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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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49話 舞いと銃弾と鉄腕と・・・ボロボロ防具

「さて、だいぶ人数が絞られてまいりました!残り人数は……58名!ここで、本予選で頭角を現した選手たちを振り返っていきましょう!」


予選開始より一時間と少し。長いコロシアムの歴史でも類を見ないほどの盛り上がりの中、舞台の中央には戦う選手とその周囲の光景が立体映像のように再現されていた。

誰を、あるいはどこを映すかは大会運営が操作しており、司会者であるホノカの実況と連動するように切り替わっていた。


「まずはみなさんご存知この方!やはり英雄の子孫は英雄か!ハク様は現在、62名を倒し、今もなお襲い来る武芸者たちを返り討ちとしています!」


移ったのは山中。両手にそれぞれ独特な形の剣を持つ白髪の女性が、四方から襲い掛かる参加者を相手に戦っていた。

一般的なものに比べて反った形状の刃を持つその一対の剣は迫りくる攻撃を全て別の方向に流し、隙を晒した背中を切りつけていく。

高い知名度が災いし、彼女との戦いを望む者が想定外に増えていたにも関わらず、その動きには一点の淀みもなかった。


「いやー、優雅な戦い、まるで舞いのようです!コンゴウさん、いかがでしょう?」

「動きそのもののすさまじさは見ての通りだが、驚くべきはあの集中力だ。あれだけの動きを、彼女はこの一時間の多くの時間で行っている。一度のミスも許されない緊張感をものともしない豪胆さはさすがと言わざるをえないな」

「なるほどー、さすが我が国の代表議員です!では、次を見ていきましょう!」



画面は切り替わり、砂漠のような光景が広がる。その中を、謎の存在が低空飛行していた。

ショウがロボットのパーツと称した機械部分は青白い炎を出し、その存在に推進力を生み出している。


「登録名はベリル、撃破数はダントツ一位の94名……あれはなんなんですか?」

「わからん。わかることは、あれが機械帝国出身だということ、そして恐ろしく強いということだけだ」

「倒された選手がなにをされたのかも私にはわかりませんでした。あの攻撃の正体はわかりますか?コンゴウさん」

「よく見ていた者なら気づいたかもしれんが、あの選手が使用している武器。あれは高速で小さな金属の球を発射しているようだった。しかし真の脅威はそこではない。あの小さな球を、動く相手に正確に当てるベリルの腕前だ。特殊な武器だけに習う者もなかっただろう。努力の跡は確かにみられるな」


謎の女性……ベリルの奇妙な戦術に、観客席では恐怖の声も上がっていた。見たこともない外見の存在が、謎の武器で歴戦の戦士たちを淡々と屠るさまが人々の恐怖を呼び起こした。

ベリルの撃破数は正当防衛によるものではない。自ら高速で動き回り、獲物を見つけては狩っていたのである。


「あの理不尽なまでの殺戮を止めることはできるのでしょうか……気を取り直して、次に行きましょう!コンゴウさん、あの二人は最後に残すとして、今注目の選手はいますか?」

「そうだな……個人的には森エリアの弓使い、彼女に期待している」

「ほう!ではその選手を見ていきましょう!」


またも映像が切り替わる。今度は森の中。木の陰に潜むようにイヌ族の少女が弓を構え、周囲を警戒していた。

そして観客席の一角で、両手に食べ物を持ち切れず席に並べだしていた金髪の少女が飛び上がって声援を送った。


「こちらの選手ですね!名前はハルカ選手!コンゴウさん、彼女のどこに注目されたんですか?」

「……可憐だ」

「え?」

「い、いや。彼女は弓の腕も確かだが、魔術も用いる戦闘をするようだ。しかしその魔術にやや不自然な点が見られた」

「不自然な点、ですか?」

「ああ。しかし……おそらく俺の気のせいだろう。だが腕は確かだ。だからこのままこの映像をキープしよう」


公私混同を始めたコンゴウ、イヌ族男性、24歳。彼は少し年下が好みだった。



「いろんな意味で雲行きが怪しくなってまいりました!では皆さんお待ちかね、彼らを見ていきましょう!」


やはり映像が切り替わる。最後にとって置かれた映像は岩場。すでに岩場ではなく岩場だった場所と化したそこには半ば更地になった荒野と、見るも無残な瓦礫の山が出来上がっていた。


