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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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44話 眼福と雑貨屋…じゃなくて本屋

ギルドを後にし、商店街のように店の並んだ区域をぼんやりと歩く。


シスさんからの俺宛の手紙は、実際のところ王子からマリアへの手紙なので開封しない。

ダズからの手紙は普通に俺宛の手紙なのでギルドを出る前に読んだが、先日の王都ヨンドへの魔物襲撃に関して俺たちの無事を確認するための手紙だった。離れ離れになっている可能性も考えハルカにも同じものを送っているらしい。


今日中にも返信を書くことを決めつつ観光を続ける。

道行く獣人はイヌ族がほとんどだが、時折違うらしい人も見かける。トラ、キツネ、ネコ、ウサギ……それらの外見的特徴を持つ獣人を見かけた。


獣人か。先日戦った蜥蜴男は、俺のような人型の魔物……魔族だったか。魔族の中には他の生物の特徴を持つ覚醒種と呼ばれる存在がいると言っていた。

獣人も他の生物の特徴を持った人間と言えるが……瘴気の存在と獣人の存在には関係があるのだろうか?


「あっ、ショウ!ギルドは見つかった?」


後ろからかけられた声に振り返る。声からしてマリアだろう。


「ああ、問題なく見つかっ…たぞ?なんだその恰好?」

「いいでしょ?この国暑いんだもの!こういう服も着てみたかったのよね~」


マリアは見慣れた修道服や最近の冒険者然とした恰好とは大きく雰囲気の異なる、この国の人々が来ているような服の中でもやや派手な、踊り子のようないで立ちの服を着ていた。


「で、どう?」

「どう?……ああ、うん、似合ってるぞ」


マリアも相当外見は整っている方だ。金髪蒼眼美少女の踊り子姿は眼福とすら言える。

ただ、その、なんだ。もう3年寝かせたい感じがする。

はっきり言うと体系が幼いのでちょっと違和感があるというか、背伸び感がある。いや、似合ってはいるんだが……。


「もうちょっと気の利いた反応して欲しいわー。ね、ハルカ。……ハルカ?」


肩をすくめて振り返るマリアが不思議そうに首をひねる。視線の先を見ると、ハルカが近くの店の看板の裏に隠れていた。マリアが看板の裏に回り声をかける。


「何してるの?」

「こ、こんな服着たことないので、その、恥ずかしくて……」

「大丈夫よ、すっごく似合ってるわ。あたしが保証する!」

「本当ですかあ……?」

「大丈夫だってば!ほら!」

「あ、まだ心の準備が……!」


マリアの勢いに押され、ハルカが看板の裏から出てきた。

着ている服そのものはマリアのものと大きく変わりはない。マリアが青を基調とした服であるのに対し、こちらは赤を基調としていることくらいだ。


ただ以前着替えに遭遇したので気づいてはいたが、ハルカはかなりスタイルがいい。出るところが出ているが、ウエストは引き締まっているので肌を出す服装がその魅力をダイレクトに伝えてくる。

