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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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46話 百年祭の賞品目録

なぜかコロッセオをアテネの建物としていたので修正しました。コロッセオはローマの建造物ですね。

「ついたああああ!!!」

「うるさっ」


イヌ族自治区三番街を出発して8日。間に休息を挟みながら歩いた俺たちは、ついに中心都市クオンに到着した。


町中は華やかに飾り付けられ、出店がそこら中に立っている。

入り口付近だと言うのにそれでも普通の町の中心部よりも人通りが多いため、入ってきたばかりの馬車がなかなか進まず渋滞気味になっているようだ。


……そして、隣で両手を上に突き上げ大声を上げる某国の重要人物のせいで、その大勢の注目が集まった。もっともそれはほんの一瞬で、すぐに皆が各々の道に歩を戻した。


「どうかしたんですか?マリアさん」

「どうもこうもないわよ……。こんなに歩いたの初めてで、もう足がフラフラ。当分砂も壁も見たくないわ」

「とか言いつつ、結構店でさぼってただろ?」

「そうだけど、それでもつかれたの!」


望郷の指輪が使えるとわかってから、マリアは基本的に店で休んでいた。俺とハルカの二人で歩いていた距離の方が長いと思う。

まあ碌に運動もしてなかった女の子に砂漠を長時間歩かせようって方が無茶だったな。次回から気を付けよう。




ひとまず宿を確保し、早速百年祭の情報を集めることにした。

道行く人に聞いたところ、コロシアムと呼ばれる大闘技場が百年祭の舞台で、そこに大会本部があるので聞きたいことはそこに聞けばいいとのことだった。


「これがコロシアム……。あれ、血の匂いがしない……?」

「セツナ連合国のコロシアムは有名だけど、本物は迫力が違うわね……!」


巨大なすり鉢状の建物……ローマのコロッセオを彷彿とさせる外観の建物の、特に人が多く集まっている入り口付近で、ハルカとマリアが思い思いの感想を述べている。ハルカのはちょっと怖いが。


闘技場か。戦いの技術を高めることに興味はあるが、それで怪我をしたら元も子もない。

金がない今俺はともかく、ハルカが怪我をしたら治療が大変だ。基本的には観戦だけする方向でいこう。


「どうも。百年祭の大会本部はここであってるかい?」

「おうあんちゃん、それで合ってるぜ。あんちゃんも参加希望者かい?予選の受付は今日までだよ!」


ムキムキのおっちゃんが応じてくれる。見たところトラ族のようだ。


「いや、まだ悩んでるんだ。大会の概要を聞いてもいいか?」

「もちろんだ!なに、そんなに難しいことは何もねえよ!」



おっちゃんの説明によると、百年祭は予選を大勢でのいわゆるバトルロワイアル形式で行い、その後決勝トーナメントが行われるようだ。

ただこの大会には大きく二つの特徴がある。それは、魔道具を使用した模擬戦であることと、賞品を選べるということだ。


魔道具を使った模擬戦とは、この闘技場にある特殊な魔道具を使うことで選手の能力や体格、さらには装備まで完全再現したアバターを作りだし、それに各選手は意識を写して戦うことらしい。

アバターを操作している間の選手は魔道具の影響を受け眠っている状態になり、戦闘が終われば自然と目が覚める仕組みになっているとのことだ。


なんだその魔道具。オーバーテクノロジーにも程があるだろ。

誰が作ったのか聞いてみたが、大昔から存在しているそうでその由来は誰も知らないそうだ。元々中心都市クオンはトラ族の国の首都だったらしく、その管理はトラ族の使命だったとか。


「そんな大事なものをポンポン使わせていいのか?」

「言いたいことはわかるが、もうずーっと昔から使われてるし、実際それで人が傷つかないんだから今更使わないってことはないだろうよ」


まあ、当人たちがいいならいいのか。

腐らせておくのももったいない気もするしな。


賞品を選べるとのことだが、今回の百年祭は例年の武術大会と違い、賞金の他に連合国の共有財産である宝物庫から一つ優勝者が商品を選んで獲得することができるという。

宝物庫の中身は一部が目録で明かされ、決勝トーナメント参加者はそこから一つ事前に選ぶ形式になっているらしい。

一部のみとはいえ国の宝物庫の中身を知られるのは国防上いいのか?とも思うが、何かしら対策はされているのだろう。多分。


「その目録っていうのは今見れるんですか?」

「おう。ほら、これだ。持って帰るのは止めてくれよ」


目録を見る。

飲むと強くなると言われる覚醒の秘薬、寿命が延びると言われる延命の秘薬、呪われた防具一式、魔力の続く限り水中で呼吸のできる宝玉のネックレス……。


「……なんというか、出し渋っていそうなラインナップだな」

「そうですか?呪いの防具はともかく、寿命が延びるとか水中で動けるとかすごくないですか?」


一見そう見えるかもしれないが、実際はそうでもない。

秘薬類は一品物ならどうやって効果を確かめたんだと言いたくなるし、効果そのものも抽象的だ。強くなったとか寿命が延びたとか、確かめようがない。

水中で呼吸できるというのも微妙だ。呼吸ができたとして、水中じゃまともに動けないだろう。呼吸できても流されて戻って来られなければ餓死か低体温症で死ぬ。


「うーん……そう言われるとそうですね」

「他のも似たような品ばっかりだ。希少ではあるだろうけど、価値があるかは怪しいな」


優勝賞金はしっかり出るので賞品はおまけなのかもしれない。まああんまり強力なものを渡すのは危険だしな。他国に渡って困るような品は渡せないのだろう。



「ちょっと待って、これ……」



賞品に興味をなくしかけた俺から目録を受け取って眺めていたマリアが何かに気づいた。

先ほど俺たちが見ていた面の裏を見ている。裏面なんてあったのか。


マリアの指さす箇所を見ると、胡散臭いが目の離せない賞品が書かれていた。


『無くなった腕すら戻ると言われる恢復の秘薬』


無くなった腕。

この記述が本当なら、シスさんの腕をもとに戻すことができるかもしれない。



「……出る、か?」


もちろんシスさんの腕を戻せるなら戻してあげたいとは思う。

ただ仮に俺が優勝できるとして、その場合俺の存在は広く知られることになる。優勝できなくてもいくらか勝ち残ればそうなりかねない。

そうなれば必然的に俺の同行者であるマリアの存在も知られることになる。一般人がマリアと聖女を結びつける材料は外見の特徴しかなく即座に断定されるようなことはないが、それでも……。


「あたしのこと、気にかけてる?」


俺の様子を見て何かを察したのか、マリアが言う。


「まあな。危険がないってことはないだろ?」

「そうだけど……」

「まあ、いいんじゃないですか?」


思い悩む俺たちにハルカが声をかける。


「せっかくマリアさんを連れ出したんですよ?ちょっとの危険は冒険のスパイスです!ここまで来たなら、出ちゃいましょう!大会!」


元気にハルカが言う。確かに、一理ある。

そもそもマリアを旅に連れ出す時点で多少の危険は覚悟していた。これで危険を恐れて何もせず一年を過ごすなんて本末転倒もいいところだ。


「ハルカの言う通りだな。よし、参加するか!」

「やったあ!応援してるわ!」

「私も出ますからね!」


こうして俺たちは百年祭参加を決めた。

鬼が出るか蛇が出るか。建国百年を祝う武術大会が間近に迫っていた。


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