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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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57話 飲みに行こう

コンカイ ナカミ スッカスカ!

「ショウ!!飲みに行こうぜ!!!!」


グレタの試合が終わって数時間。

姿が見えないと思っていたそいつが、ギルドの演習場で訓練する俺に声をかけてきた。

なぜかコンゴウさんと一緒に。


「突然だなグレタ。別にいいが」

「こいつはいつもこうだ。相手の都合などは考えずとりあえず声をかけてくる。迷惑な話だ」

「そう言いつつ一緒に来てくれるのがコンゴウなんだよな!なんで結婚できないのか不思議だぜ!!」

「気が変わった。帰るぞ」

「だ――!!待て待て!悪かった!」


しかめっ面のコンゴウさんを引きずるように外に出る。

そのまま繁華街方面へと歩き出した。





「……ん?あれって……」

「あん?どうかしたのか?」


繁華街の店から図体のでかいヒト族の男が吹き飛ばされるように飛び出していた。

その男があわてた様子で起き上がると、店の中から見覚えのある人物……ハクさんが部下らしき武装した獣人らと一緒に現れた。


「な、な、なんだよ!!俺は客だぞ!!」

「ヒト族の男よ。確かに我らは諸君らを友だと思っておる。外見や文化がどれだけ違おうともな。しかし……」


ハクさんが男の前に立つ。


「我らは金さえ払えば客だと思っている輩を客とは呼ばぬ!捕らえよ!!」


その言葉に続き、部下たちが男を取り押さえる。

そのまま男は一部の部下の人たちに連れられ、どこかに連行されていった。



「今日は、あまり羽目を外さない方がよさそうだ」

「あれ、ハクさんだよな?国の代表が、なんで治安維持活動なんてしてる?」

「ハク代表は行政のトップでもあると同時に軍事のトップでもある。どうやら本人の意向で、しばしば現場に出ているようだ」


ひとまず現場をスルーしつつ何が起きていたのかを聞いてみる。

軍事のトップ、か。

治安維持は軍隊じゃなく警察の役割ではとも思ったが、わざわざ武力を持つ組織を二つに分けることをこの世界ではしないのだろう。


「まあなんとなくはわかるが、いちいち現場に出ていて、代表議員としての本業に支障はないのか?」

「それがまったくないからこそ、あれだけの人望がある。先祖の功績が大きいだけに重圧も大きいだろうが、それらを跳ねのける結果を挙げている」

「なんだ、あの姉ちゃんもやっぱりすげえ奴なんだな!!んで、何をしたんだ?」


グレタも食いついてきた。

あまりこういう話に関心があるイメージはなかったんだが。


「直近で言えば、ファリス王国との連合成立だな。機械帝国と魔術王国の対立は有名だが、それらに干渉しない第三陣営としてセツナ連合国はファリス王国と結びついたのだ。歴史的に他国との関係が薄いファリス王国と連合できたという功績は他国にも大きく印象付けられただろう」

「ファリス王国と結びつくのはそれだけ大きなことなのか。印象はともかく、魔術王国にも機械帝国にも対抗できるだけの物質的強みがあるってことか?」

「ファリス王国に冒険者ギルドの総本部があるのは知っているだろう?ファリス王国の行政は冒険者ギルドとのつながりが深くてな。下手にかの国と対立すれば、冒険者ギルドと対立する可能性がある。牽制としては十分だろう」


なるほどな。国ごとにも陣営があるんだな。

魔術王国、機械帝国と教国、ファリス王国とセツナ連合国の3つの陣営か。

……ん?