可愛らしい容姿と合わさって、一言で言うとエロかわいい感じになっている。大変結構です。ありがとうございます。


「ありがとうございます」

「なんで敬語なんですか!?」


とりあえず感謝を伝える。深々と礼。

ハルカは真っ赤になってうろたえている。


「やっぱり奥さんにはデレデレなのね。甘いわあ、この空間。」

「奥さん……!?奥さんじゃないですよ!」

「まんざらでもないくせに~」


マリアの追撃でハルカが赤面の限界に挑戦している。

と、ここでずっと気になっていたことを聞くことにした。


「似合っているのはいいんだが、その恰好だと日差しで火傷するんじゃないか?」

「私もそう思ったんですけど、それに関しては問題ないんです。これのおかげで」


まだ少し顔のハルカは黒い液体の入った瓶を取り出した。

黒い液体を見ると、あの蜥蜴男が自分に打っていた注射を思い出すな。


「これは?」

「日焼け止めだそうです。この国で取れる植物からできているらしくて、塗ると無色になって肌を日差しから守ってくれるんですよ」


なるほど、日焼け止めか。人数分買ってきてくれたそうなので一本もらった。

試しに塗ってみたところ日差しを防ぐほかに制汗剤のような効果もあるらしく、汗の量が減るばかりか全身が涼しくなるような感覚を覚えた。なかなか優れモノだ。





「じゃあどうする?アサマの店にお邪魔する?」

「そうだな。そろそろあっちも片付いてる頃だろう」


踊り子服を堪能したところでアサマの店に向かうことにした。


貰った地図をもとに向かうと、普通の店舗より一回り大きい店を見つけた。

というより今気づいたが、この国の建物は他の国のそれに比べてやや大きめだ。なぜかはわからないが……。


店の脇に止まっている馬車に見覚えがあるので間違いないだろう。

店内に入ると、カウンターの向こうにいたアサマがこちらに気づいた。


「や、三人ともよく来たね。そう大した店じゃないけど見て行ってくれな」

「ああ、お邪魔させてもらうよ」


少し店内を見て回る。雑貨屋なのか、さっき見た日焼け止めを始めとした日用品が多く売られている。

が、ここで少し変わったことに気が付いた。この店、店の入り口付近には日用品が多いのだが、店の奥のほうは本だらけだ。残念ながら、本コーナーの付近は悲しいほど人がいないのだが。


「アサマ、この店は雑貨屋で合ってるのか?」

「あー……本、気になるよね。それは親父の趣味なんだ。本当は本屋でやっていきたいけど、この国には本を読む習慣のある人も少ないし、魔術もそれほど盛んじゃないから雑貨屋も兼ねないと店が回らないんだ」

「なるほどなあ」


そういうことなら、是非本を買っていってあげたい。本は嫌いじゃないし、親父さんも喜ぶし、いいことづくめだ。少しでも恩返しになるといいが。


「聞いたわ。本でしょ?ちょうどいいわ!あたし、欲しい本があるのよ」

「へえ?なんの本だ?」

「魔術の本よ。光魔術の本が欲しいの」

「光魔術だね?基礎的なものでよければあるよ、取ってくる!」


アサマが嬉しそうに尻尾を揺らしながら店の奥に駆けていった。


「なんで光魔術なんだ?いや、だめってわけじゃないんだが」

「なんでって、適性が光魔術にもあるからよ。5歳の時に適性検査受けてるんだから。あれ、そういえばショウって適性検査は……」


適性。見習い冒険者研修で少し触れたな。誰もが5歳になると浄化院で魔術の適性検査を受ける。俺はてっきり聖魔術の適性だけを調べるのかと思っていたのだが違うらしい。

というか俺、まだマリアに自分の素性をちゃんと話したことなかったな。隠す気はないのだが、機会を逃し続けていた。


「後で話す。そうか、適正か。すっかり忘れてたなあ」

「適性を忘れちゃったのかい?ならちょうどいい本があるよ!ついでに持ってくね!」


アサマにも聞こえていたらしく、本棚の陰から声を返された。

俺が忘れていたのは適性検査の結果ではなく適性検査の存在そのものなのだが、まあいいか。


「助かる。そういえば、ハルカは魔術の本とかいらないのか?」

「私は大丈夫です。別れ際にラシィさんにもらった本があるので」

「そうか」


と、ここで二冊の本を持ったアサマが出てきた。相変わらず嬉しそうに尻尾が揺れている。


「おまたせ!マリアにはこれ、ショウにはこれを!」

「ありがとう、大事にするわ」

「へえ、『全属性魔術の基礎講座』?こんな本があるんだな」

「そう、いろんな魔術の適性を持ってたり、ショウみたいに自分の適性を忘れちゃった人が自分にあった属性を見つけるための本なんだ。まあそんな人めったにいないからあんまり売れる本ではないんだけどね」

「いや、俺にぴったりだ。ありがとうアサマ」

「どういたしまして!」


尻尾を揺らしながら自分の事のように喜ぶアサマに代金を払い、俺たちはその場を後にした。


さて、ひとまずこの町でやるべきことは済んだ。

ダズへの返信とマリアへの俺の素性に関する共有だけ済ませたら百年祭を見にいこう!




この国の建物が大きいのは暑さ対策のために石造りの建物の壁を厚くする文化があるためです。

特に本筋に関係なく、今後明らかになる予定もないのでお伝えしました。

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