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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第2章 聖女マリアとエルフの里
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18話 手がかりと魔道具漁り


 勇者の記憶に触れた。これは二回目だ。以前見たそれに似て、勇者は一人で戦うことにまるで義務感を抱いているかのようだった。一回目の記憶で言っていた「敵の正体」というのは見習い冒険者研修で習った邪神のことだろう。

今から約100年前、世界を滅ぼさんと舞い降りた邪神に対し、女神は人間から勇者を選び出し力を与え、これとぶつけることで対抗しようとした。しかし女神と勇者は邪神と刺し違える結果に終わったとされている。

なぜ女神が直接戦わず、勇者を生み出し戦わせるという回りくどい手段を用いたか、そして勇者と邪神の戦いに女神が巻き込まれたのかについては議論が分かれているらしく、自ら手を下すまでもないと女神が考えていたところ、邪神の力が想像を上回っており女神も参加せざるを得なくなっただの、邪神が死に際に女神と勇者に呪いをかけただけで女神は戦いに参加してないだの、いろいろ説はあるそうだが、結局明確なことは、勇者も女神も邪神もその日を最後に姿を消したということと、そしてその日以降世界に瘴気がより多く蔓延するようになったということだけのようだ。瘴気や魔物は邪神降臨の以前から存在したようだが。


思考がそれた。記憶を思い返すと、勇者はかたくなに仲間や帰る場所を作ろうとしなかったようだ。勇者の発言を思い返すに、勇者は自分が戦う相手が後の歴史で邪神と呼ばれるほどの存在であることを知っていたようだ。そしてその戦いの危険性も理解していた。だから人との関りを断ったと?

…理解できなくはないが、あまりにも無茶が過ぎる。世界を滅ぼしにくるような相手を一人で何とかするつもりだったのか?だとしたらうぬぼれ以外の何物でもないだろう。その自分勝手なこだわりのせいで自分が世界を危険にさらしていることに気が付いていないのか?


「質のわるいやつだな」


独り言で愚痴るほどに腹が立つ。何がしたいんだ勇者は。


……まあ、過去のことはわからないし、結果的に世界は滅んでいないのだからよしとしようと自分に言い聞かせる。無駄にイラついてもいいことはない。それよりも、今は得た情報の整理が先決だ。

シュミリオは女神リオラの偽名であり、つまりリオラがこの店の経営者だった。ということは、少なくとも女神は邪神との戦いにおいて命を落としていなかったことになる。ただ会話の中で疑問に思ったのだが、邪神との戦いの後には女神に戻れなくなるといった旨の内容が語られていた。なぜだ?世界の危機を退けたなら元通り女神として世界を治めればいいだろうに。これについては今のところわかりそうにない。

そして俺への手紙において、女神リオラは俺のことを「僕の勇者」と呼んでいた。人違いということもないだろうし、俺が勇者の記憶を二度見ていることも含めて、俺と勇者に何らかのつながりがあることは明白だ。しかし、俺は神田翔として日本で21年間生きてきたが、そのころは勇者の記憶なんて全く見たこともなかった。そういうゲームや漫画は好きだったし、なにより第六感はあったが。

さらに手紙には自分のことを知りたければ勇者の軌跡を追え。まずはヨンド王国のエルフの里を目指せ。とあった。ヨンド王国は隣国だが、俺が魔物であること、そして勇者の記憶を見ていること、そして第六感の存在。それらの持つ意味を理解する手がかりがそこにあるということだろうか。


 気になる。俺は一体なんなんだ。目の前に手がかりが転がっているのに、それを素通りできるほど強い心はもっていない。

 見知らぬ世界、それもこちらの命を脅かす魔物という存在のある世界での旅は危険なものになるだろう。シュミリオ…リオラ曰く、この旅は命の危険が伴うのだそうだ。それが魔物による危険に限られるかはわからないが。

それに一人で行くにせよハルカと行くにせよ、俺が旅に出るとなればまず間違いなくハルカに迷惑がかかる。俺を相棒と呼んでくれた彼女を無下にすることはできない。俺はハルカにこのことを相談することにした。





