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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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52話 勝つのは②

終盤のホノカのセリフを修正、勝負の決着は死亡か気絶、降参によるものとする旨を追加しました。

ギルドの地下、射撃武器の練習場。

冒険者は主に近接戦を好む傾向にあり、そこを利用する者は少ない。

しかしその日は、少数派である遠距離武器使いの冒険者らの多くがそこに集まっていた。


一人の少女が弓を射る。

射撃場に設置された藁でできた人型。その頭部に矢が突き刺さった。


再び射る。

首元。


更に射る。

左胸。


最初は1本ずつ射られていた矢は、矢筒の中の矢がなくなる頃には3本がまとめて射られるようになり、さらにそのいずれもが急所に突き刺さっていた。


射撃場に拍手が起こる。

ようやく周囲の視線に気が付いた犬耳少女は顔を赤くし、ペコペコとお辞儀をしてそれに応えた。



「冒険者ってすごいのね~」


ざわつく周囲とは対照的に、のほほんとした様子で感想を述べる金髪の少女。

どこで買ってきたのか棒付きの飴を咥え、適当な段差に腰かけていた。


「いえいえ、私なんてまだまだですよ」

「謙遜しちゃって。矢を三本同時に狙ったところに撃つなんてどうやってるのよ?」

「えへへ、秘密です!それはまだ言えませんね!」


周囲から落胆の声が上がる。

決勝進出者の強さの秘訣がわかると前かがみになっていた何人かからだ。


「すごい、けどさ」


マリアの声が詰まる。

ハルカはその次に何を言われるかわかっていた。


「勝てるの?ショウに」


ハルカは押し黙る。

自分の実力がおそらく自らの相棒に及ばないことを、彼女はわかっていた。


もちろん、勝算がないわけではない。恩師との修行の中、彼女は唯一無二の技術を会得していた。

それは弓の技術に留まらない。彼女が得意とする風の魔術は既に戦闘を補助するだけに留まらない力を発揮するまでになっていた。


しかしそれでも、ショウの実力は既に金級冒険者でも上位の者と同等のレベルにまで達している。

ショウより冒険者としての経歴が多少長くとも、実戦経験の多くないハルカは自らの実力を客観的に測れず、自らがどうすればショウに勝てるかはイメージの域を出ない。


「難しそうな顔してるわね」

「……そうですか?」

「ええ。自分なんかに何ができるんだろうって顔よ」

「あはは、そんな顔してましたか」


力なく笑うハルカ。

どこか諦めのような感情のにじむその笑みに、マリアは飴をかみ砕いた。


「ねえ、ハルカ。ハルカはどうしてショウの相棒になったの?」

「え?」

「二人の出会いとか聞いたことないなって思ってね」

「出会い、ですか」


ハルカは遠くを見る。



「私の兄さんはおせっかいな人でした。ショウさんと出会ったのも、兄さんのおせっかいの延長だったんです」


「変な人かと思ったら、強い人で……でも、弱さも持っている。そんな人でした。」


「いくつもの依頼を経て、ショウさんと私は通じ合うようになりました。…………でも。気づいているんです。私たちがこなした依頼の中で、私がいないと達成できなかった依頼はなかったこと。私の存在は依頼達成を楽にしたかもしれませんが、私の存在が依頼の達成に不可欠だったことはなかったでしょう」


「いつからでしょうね。人に頼られたくて冒険者になったのに、気が付けばこの人に頼られたくて努力するようになってました」


それが実を結んだことはまだ無いんですけど、と困ったように笑う。


「……じゃあ、今回の試合はその成果を見せるチャンスってわけね?」

「そうです。でも……」

「でも、なに?」

「でも、私じゃきっと……」


はあ、とため息をつくマリア。仕方ない、といった様子でハルカに手招きをする。


「?」


不思議そうに首を傾げながら近づくハルカの頭を、マリアは突然両手でつかみ、わしゃわしゃと乱暴に撫でた。


「わふ!?」

「ここまで来てウダウダ言ってるんじゃないわよ!あんたら二人ともそう!自分への評価ばっかり下げて!行き過ぎた謙虚さは、あんたたちのことを認めてる人たちへの侮辱よ!」


パッと手を放す。

ぼさぼさになった髪を気にする様子もなく、ハルカは目を白黒させる。


「いい!?二度とあたしの前で、あたしが好きな人たちのことバカにしないで!!」

「えと、ええと……」

「返事!」

「は、はい!」


混乱しながらも返事を返すハルカに、むふー、と満足そうにするマリア。

ハルカは、言われた言葉の意味を反芻していた。


「行き過ぎた謙虚さは侮辱……」

「驕らないのはあんたたちのいいところかもしれないけどね、卑屈になっちゃ始まらないわ」

「そっか……そうですね!うじうじしてて勝てるわけじゃないですし!」

「その意気!応援してるからね!あいつの鼻っ面へし折ってきて!」

「任せてください!内臓飛び散らせてみせますよ!」

「え、ええ……がんばってね」


唐突に発言が物騒になるハルカに若干引きつつ、マリアが笑う。

ハルカはマリアに、そして自らに勝利を誓った。





そして翌日。

予選と同じ控室に案内される。


部屋に続く廊下で、既にあの人が私を待っているのを感じる。

嗅ぎ慣れた匂い。

見慣れた背中。

私のたった一人の相棒が、静かに座って待っている。


背後から声をかける。


「ショウさん」

「ああ」


「全力で行きます」

「ああ」


「殺す気で行きますよ」

「ああ」


「だから、ショウさんも殺す気で来て下さい」

「……ああ」


必ず認めさせてみせる。

席に座り、集中する。


負けたくありません。



『さあ、準備はよろしいですか?』


「「はい」」


『転送後5つ数え、試合開始の合図を出します。それまでの戦闘行動はお控えください。また試合の決着はどちらかの死亡、気絶、または降参によるものとします。それでは、ご武運を』


一瞬、意識が薄れるような感覚を覚える。


次の瞬間、私たちは草原の真ん中に立っていた。

背の低い草が足元を覆っている。遮蔽物のない地形は私に有利のはず。


『それでは、百年祭決勝第一回戦第一試合!ショウ選手対ハルカ選手の試合を開始します!』


ホノカさんのアナウンスが響く。


私は弓を、ショウさんは剣を構える。



『参ります!5!』


この距離。ショウさん相手なら、一瞬で詰められる間合い。


『4!』


初手で間違えれば……負ける。


『3!』


魔力を練り、策をめぐらせる。


『2!』


相棒だから、負けたくない。


『1!』


誓ったから。


『試合開始!』


勝つのは、私です!


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