「ヨンド王国は?どの陣営にも属してないのか?」


6大国のうち、ヨンド王国だけが話に出てこなかった。王子は他国からの干渉を気にしている様子だったが……。


「……ヨンドか。建前上は中立を示しているがな。事実上機械帝国側だ。ヨンドの主要産業は地下資源の採掘にあり、その販売相手国はほぼ機械帝国だ。つまり貿易収入のほとんどを機械帝国から得ている。経済力、武力など鑑みても、明らかに機械帝国の方が立場が上だ。魔術王国の反発を懸念しないのなら、既に帝国は適当な理由をつけてヨンドに武力介入していたかもしれないな」

「……そうか。思っていたより深刻な状態なんだな」

「なんだ、関係者に知り合いでもいるのか?」

「んー?まあ、少しな」

「そうか。安心しろ。詮索などしないさ」


以前仕官を提案されて断っただけに、その国が苦境に立たされているとなると少し罪悪感があるな。俺が直接悪いわけではないのだが……。




「お、着いたぞ!!」



話しながら歩いていたら、目的地に着いたようだ。

……が。


「……なんだここ?」

「もふもふ酒場だ!!尻尾と耳以外に触ると叩きだされるから気を付けろ!!」

「そうじゃなくてだな!」


どう見ても普通の酒場じゃない酒場についてしまった。

俺、一応既婚者なんだが?


「まあ見た目ほどいかがわしい店ではない。せいぜい酒を注いでもらったり、話をしたり、尻尾で顔をはたいてもらったり、そのくらいだ」

「なんか変なの混ざったよな確実に」

「今日は俺のおごりだぞ!!遠慮せず飲め!!」

「それは普通に助かる」


金がピンチなのを忘れてついてきてしまっていたので出してもらえるのなら助かるな。


「でもいいのか?なんかの記念ってわけでもないのに。結構高いだろこういう店?」

「いや、記念日だ!!今日は『俺より強い奴にまた一人出会えた記念日』だ!!!」

「暑苦しい奴だ、まったく……」


3人で店に入り、席に着く。

その後は特に変わったこともなかった。

酒を飲み、話をし、尻尾ではたかれ、酒を飲み、話をし、尻尾ではたかれていた。


それからグレタに、負けてしまったために決着をつける約束を果たせなくなってしまったことを謝られたが、次の機会に持ち越せばいいということでそれは済んだ。




それと、どうでもいいことだが出てくる酒がやたらと美味かった。高級だからだろうが。

この世界に来て最初に安酒を飲んでマズイと決めつけていたが、やっぱり高ければ美味いんだな。


「……ショウ、お前、飲みすぎではないか?」

「え?」

「へ、へ。やっぱりバケモンだぜショウ……」


美味くてずっと飲んでいたらしい。

気づいたら10本近くのボトルが空になっていた。

そうか。魔物の肉体になって酔わなくなっていたのを忘れていた。毒が抜けるのが早いように、酔いが抜けるのも一瞬になっているのだ。


「わ、悪い。今度なんかおごるからさ」

「いいってことよ!!もともと普段金なんか使わねえしな!!」


その後した会計の額を見たときは、酒を飲むより激しい吐き気がした。

ほんと申し訳ない。





「ただいま」

「ショウさん、おかえりなさい!」


宿の部屋に戻ると、ハルカが出迎えてくれた。

尻尾のゆれがすごい。


「…………?」


ハルカはこちらに近づくと、不思議そうに首をかしげた。尻尾の動きが止まる。

すっと懐に潜り込み、こちらに鼻を近づけてくる。


「すんすんすん」

「何してるんだ?」


しばらくこちらの匂いを確かめていたハルカが、むっという顔になった。


「……今日、どこに行ってましたか」

「え?ええと……」


「試合観戦のあと、ギルドの演習場に行くって言ってましたよね」

「あ、ああ、その後グレタとコンゴウさんに飲みに誘わて、酒場に行ってたんだ」


「へぇ…………ならどうして、ショウさんから女の人の匂いがするんでしょうね?」

「え!?」


「どんな『酒場』なのか、しっかり聞かせてくださいね?」

「はい……」


飲みに行ったのは楽しかった。

ただ、今度は事前にどんな店に行くつもりなのか聞こう、そう思った。


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