「へえ―…ここがショウさんのおうちなんですね…。あっ、すいません。相談があるってことでしたよね。何かあったんですか?」


 店にハルカを招くと、興味津々といった表情で店の中を見渡していた。だがすぐに本来の用事を思い出し、こちらに視線を向ける。俺はハルカをテーブルにつかせると、さっそく地下室の小部屋での事を話した。





「行きましょう、エルフの里に」


 ハルカがまっすぐこちらを見て言う。ハルカの黄色い瞳にやや困惑した俺の顔が映っている。まさか即決とは。


「いいのか?ここはハルカの育った街だし、知り合いも大勢いるだろ?」

「ええ、でもその指輪の力でここにすんなり戻ってこられるんですよね?なら行かない理由がないじゃないですか。依頼はここでも行った先でも受けられますし、冒険者としての活動にも支障はありません」


 なるほど、確かに。旅という言葉の響きにとらわれて深く考えていたが、この指輪があればこの街を拠点にかなり楽な旅ができるだろう。リオラはかなりいいものをよこしてくれたようだ。


「本当にいいんだな?ハルカ」

「いいんです、私も旅に興味がありますし。それに、相棒の大事な旅について行かないわけがありますか?」


 俺は手紙の内容もきちんと伝えた。手紙に「命の危険がある」と書かれたいたことも含めてだ。それでもハルカは迷わずついてくると言ってくれた。ならこれ以上そこを繰り返し聞くのは野暮だろう。


「ありがとう、ハルカ。そうしたらさっそく準備をしよう。実はもう一つ相談に乗ってほしいこともあるしな」

「へ?もう一つ?いったいなんですか?」

「安心してくれ。いい知らせだからな。実は……」





「はあ…」


 店の倉庫を探りながらハルカがため息をこぼす。こちらに見えているしっぽが、ハルカが動くたびに会わせてゆらゆら揺れるのがかわいい。いやそれよりも。


「はあ…」

「そんな何度もため息つくなよ…」

「だって仕方ないじゃないですか!私がようやくウィングアローを使えるようになって、一歩追いついたと思ったら今度は魔道具の扱いが完璧になるなんて、そんなのあんまりです!」


 そう。実は俺が二回目に勇者の記憶に触れたあと、魔道具に魔力をすんなり込められるようになっていたのだ。集中して、だの時間をかけて、だのそんな次元じゃない。呼吸をするようにすんなりと魔力を込められるようになった。

 この一週間でハルカは修行の成果を出し、つい昨日矢に風の力を乗せる魔術であるウィングアローを習得したらしいのだが、それを伝える前に俺の魔道具の扱いの事を知ってしまい、ずるいとへそを曲げているのだ。

 ちなみに魔道具が使えるなら詠唱や魔法陣を用いた魔術も使えるのではと試してみたが駄目だった。魔道具の使用も魔術に分類されているが、魔道具を使う魔術と使わない魔術は全くの別物らしく、詠唱や魔法陣は読みあげたり浮かび上がらせたりするだけでなく言葉や魔法陣の意味、そして魔術そのものへの理解も必要とされるらしい。残念だが、今後練習していきたい。

 

 今は店の倉庫で魔道具を漁っている。使えるものがいくつか見つかった。魔力で光るカンテラ、同じく魔力で動く小さなライターもどき、飲み水が湧く水筒など、シンプルだが便利な道具だ。以前から使っていたポーチにしまっておいた。と、ここで箱を探っていたハルカが声をあげる。


「あ、これはこの間使った煙玉ですね。わ、すごい!他にもたくさん属性玉が入ってますよ!」


 煙玉の入っていた箱だったらしい。前回使った煙玉は店に並べてあったものをそのまま手に取って使っていたのでそんなに在庫があるとは思わなかった。というか属性玉とはなんだろう。店にそんなもの並んでいたか?


「お店にはなかったと思います。属性玉は、魔力を込めて投げると対応した属性の効果が出るとかなんとか…試しにどこかで使ってみるのがいいと思います」


 ただ実をいうと煙玉の時もそうだったが、譲ってもらった店の物とはいえ、消耗品は使ってしまうと戻せないので若干気が引けるんだよな。命には代えられないので使うけど。

 


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