二人の男たちがしのぎを削る。赤髪男の大槌が地面をえぐる。黒髪男が切りかかる。お互いが常人では理解できない速さとパワーで動いているにも関わらず、お互いの体は傷一つついていなかった。


「熱い、熱い攻防が繰り広げられております!しかし皆さんお気づきでしょう、彼らはこのような攻防をもうかれこれ30分以上続けているのです!正直驚きを通り越して呆れてしまいます!おまえらはなにをしているー!!」

「まさに怪物同士の戦いだな。金級冒険者として死の大陸にも渡ったことのある俺だが、これほどの戦いは初めて見た。どんな結果になるにせよ、互いに後悔のないよう全力を尽くすべきだ」

「およそ予選でのそれとは思えないようなコメント、ありがとうございます!さて、ここで双方の選手の情報を見ていきましょう!」


この会話の間に瓦礫の山が砂の山と化した。しかしそれを気に留めるものはいなかった。


「まずは赤髪の選手ですね!彼はご存じの方も多いのではないでしょうか!たびたび話題に挙がる金級冒険者最強談義ですが、その話題に彼が現れないことはありません!そう彼こそ、『鉄腕』グレタ選手―――!!」


怪物二人の戦いにやや飽きがさしていた観客席に再び盛り上がりが走る。

紹介を受けた選手は注目を浴びることがうれしいのか一瞬笑みを浮かべたが、笑みで膨らんだほほに一筋の切り傷が入ったことでその笑みを戻した。


「奴は有名だな。俺が怪我でこちらに退く前、最前線で大暴れしていた。あいつの体力には誰もついていけなくてな……度々奥に入り込みすぎて迷ったあいつをみんなで捜索……」

『コンゴウ!余計なこと言うな!うおっ!くそっ、集中できねえ!』


黒い刀身の剣が薄皮を切り裂く。


「そしてもう一人!いまやこの大会で最も名を挙げたと言える男!ボロボロ防具男こと、ショウ選手だ―――!!」

『ボロボロ防具はほっとけ!あぶなっ!』


大槌の一撃がボロボロ防具をかすめる。


「こちら、なんと銅級冒険者だそうです!意外ですが、だからこそ期待が持てますね!」

「功績を目立たせたがらない冒険者も中にはいる。この男もその類だろう。解説の立場としてこういうのもなんだが、こういう表に出てなかった人間にこそ名を上げて―――――」

「あ、そういえば彼、先ほどのハルカ選手の相棒だそうです。夫婦ではなく相棒という呼び方に青春を感じます!」

「そこだ!つぶせ!かち割れ!そういうやつらは報いをうけるべきだ!」


ついに中立のふりすらしなくなったコンゴウ、独身。彼は少々拗らせていた。


「それはともかくコンゴウさん、この戦いをどうみますか?」

「……ああ。見たところ、あの二人の戦闘術は極めて近いようだ。接近戦に特化し、軽防具で身軽に動き回りつつ強烈な一撃を見舞う。耐久力が高く、かつ一撃が重い強力な魔物との戦いに特化した冒険者の戦闘術と言える」


自分の職務を思い出したらしいコンゴウの解説が入る。


「似た戦闘術であるからこそ、戦いが長引いているんですね?」

「いや、通常は逆のはずだ。戦闘の基礎的な考えが同じなら、より完成度の高い方が勝つ。木の棒と鉄の棒をぶつけ合わせれば木の棒が折れるように、おなじ力の使い方をした時の差はすぐに表れるのが普通だ」

「……ということは、つまり?」

「つまり、奴らの実力は奇跡的なまでに同等ということだ。何か外部的な要因がない限り、この戦いに終わりは見えないぞ」


岩場と呼ぶべきだった地形は切られ潰され、既に何もない荒野と化していた。それでもなお、二人の冒険者の戦いは衰える気配がない。


「想定外の激しさとなった百年祭予選!残り人数は30人を切りました!最後に舞台に立っているのは、果たして誰なのでしょうか!!」


狭まる空間によって終結する猛者たち。決勝進出者の選定が間もなく終わろうとしていた。


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