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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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47話 開会式

コロシアムの観客席は見渡す限りすべての席に人が詰めかけ満席御礼。後で知った話だが、なんとこのコロシアムには約5万人もの人間が入れるようになっているそうだ。

コロシアムの中央、選手たちの戦いが行われるであろう舞台は通常のそれとは違い、強化ガラス張りのようになっており、その下には例の魔道具であろう機械の一部が見える。機械には疎いのでよくはわからないが、昔見たプラネタリウムの投影機に似ている。


百年祭出場を決めた翌々日。その開会式がコロシアムで行われようとしていた。

出場者はある程度座席を融通してもらえるらしく、無事席を確保できた俺たちは開会式の始まりを待っていた。


「お祭りってさ」

「うん?」

「最高ね!」


両手いっぱいに屋台の食べ物を抱えたマリアが興奮した様子で言う。カットフルーツの盛り合わせ、焼き肉の串、りんご飴に似た飴菓子、焼きそばにしか見えない茶色い麺の器……。

わかるぞ。なんでか知らないがこういう時に食べる物ってやたらとうまいし、無限に食べられるよな。それにしても買いすぎだが。


「がじがじ……がじがじ……」


こっちはハルカだ。これまた屋台で買ったらしい肉の串にかじりついている。マリアのものと比べるとずいぶんデカい肉の塊で、肉串というよりマンガ肉に近い形状だ。

どこで買ったのか聞くと、世界一固い肉を宣伝文句にして売っている屋台で買ったらしい。

どうりで固そうだ。……美味そうかは別だが。


「それではこれより、セツナ連合国建国100周年を記念した百年祭の開会式を執り行います!!!」


司会者らしき、ウサギ耳で真面目そうな顔のお姉さんが舞台の上に突如現れる。よく見ると、下の機械から投影されているようだ。

ハルカたちが着ているような踊り子風衣装に近い服装をしている。なんでもこの衣装は獣人の国の伝統的な衣装で、連合国として一体化する前から獣人の国一帯で祭事の際にはよく着られる服装なんだそうだ。


お姉さんの言葉に遅れてコロシアム中から歓声があがる。5万人の歓声が一つになり会場全体を震わす大きな音となり体に伝わってくる。


ひとしきり歓声が止むと、司会者は全体を見渡し、しずかに言葉を繋げた。


「まず、今回の百年祭について、代表議員のハク様よりお言葉をいただきます」


司会者の言葉に続き、司会者とは別の人物が投影される。白髪の女性だ。

代表議員というのは、ざっくり言えばこの国の首相らしい。ほとんどが王国や帝国であるこの世界で連合国という形態をとるこの国ならではの呼称だろう。

またハクさんはセツナさんの子孫にあたるらしく、司会者に代わり投影されたハクさんはなるほど、トラ族の特徴を持っていた。この世界でも珍しい白髪と合わさり、白虎と言うべき外見だ。凛々しい目元からは意思の強さを感じられる。



「諸君、よくぞ集まってくれた!セツナ連合国代表議員、ハクである!」


思いのほか可愛らしい声質だが、よく通る声だ。またしても歓声があがる。

どうやら国の代表だけあって人気は確からしい。

歓声が静まったのち、ハクさんは言葉を繋げる。


「かつて、闇に呑まれかけた世界の中で、我ら獣人は弱者であった。皆が皆、自らのことをのみ守ろうとしていた。」


「だが我らの祖先は互いの手を取り、一つの国を作り上げた。自分だけではなく、互いの身を守るため、他人だった我らはあの日家族となり、またこの世界の強者となった。これは我が祖先セツナのみではなく、手を取り合うことの大切さに気が付いた我らの祖先すべての功績だ。」


「だがしかし、邪神討伐の日から百年もの月日が流れてなお、世界には魔物の脅威が渦巻き、罪なき人々が悲劇に見舞われている。……ではその魔物から、何者が人々を守るのか?」


「それは我々であり、そして彼ら自身だ!魔物という恐怖は、我らが手を取り合ってこそ打ち倒すことができることを、我らは祖先に学んでいるのだから!」


「諸君も知っての通り、我が国は死の大陸から最も遠く、魔物や瘴気の影響は少ない。しかしだからこそ、我らの同胞は己を鍛え、世界中で剣を振るい、弱きものを悪から救っている!」


「この百年祭は、そのような我らの生きざまを世界と共にする催し。獣人のみならず、世界の人々と我らが手を取り合い、背中を預け合う友となる催しだ。各国から集まった腕利きたちの諸君、諸君らが良き友として我が同胞たちと実力を確かめ合う機会になることをこそ願う!」


一瞬の間。


「――――――我らは、強いぞ?百年祭、開催だ!!!」


今日一番の歓声が上がる。鼓膜がびりびりと震えるのを感じる。

ハクさんは歓声の中、満足そうに投影から消えた。


「ハク様、ありがとうございました。ではこれより、百年祭の流れを改めてご説明いたします!」


司会者のお姉さんによって大会の流れが説明された。事前に聞いていた通り予選はバトルロワイヤル、それによって八人にまで絞られ、そこからは決勝トーナメントになるらしい。

八人か。意外と少ないが、生き残れるか?


禁止事項の説明もあった。予選での結託、自らの力で持ち運べないような武器や装備の使用、それから相手に対する毒の使用も禁止らしい。ほかは基本的になんでもありだが、大会運営が公平な大会進行にとって不適切と判断したら不正になるとのことだ。



「そして最後に、この百年祭にあたり用意した特別な催しについてご案内いたします!」


特別な催し。どこかでそんな話を聞いたが忘れていた。


「催しとは極めて単純。本大会の優勝者には、その後エキシビションとして一試合、決勝トーナメントと同様のルールである方と戦っていただきます。そして、その試合のお相手はなんと……この方です!」


司会者の案内に続きまたしても誰かが投影される。

黒髪の男のようだ。片目が包帯で覆われ、見えているもう片方はマリアのような蒼眼だ。

覇気のないその目からは諦めているかのような印象を受ける。体格は俺と同じくらいか?全身を黒い装備で覆っているその男が投影されると、会場が騒然としだした。


「ねえ、あの人ってもしかして……」

「ええ、間違いないです。噂通りの外見ですから」


やはり有名人らしい。マリアとハルカはあれが誰だか既にわかっているようだ。

司会者が言葉を続ける。


「白金級冒険者にして、世界最強と名高い、ヴォイド・マキナさんです!」


白金級。世界に二人しかいない冒険者ギルドの最終兵器、その一人。

……この人がか?はっきり言って、そんな大物には見えない。異様な雰囲気はあるが、気力が感じられない。


「ヴォイドさん、大会参加者に向けて、一言お願いします!」


司会者がヴォイドに話を振る。ヴォイドは大きな反応は見せず、静かに言葉を発した。


「優勝者と戦う。そういう契約で来た。それだけだ」



あまりにも淡泊な返答。ほとんどコメントそのものを拒否したに等しい態度に、司会者の顔が引きつる。


「え、ええと……ありがとうございました!みなさんが、このクールな猛者の情熱を引き出してくれることを期待します!この後すぐ予選を行いますので、参加者のみなさんは大会本部にお集まりください!以上で、開会式を終わります!」


投影が消える。若干の波乱はあったが、開会式は無事終了した。


「じゃあ、行ってくる」

「マリアさん、応援していてくださいね!」

「任せといて!二人とも、頑張って!」


いよいよ百年祭が始まる。俺とハルカはマリアを観客席に残し、大会本部へと向かった。


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