



『ぬんっっっ!!!』


ドドムの野太い声が轟く。

防御の達人は、相手がしびれを切らし隙を晒す瞬間を見逃さなかった。


俺やグレタのそれには及ばないだろうが、大盾を構えたままとは思えないスピードでクーロンに突撃する。

相手が一切の攻撃をしてこないことに油断し、十分な距離を取らず手帳を取り出していたクーロンは、迫りくる巨大な壁を躱すことができなかった。



蹴られたボールのように吹き飛ぶクーロン。壁にぶつかりようやく止まったところに、ドドムの声が飛ぶ。


『降伏せよ、青年!!今から私はとどめを刺す!!』

『くそ……馬鹿にしてくれる……』


言われた側には屈辱だろうが、あれはドドムなりの優しさだろう。

再び盾を構え、姿勢を低くする。もう一度あのタックルを喰らえば、間違いなく勝負は決するだろう。



だがドドムが走り出した途端、クーロンがダメージなどなかったかのように起き上がり、壁の一部を魔術で凍らせ、それを足場として高い位置の同じく凍らせて作った足場へと避難した。


『おお!?これは一体どういうことか!クーロン選手、あの突撃を受けても平気で動き回っています!!』

『いや、よく見ろ。奴の服の一部に濡れた痕跡がある。おそらく水魔術による回復を行ったのだろう。壁を凍らせた魔術といい、少なくとも2つの属性の魔術を使えるようだ』

『なるほど!水魔術には回復効果を持つものがあると聞いたことがあります!!コンゴウさん、回復する水魔術は何という魔術なんでしょう?』

『名はない。魔術に頻繁に触れる職の者でないと知らないだろうが、名前のついている魔術は初級魔術だけだ。中級以上の魔術は使い手が減り、その術式そのものが秘匿とされがちなために名前は付けられないか、付けられても本人や弟子の間でしか呼ばれない場合がほとんどだ。ちなみに水の回復魔術に関して言えば、直接傷口にかけるタイプと経口摂取するタイプがある。今回は後者だろうな』


それは知っていた。初級無属性魔術しか使えないとはいえ俺も魔術を勉強したからな。

と、壁に足場を作って避難したクーロンに対し、ドドムは一度足を止めた。


『さっさととどめを刺せばよいものを、油断したな阿呆が!!』


足場の上でクーロンが手帳を広げる。

盾を構え動かないドドムの周りが一瞬光ったかと思うと、ドドムとその周辺が一斉に凍り付いた。


『またしても魔術です!!これは決まったか――!!』

『……いや、違うな』



コンゴウさんの言葉に一瞬遅れ、ドドムを覆っていた氷が砕け散った。

……そんなのありか?


ドドムが大盾を構え、再び走り出す。

だがクーロンは既に避難済み。タックルの射程圏外であることは明らかだ。



いや、おかしいぞ。ドドムのタックルの方向。あのままだと……。


『え!?どこへ向かうんですドドム選手!あ、あぶなーい!!!』


ホノカさんの静止の声も届かず、ドドムは部屋の柱へと突っ込んだ。

しかし砕けたのは柱のほう。さらにそのタックルは頑丈な石製の柱を粉砕し、それでも止まらない。


そのままドドムは別の柱へ突っ込んだ。再び石の柱が砕け散る。

二本、三本と崩れ去る柱。

建物の天井から砂ぼこりのような何かがこぼれる。

…………そういうことか。


『なにを、している。……まさか貴様!』


焦るクーロン。

だが、もう遅い。


最期の一本の柱が崩れる。

宮殿の広間を模したようなその部屋が大きくきしむ。

部屋全体が揺れるような地響き。


そしてドドムはクーロンへと向き直る。


『何を考えている!?これでは俺だけではない、貴様もタダですまんぞ!!』

『心配はいらん。鍛え抜かれた筋肉には、小雨も同然だ』


ドドムが走り出す。

破壊そのものとなった大男は、安全圏へ避難したと思い込んだ男があてにした、その壁へと突っ込んだ。


致命的な破壊音、そして崩壊する広間。

天井も、壁も、すべてが崩壊する。

クーロンも、ドドムも、瓦礫の下へ埋もれていった。




『これは……どうなったのでしょう?』

『決着だ』



ボコリ、と瓦礫が盛り上がると、そこから一人の男が立ち上がった。

肩のほこりを払い、腕を一回転させる。



『言ったであろう青年、とどめを刺すと』




『………しょ、勝負あり!勝者、ドドム選手――――――!!!!!』


歓声があがる。

……ほとんどタックルですべてを解決したよな、この試合。





「すごい試合だったな」

「ある意味ね」

「でも実際あの突撃はすごかったですし……」


コロシアムを出てギルドに向かう。

ハルカにも付き合ってもらって、新技をまた考案中なのだ。

……ん?なんだろう、視線を感じる。


「あ、まずい……ショウさんマリアさん、隠れて!」

「ちょっと、どうしたのよ」


突然ハルカが俺たちを連れ、大きめの看板の裏に隠れた。



「ししょー、ししょー!どこでござるか――!!」


俺たちが隠れてすぐ、近くを忍者風の恰好をしたキツネ族の幼い少女が通りかかる。

決勝進出者にも似た特徴を持った女性がいたが、関係者だろうか。


「何あの子、かわいい!ハルカ、なんで隠れたのよ?」

「あの子が呼んでる師匠って、あれ……私の事なんです。」

「なにそれ、弟子を取ったの?」

「取ってないですよ。ただあの子が勝手に……」


詳しく聞いたところ、どうやらあの子は決勝進出者の女性の妹らしい。

決勝での俺とハルカの戦いを見てハルカにあこがれ、師匠と呼び付きまとってくるようになったらしい。


「別にいいじゃない、かわいいし。相手してあげなさいよ」

「いえ、あの子自体はいいんですけど、お姉さんがやきもちを焼いちゃって大変なんです……」

「私を呼んだか」

「わふ!?」


近くから声がかかる。

さっきからなんか見てくる人がいるな、とは思っていたがなるほどそういうことか。

振り返ると、忍者キツネ(姉)がこちらを睨んでいた。


「いいか、私はお前がコノハの師匠だなんて認めないからな!この大会で優勝して、必ず姉としての威厳を示して見せる!!」

「え、えーと、えーと……頑張ってください!」

「黙れ!貴様に応援などされたくないわ!」

「どうしたらいいんですかぁ!?」



かわいそうに。

そういえば、この人の相手はハクさんなんだよな。

いろんな意味で注目のカードだ。


それにしても、さすがに強者が集まる決勝トーナメントだけあってか、癖のある選手が集まっているな。

涙目ですり寄ってくるハルカをあやしながら思った。




だってばよ

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